2017/09/11 17:00

「インターネットで言えない」オタク女子の果てしない浪費の実態 #1

©iStock.com
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「インターネットで言えない話」。このコンセプトがTwitterを中心にじわじわと拡散し、いま文芸同人誌 「悪友」 が局所的な人気をあつめている。8月10日には「vol.1 浪費」が 『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』 として書籍化され、現在4万3千部となっている(9月9日付)。帯には菊地成孔氏が「信者だのお布施だの気軽に言えなくさせる真の信仰告白」と激賞コメントを寄せている。
 2016年末から全3冊が刊行されている「悪友」シリーズ。毎回10名以上の女性たちが自分の「浪費」「美意識」「恋愛」など、普段は言いにくい話について、赤裸々な匿名エッセイを寄稿してきた。アイドル、俳優、声優、同人誌、舞台、コスメ、ホスト……。結局“つながってしまう” SNSでは書けない、「愛の対象」を追いかけてお金を費やしてきた女たちの日々の戦闘記は絶妙にリアルだ。「悪友」を作るのは「劇団雌猫」の女性4人。彼女たちもそれぞれの「浪費」を繰り返しながら、ひとかどの「○○オタク」道を歩んできた。
 8月22日、「劇団雌猫」の4人は『浪費図鑑』出版記念トークイベント「浪費女の夏〜本当にあった怖い話」を開催した。渋谷・東京カルチャーカルチャーに「悪友」ファン約150人が押し寄せ、会場は異様な熱気に包まれていた……。文春オンラインではその内容を、加筆・再構成してお届けする。

◆◆◆

ユッケ:こんにちは。私たち、「劇団雌猫」と申します。ユッケ、かん、ひらりさ、もぐもぐの4人組です。

もぐもぐ:今日は100人以上の方がいらしているんですが、見事に女性ばかりですね。一部の男性の方、この居づらい空間に来ていただいて本当にありがとうございます(笑)。

ユッケ:私の浪費ジャンルは、若手俳優とジャニーズJr.。最近はとくに、「HiHi B少年(はいはいびーしょうねん)」というジャニーズJr.グループを追いかけていまして、そのなかでも那須雄登(なすゆうと)くんという人を推し(※)ています。

 HiHi B少年は、中高生のJr.10人で結成されたユニットなんですが、しばらくCDデビューがなく停滞しがちだったジャニーズJr.界隈に現れた新星ユニットで、それぞれのキャラクターのキャッチーさと若い男の子ゆえのわちゃわちゃ感、勢いのあるパフォーマンスが魅力です。

※タレントを応援すること。応援しているタレントを「推し」と呼ぶが、ジャニーズでは「担当」という言葉で呼ばれることも。

かん:かんです。よろしくお願いいたします。私はもともとハロプロが大好きで、みんなが一時モーニング娘。から離れていった頃もずっと好きだったんです。

一同:(笑)

かん:大阪出身なのですが、その後、NMB48ができた時に劇場に通うようになり、りなっち(久代梨奈)推しになりました。それからもずっと女性アイドルばっかり好きだったんですけど、今年6月に、SEVENTEEN(通称セブチ)という男性K-POPアイドルグループに落ちました。今はジョシュアっていうメンバーのことばかり考えています。よろしくお願いします。

ひらりさ:セブチはファンの年齢層が結構若くて、かんもセブチにハマったとたん2000年代生まれの子とかと交流しだしていてすごいと思った! 私たちは全員今年で28歳なんですけれど、私は今はアラサーのたしなみ……占い、美容、マッサージ、アルコールなどなどに浪費しまくっています。もともとは商業BLに数百万円つぎこんできたんですけど、だいぶ落ち着いてきたって感じですね。

ユッケ:アルコールって、別に落ち着いてないでしょ!

ひらりさ:確かに(笑)。私はここにいらっしゃる多くの浪費女のみなさんと違って、いまは「推し」がいない状態です。「浪費の勲章(※)」のような形では残らないものばかりなので、まわりを見てると羨ましいかな。

※劇団雌猫のイベントでは、「浪費の勲章交換BOX」が設けられ、推しへの愛のあまり複数購入してしまったグッズなどを他の人に譲ったり、自分の推しの魅力をアピールすることができるようになっている。

ユッケ:でもハイローにハマってるでしょう?

ひらりさ:あ、それはそうですね! LDHには昨年まで本当に関心がなかったんですけれど、「HiGH&LOW THE MOVIE」を見てから、考えが完全に変わりました。ハイローでの推しは、三代目 J Soul Brothersの登坂広臣さん演じる雨宮広斗です! ハイローを通じて現実の登坂さんにも興味を抱くようになり、フォトブックなども購入しました。彼は東京23区を離れた福生という場所の生まれで、つねに近隣に存在する米軍基地からただよってくるカルチャーの香りに憧れながら育ったんです。高校の頃は自分の彼女にちょっかいを出してきた同級生と鼻を折る折られるの大喧嘩をするようなやんちゃをしていて……。

