2017/09/03 11:00

又吉直樹が語る「コントには綾部が必要なんです」

(c)榎本麻美/文藝春秋
(c)榎本麻美/文藝春秋

「テレビはつまらない」「テレビ離れ」など、テレビにまつわる話にはネガティブなものが多い。

 しかし、いまなお、テレビは面白い!

 そんな話をテレビを愛する「テレビっ子」たちから聞いてみたいというシリーズ連載の6人目のゲストは、9月9日、10日にユニットコントライブ「さよなら、絶景雑技団」の公演を控えているピースの又吉直樹さん!

 芸人となり、テレビやライブでコントを演じるようになった又吉さん。どんどんテレビでコントができなくなってきている中、どのようにお笑いと向き合っているのかを伺った。(インタビュー#1、#2よりつづく)

上京当時、イメージしていた「芸人像」は同期のキングコングだったんです

――又吉さんは中学からお笑い芸人への夢を持っていたわけですが、高校はサッカーの強豪校に進学することになりますよね。

又吉 僕は中学から芸人になりたかったんですけど、相方の原(偉大)に一旦断られたのと、恩師にサッカーを続けろと勧められたのとで高校に進むんですね。それでサッカーの強い高校に行ったので練習漬けで、高校3年間はお笑いから遠ざかっちゃってるんですよ。たまにビデオ借りてきて観たりとかしましたけど、深夜番組も見られへんぐらいに毎日疲れてた。それで「この3年間で、もう俺は面白くなくなった、自分の旬は過ぎた」って勝手に思ってたんです(苦笑)。当時はFUJIWARAさんと2丁拳銃さんがやってた『吉本超合金』の話をみんながしていたんですけど、話についていけずに愕然としてました。でも、決めていたお笑い芸人になる夢は叶えたかったし、コンビを組むと決めていた原の期待にも応えたい思いは強かったんです。

――上京して、いわゆる吉本興業のお笑い養成所NSCに入学されることになるのは99年のことですね。どんな芸人像を描いていたんですか?

又吉 当時はダウンタウンさんの影響で若手はみんな「センス」に走っていた時代の最後の方だったんです。なので、僕がその時にとろうとした作戦は、その逆張り。むちゃくちゃテンポを上げて、明るく、ちゃんとボケてツッコんでっていうのをやったんです。だからコンビ名も「線香花火」。スーツを着て、伝統的な漫才を敢えてやったんです。それで最初のネタ見せに挑んだら、講師の人に「君、そんな人間じゃないやろ」って言われて。

――見抜かれた(笑)。

又吉 僕がその時にイメージしていたのは、同期のキングコングなんですよ。

――ああ! なるほど。

又吉 テンポ感とか、テンションとか、キングコングの2人の関係性みたいなのを含めて、ビジョンを描いていたんです。でも、元が暗い人間にあれはなかなかできないってことですね(笑)。キングコングは2人とも持って生まれたものがあるわけですよ。それで「わかった、俺は器用さもなんもない人間やから、自分が面白いと思うことを時間をかけてやっていくしかない」と気づいたんです。

ピース結成前後も、コントを書いていた

――「線香花火」を経て、2003年には綾部さんとコンビを組んで「ピース」を結成されます。コントを始めたのはピースになってからなんですか?

又吉 線香花火のときは、単独ライブではコントをやってたんですけど、通常出番の時は漫才だけでした。ユニットのライブ向けにコントを書いたりはしていたんですけど。

――ユニットコントの面白さってどんなところにあるものですか。

又吉 やっぱり自由度が高いですよね。たとえば僕にはできない爆発的な声量で叫ぶボケなんかを、誰かに担わせることができたり、そういう配役ができることで、自分がしたいことを広げられる面白さがあります。

「波に乗れなかった」僕らにとっての『はねるのトびら』と『ピカルの定理』

――又吉さんが大きく関わったユニットコント番組といえば、2010年に始まった『ピカルの定理』です。フジテレビ伝統のユニットコント番組に出演するときの気持ちはどんなものでしたか?

又吉 いやそれは、うれしかったですよ。『オレたちひょうきん族』『やるならやらねば!』『ごっつええ感じ』『めちゃイケ』といったフジテレビのコント番組の歴史からしても、フジテレビのコント番組にレギュラーで出るというのは、芸人で言うたらスターの証みたいなものですから。僕らに近い先輩後輩では『はねるのトびら』(2001年放送開始)に1期上のロバートさん、インパルスさん、同期のキングコングとかが出ていたんです。「波に乗れなかった奴ら」の僕らは、それを10年くらい、いろんな気持ちを持って見てました。だから話が来たときには「コント番組できんねや」って、すごく不思議な感覚でしたね。

『ピカルの定理』には『フジ算』という前身になる番組があるんです。これに声をかけてくれたディレクターが、僕らピースと、ノブコブ(平成ノブシコブシ)、ハイキング(ウォーキング)さん、イシバシハザマとでやってた「ラ・ゴリスターズ」というユニットのコントライブを観に来てくれていたんです。上京して10年以上経っていましたけど、自分がコントとか、ネタを書き続けてきた成果がやっと出せたのかなって、嬉しかったです。

――ライブでのコントとは違う、テレビでのコントで戸惑ったことはありませんか?

