2018/06/11 17:03

【エンタなう】世界が称賛した映画 「万引き家族」の哀しき先見性

 「万引き家族」でカンヌの最高賞を得て凱旋帰国した是枝裕和監督への賛辞が絶えない。ネット上では政権批判まで。いわく「羽生結弦には国民栄誉賞を贈りながら、是枝監督には賞はおろか電話の1本もない。作品が安倍政権下の暗部を炙り出しているからだ」。

 巨匠・黒澤明が国民栄誉賞を得たのは没後だし、何をしたって「カンヌに便乗した政治利用」と批判する手合いはいる。ナンセンスだ。

 ドキュメンタリー出身の是枝監督が、演技を超えた筆致で役者に凝縮した“いびつな家族の今”は、もっと奥深いところにある。

 東京・下町のマンションに挟まれた古い平屋。治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人が転がり込んで肩寄せ合う。彼らの目当ては、老いた初枝(樹木希林)の年金。足りない分は万引き稼業で補っているが、悲壮感はなく笑いが絶えない。

 ある日、団地の廊下で震える幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰ってしまう。万引きの上に誘拐、重罪だ。だが、女の子に笑顔が浮かぶにつれ、観ている側は誰も治を責められなくなる。折しも、日本中が胸を痛める5歳女児虐待死が報じられている。映画の哀しき先見性には驚くばかりだ。

 もうひとつ見逃せないのが、風俗店で働く亜紀が、青年客と心を通わせる場面。ごく短いシーンなのだが、松岡の女優人生において、まさに分岐点になりうる体当たりの一瞬は必見である。(中本裕己)

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