2018/02/06 20:25

『相棒』300回記念スペシャルに見る「相棒らしさ」

2002年10月に連続ドラマとしてスタートした『相棒』が放送300回を迎えました。記念スペシャルには17年の歳月が息づく重厚な内容と、散りばめられた相棒らしさには、感慨深いものがありました
2002年10月に連続ドラマとしてスタートした『相棒』が放送300回を迎えました。記念スペシャルには17年の歳月が息づく重厚な内容と、散りばめられた相棒らしさには、感慨深いものがありました
300回スペシャルは、杉下右京が追いつめた元法務大臣の瀬戸内米蔵(津川雅彦)の出所から始まります。10年をリアルな歳月として設定できるのが『相棒』のすごいところ。津川雅彦演じる正義のひと瀬戸内米蔵や、したたかに出家した片岡雛子(木村佳乃)など、感慨深さと予感に満ちた重厚感は『相棒』ならではと言えそうです。
 
『相棒』が「土曜ワイド劇場」を経て、連続ドラマとしてスタートしたのは2002年10月。17年の歳月はドラマを骨太かつ独創的に成熟させてきました。しかし『相棒』は立ち止まることなく、常に新しい世界を描き続けます。300回記念スぺシャルはどんな作品となったのでしょう。
 

300回記念スペシャルと「相棒らしさ」

趣ある文学志向、シビアな社会派、スリリングなアクションなどバラエティ豊かな作風を誇る『相棒』。従って拮抗する心理戦や巨悪に四苦八苦する壮大な物語を期待していた視聴者にとっては物足りなさがあったかもしれません。相棒らしいと感じる人もいれば、相棒らしいパンチが足りないと感じる人もいそうです。
 
そもそも、17年の集大成として描くには、拡大版の前篇・後篇と言えども時間は十分ではなく、今回は「予想外」「危機一髪」といった手に汗握る斬新なクライマックスとは違う方向へ着地したと言えます。
 
しかし、つくり手の熱意と挑戦はまったく衰えることはなく、ドラマファンとして敬意を表したいと思います。
 

磨きがかかる大人のユーモア

4代目相棒の冠城亘(反町隆史)が捜査に利用した「杉下右京ブランド」は、敏腕の杉下右京に一目置く警視庁内の空気を意識してうまれた言葉。やや複雑な気持ちを背景に言い放った冠城亘が、『相棒』に新鮮な感覚を明るく楽しく吹き込んでいることは間違いありません。
 
また、後篇でサイバーセキュリティ対策本部の青木年男(浅利陽介)が映画『ミッション:インポッシブル』風にビデオで報告をあげる大胆な演出にも、相棒のユーモアセンスを感じます。
 

新しい演技の扉を開きつづける

演技派のベテラン俳優陣のなか、大健闘の演技を見せたのが自称フリーター・常盤臣吾を演じた矢野聖人です。『リーガル・ハイ』や『とと姉ちゃん』でクセのある役を演じた彼の迫真の演技から目が離せませんでした。元日に放送された『サクラ』(2018年)の健太郎や『ピエロ』(2012年)の斎藤工など、当時は絶大な知名度を持たない俳優の素晴らしい演技に出合えるのも『相棒』のすごいところ。俳優名でなく物語で見せるこだわりに『相棒』のポリシーを感じます。
 

「いわんや悪人をや」タイトルに見る相棒流

今回のタイトル「いわんや悪人をや」は親鸞の言葉。 作品の要である瀬戸内米蔵の存在を思わせるだけでなく、そこに作品の想いや未来像まで感じさせる的を射たタイトルです。
 
相棒ではこれまでも、各話に登場人物の個性と相まった趣を感じるタイトルを多数つけており、そのどれもが素敵でした。レイモンド・チャンドラーの小説をモチーフにした高橋克実演じる名探偵が活躍する「名探偵登場」(season5)と「名探偵再登場」(season10)、杉下右京の姪という希少なキャラクター杉下花(原沙知絵)の好奇心がチャーミングだった「天才の系譜」(season4)、紅茶好きの理論派・毒島幸一(尾美としのり)と杉下右京との会話劇が好評だった「右京さんの友達」(season12)など、小説のようなタイトルには相棒の感性が光ります。
 

貫いてきた「相棒流」と気持ちのいい「裏切り」

ノベライズや相棒サウンドを楽しめるコンサートも大人気となっており、相棒の世界観を親しむ視聴者は性別、年齢を問いません。そこには『相棒』に対する信頼があるからで、貫いてきた「相棒流」が受け入れられた結果だと思います。
 
しかし、そのブランド力に甘んじることなく、物語を教科書通りとしない『相棒』、気持ちのいい裏切りもまた、相棒ブランドの価値を高めているのでしょう。
 
青木年男のほか、警視庁副総監の衣川藤治(大杉漣)や法務事務次官の日下部彌彦(榎木孝明)ら水面下の動向も気になったまま。慈悲あり、毒あり、腹の探り合いありの300回スペシャルは、過去の映像になつかしさはあったものの総集編ではなく、さらなる巨悪が薄っすら見えた予感の回で、胸騒ぎは収まりません。
 

やっぱり気になる『相棒』のこれから。

水谷豊が演じる博識多才の主人公・杉下右京は300回をむかえてなお、得体の知れない奥ゆきを感じさせます。
 
映画版の「警視庁占拠!特命係の一番長い夜」における岸部一徳演じる小野田官房長の葬儀シーンで、杉下右京、神戸刑事(及川光博)、伊丹刑事(川原和久)、芹沢刑事(山中崇史)、陣川刑事(原田龍二)、大木刑事(志木正義)、小松刑事(久保田龍吉)ら相棒のメンバーたちがいっせいに歩き始める風景に相棒の真髄が見えます。正義への信念を曲げることなく、それぞれがそれぞれの立場でまっとうしていく彼らの姿は、300回を迎えた今も同じ。社会が抱える問題に対峙し人間に寄り添いながら、ぶれない視点をどう貫くのか。これからも『相棒』に注目したいと思います。

(文:竹本 道子)

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