又吉 テレビのコントとライブ用コントの作り方で、違うんだなあと思ったのは「キャラとフレーズ」の作り込み方でした。テレビはやっぱりキャラをいかに立たせるか、いかに覚えやすいフレーズで目立たせるか、なんですよ。僕はそういうことをあんまり考えたことがなかったので、新鮮でしたね。

――又吉さんがそれまでライブ用に書いていたコントは、どちらかというと物語重視というか……。

又吉 そうですね。だから『ピカルの定理』でも構成作家さんやディレクターさんの提案に、展開面で僕が参加することはありました。ここでこういう流れになっていくのはどうですかとか。僕と(渡辺)直美でやってたギャル男コントみたいのがあったんですけど、あの設定は用意してもらって、ワードとかは自分で考えていったんです。すると、僕はどうしても物語が欲しくなってくるんですよ。

――そのギャル男の背景とか。

又吉 そうです。こいつ、すごいカッコつけてるけど、元々はこんなやつじゃなくて、過去を知ってる先輩が現れるとヘコヘコして、そこに彼女が狙われる展開を入れて……みたいな物語を提案したんです。それで僕がやるギャル男の先輩役をノブコブの徳井くんにやってもらったら、徳井くんのキャラがめっちゃはねちゃって、僕がサブキャラに降格(笑)。徳井くんに完全に食われましたね。

――『ピカルの定理』を一緒にやってたメンバーとは、ライバル意識と同志意識、どっちが強かったですか。

又吉 同志意識が強かったですね。綾部と(ノブコブの)吉村くんの間とかではもちろんライバル関係みたいなのはあったと思うんですけど、僕は吉村くんが演じる2時間の舞台に脚本を書いたこともあったし、ノブコブとピースと直美って元々がっちり肩を組んでたメンバーなんで仲は良かったですよ。

「お客さんにウケなあかん」ばかり考えてる時に、後輩から言われたこと

――浅草で「さよなら、絶景雑技団」のコントライブの1回目が開催されたのは、ちょうど『ピカル』が始まる1年前(2009年)なんですね。

又吉 これは、しずるとかライスのような後輩たちに、「又吉さん、もっと面白いことやりましょうよ」って誘われて始めた公演なんです。でも、声がかかったときに思ったのは「なんでこいつら俺のことをそんな、できる奴やって思ってんやろう」ってこと。疑心暗鬼だったんですよ(笑)。

――あはは(笑)。

又吉 それで後輩の言ってること、いろいろ考えたんですよ。で、ピースとしてやってるコントというのは、綾部をいかに面白く見せるかで関係性を作っていくんですけど、そういうのを全部とっぱらったときに、又吉さんはどういうコントを作るんですか、と問われている気がしたんです。確かに、『ピカル』前夜というか、あの頃の僕らは各コンビ、時代の流れとか、お客さんにウケなあかんみたいなことばかりを考えてる時期でもあったんですよ。そういうのを一回忘れたうえで、又吉さんの面白いことをやってくださいよって後輩たちは言ってくれてるんや、と。これはものすごい怖い子たちやな、めちゃめちゃ笑いに厳しい奴らやなと思って。それで、ずーっと1年くらい、深刻な表情だけを作って逃げてたんですよ(笑)。

――コントの台本作りから逃げてたんですね。

又吉 ところがある日、吉本の社員さんから浅草でライブできる日があるよと聞いて、「ああ、ここや」と腹くくって。それでもう、むちゃくちゃ気合入れて、1回目の会議の時に、「じゃあ、まず俺がなんとなくやりたいもん言うわ」って、ホワイトボードにコントの案をいっぱい書いたら、後輩から「もう5時間分ぐらいありますよ」って(笑)。

――5時間分!

又吉 正直ビビってたんですよ。後輩たちに「あれ? 面白くない」とか言われたらどうしようって。でも中学校とか、芸人になりたいと思ってた頃の自由な発想に戻れた気がして、楽しかったです。

コント番組には綾部とか、パフォーマンス能力の高い人が必要なんです

――この「絶景」シリーズのコントライブは今回3回目。6年ぶりですね。

又吉 間隔が空いたことはプレッシャーになってますね。出演するほうも、みんな芸歴を重ねてるだけじゃなくて、例えばライスは『キングオブコント』で優勝してたり、しずるもその常連だったり、囲碁将棋も『M-1』や『THE MANZAI』で善戦してます。向井(慧)はいっぱいテレビに出て、好井(まさお)は『すべらない話』で活躍したり、それぞれ力つけてきていますから。

――ライブ開催までに結構時間が空いたのはどうしてなんですか?

