2019/07/28 11:00

『ワイルドライフ』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

©2018 WILDLIFE 2016,LLC.
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 欧米の映画を観ていて気になるのが、裁判のとき聖書に手を置いて「私は嘘をつきません」と宣誓するシーン。あれってキリスト教圏ならではですよねぇ。

 日本だと、聖書の代わりに何に手を置くべきなのかなぁと考えていて、思いついたのが“家族の記念写真(ファミリーポートレイト)”で。そこから『ファミリーポートレイト』という長編小説を書きました。

 で、さて。この作品は、崩壊していく家庭の中で少年が大人になっていく、静かな青春映画なのだ。

 舞台は一九六〇年代のアメリカ。十四歳の少年ジョーは、とつぜん母と二人暮らしになる。父が「山火事を消す仕事に就く!」と家を出てしまったからだ。

 父は山肌に広がる炎に魅入られていつまでも帰ってこず、ほどなく母の心も延焼し始める。愛人を作り、荒んで、息子に当たる。どうやら二人は“中年の危機”を迎えてもがいているようなのだが……。

 子が刻一刻と大人になっていく輝かしい季節に、親のほうは青春の残り火が尽き、憂鬱の虫に取り憑かれる。その二つが密閉状態の核家族の内側で並行して進む……という光景にわたしも心当たりがあり、スクリーンを観ているだけで息が苦しくなった。

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