又吉 後輩たちには、それぞれコンビの仕事を優先的にやってもらいたかったから、というのが一つです。それから、僕自身このコントライブに臨むのは2作目の小説を書き上げてからと決めていたんです。そうしたら、ちょうど綾部がアメリカに行くって言い出したタイミングに重なったんですよね。それに触発されたというのもあります。

――又吉さんの芥川賞受賞に触発されて綾部さんが渡米を決めて、それに触発されて又吉さんが原点に戻るようなコントライブをやるっていうのは、すごくいい関係ですね。

又吉 自分もなんかせな、みたいな気持ちはありました。でも、あいつまだ日本でくすぶってるんですよね。なんで俺がこんな頑張らなあかんねん(笑)。

――今後また、テレビでコント番組をやりたいという思いはありますか。

又吉 できるならやりたいですね。自分で作る側もやってみたい。なんでもサッカーにたとえてしまうんですけど、僕は結局左のウィングバックなんです。芸人としてもたぶんそうやと思ってて、トップ下とかボランチはできないんですよ。器用さもないし。ただサイドに限界まで張っとくから、そのへんでごちゃごちゃしたら、一回こっちにイチかバチかで振ってみてくださいっていうポジション(笑)。ですから、自分がコント番組のど真ん中で、演者として全コントに出て立ち回るというイメージは、正直ないですね。やっぱり綾部とか、吉村崇とか、直美とか、演者としてのパフォーマンス能力の高い人が中心にいるべきなんです。ただ、自分に関しても演者としてゼロやとは思ってないので、左サイドには張っていて、ここってとこでボールを受けたいですけどね、やっぱり。

いつか映像作品の脚本も書いてみたい

――今コント番組ができない代わりに、たとえばバカリズムさんがドラマの脚本を手がけたりしています。又吉さんもいつか、コント以外の脚本も書いてみたいですか?

又吉 書きたいですね。フジテレビの番組でビートたけしさんが審査委員長をしていた、動画作品を作って競う『オモクリ監督』ってありましたよね。あの番組、やってて楽しかったんです。自分で作った映像をテレビで流せるってなかなかないじゃないですか。あの延長線上にドラマや映画があると思うんです。もちろん、うかつには飛びこめない世界だとは思いますけど、やってみたい気持ちはありますね。

――又吉さんはバラエティのみならず、経済番組『オイコノミア』や、『NEWS ZERO』でキャスターも務めるなど、様々なジャンルで活躍されています。そんな又吉さんからみて、今のテレビってどう思われますか。

又吉 そうですね……、僕はやっぱり面白いなと思いますけどね。それこそバラエティだけじゃなく、いろんなジャンルもあって面白い。『オイコノミア』では僕が突飛な質問すると、相手役の先生、その場で流してくださればいいのに「持ち帰ります」って誠実に答えを探して来てくれるんですよね。なんか、そういう面白さって、テレビを見ている人にも伝わるんじゃないかと信じているところはあります。

 僕は十何年劇場だけでやってきて、その後、テレビに5、6年出してもらっている身ですけど、劇場同様に、テレビってやっぱりスペシャルな人材が集まってるんやなって、肌で感じています。例えば、番組で扱う物事の事実関係なんかを調査するリサーチャーさんとか、スゴい人は、本当にスゴいですから。徹底的ですよ。舞台や本に比べればテレビは浅いだとか表面的に過ぎないとか、いろんなことを言われがちな時代だと思うんですけど、両方の世界に関わってる自分としては、テレビってまだまだ面白いし、だからこそライブ空間でのお笑いもあり、バラエティ番組もありの、いい関係が続くと思っています。

写真=榎本麻美/文藝春秋

またよし・なおき/1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2015年「火花」で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に、『第2図書係補佐』『東京百景』『夜を乗り越える』『劇場』などがある。

INFORMATION

「さよなら、絶景雑技団」
【会場】よみうりホール(東京都千代田区有楽町1−11−1 読売会館)
【日時】2017年9月9日(土)開演 18:30、9月10日(日)開演 18:00
【出演】ピース・又吉直樹、グランジ・五明拓弥、しずる、ライス、サルゴリラ、囲碁将棋・根建太一、ゆったり感・中村英将、井下好井・好井まさお、パンサー・向井慧、スパイク・小川暖奈
【料金】前売6,000円/当日6,500円(税込・全席指定)

「『やぁ』、朗読会」
【会場】よみうりホール(東京都千代田区有楽町1−11−1 読売会館)  
【日時】2017年9月10日(日)開演 13:30
【出演】ピース・又吉直樹、グランジ・五明拓弥、しずる・村上純
【料金】前売3,000円/当日3,500円(税込・全席指定)

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