もぐもぐ:ひらりささんがこのまま登坂広臣さんの話をしだすと長くなってしまうので、私の自己紹介にうつりますね(笑)。もぐもぐです。よろしくお願いします。

 私はエンタメ全般が好きで、興味を持ったらなんでも現場に行ってみるタイプなんです。AKB48にハマっている時期に前田敦子さんの卒業を東京ドームの現場で見て「これからAKBはどうなるんだろう……」と先人たちの例を学ぶためにジャニーズと宝塚を観始めたら、そちらの沼にも落ちて。推しがどんどん増えていって、いまは全部並行しています。

ユッケ:もぐもぐさんは、女子ドル、ジャニーズ、宝塚だけじゃなくて、将棋や水泳といったスポーツの世界にも足を運んでいるからすごいよね。

もぐもぐ:毎週違うことしてるね。最新の浪費エピソードは、新幹線で、関西まで日帰り観劇ツアーしたことです。

ひらりさ:ちなみに私たちのほうも、お客さんそれぞれの「推し」は誰なのか、何の「沼」に落ちた人たちなんだろうというのが気になってまして。配られた名札シールに自分のジャンルとか担当とかの名前を書いていただけたらうれしいです! 

ユッケ:今日ここに集まったのも何かの縁ということで、乾杯しましょうか。それでは、みんなの浪費に!

全員:乾杯~! 

「消費行動自体をコンテンツとして楽しんでいてすごい」

もぐもぐ:それにしても、勝手気ままに出した同人誌が書籍化して、しかもこんなイベントにまでなってるのは……本当にふしぎだよね。

かん:元となった同人誌「悪友vol.1 浪費」を出したのが2016年12月末で、今こうして書籍化していて……決まったのは3月くらいだったかな? 自分たちのことながらすごいスピード感。普通に仕事もしていたので、6~7月はかなりバタバタしてたよね……(笑)。

 書籍でも触れてますけど、もともとは一介のオタク女4人の「まわりの人のお金の使い方を知りたい!」「それを通じてお隣のあのジャンルについても知りたい!」という好奇心を満たすためのいち同人誌だったんです。でもそれが、本当に多くの方にも楽しんでもらえてるというね。

ひらりさ:「こんなの浪費じゃない」「お友達どうしのなかよしごっこ」みたいな感想も見かけたんですけれど、そういう方にはぜひ「これが私の浪費!」「浪費じゃないけどこれが私の愛!」みたいなものをきちんと書いていただきたい……。「『浪費図鑑』は、消費行動自体をコンテンツとして楽しんでいてすごい」という感想をいただいたのですが、『浪費図鑑』は私達が2017年のいまの時点でひとつのかたちで出したものに過ぎなくて、私はいろんな人のいろんな考え方や自意識がもっと読みたいです。

ユッケ:同人誌「悪友」ともまたちょっと違うニュアンスのラインナップになってるしね。

もぐもぐ:同人誌の方も、今回の書籍も、Twitterやブログで本当にたくさんの感想をいただいて。 Togetter にまとめたので、よかったらそちらもご覧ください!

ユッケ:「悪友」ではkamochicさんという方に表紙イラストを描いていただいていて、そちらも毎度素敵なんですけど、書籍化にあたっては別の方に表紙イラストを依頼しました。小学館で『あげくの果てのカノン』という漫画を描いている米代恭さんです。隠れテーマは「オタク女のアビーロード」です(笑)。

かん:みんな胸張って歩いててかっこいい!

ひらりさ:菊地成孔さんが推薦文を寄せてくださった帯と、表紙と裏表紙に10人の女性が路上を闊歩している姿がズラーッと並んでるイラストのバランスが、絶妙になりましたよね。「連載もやっていてお忙しいのに、大量の浪費女を描かせてすみません……」という気分だったんですが、「大丈夫です! 10人までなら描けます!」とありがたい言葉をいただけて。

かん:10人の女の子をどういう並びにしようかとか、身長とか髪型とか、いろいろ話し合ったよね。

ひらりさ:それぞれがずばり「何オタク」と厳密に決まってるわけではなく、なんとなくアイドルオタクなんだろうなという人とか、ホストにハマっているっぽい人とか、ヅカっぽい人とか2次元オタクだなって人とか、いろいろいますね。

もぐもぐ:表紙の右から4番目の人は、うちわを持ってるんだけど、これについてTwitterでジャニオタらしき方が、「ジャニーズのコンサートではうちわにモール装飾するのは禁止なのに!」と言及しているのを見かけた(笑)。

ユッケ:オタがどんどんうちわを大きくして愛をアピールしようとするから、うちわのサイズが規定されていて、モールも禁止されてるんだよね。

ひらりさ:うちわは求愛表現……! 孔雀とかエリマキトカゲの進化の過程っぽい。

ユッケ:私が中学生くらいのころに導入されたルールなのをよく覚えている。うちわのサイズをはかる器具を使って検査されて、乙女心が傷ついたのを覚えてるよ。でも、ジャニーズ以外だとモールが禁止されていない界隈もあるので、この子はセーフということで……(笑)。

ひらりさ:「こんな身ぎれいにしてるオタク女いねーよ」という感想も見たんですけど(笑)、私個人の解釈としては、浪費している女子たちの、推しやジャンルへのいろんな情熱を含めたあれこれを「擬人化」したイラストなんだよなと思ってます。やっぱり好きなものに熱中している人って、かわいく見えますから。本当に輝いているから。

推しと一緒に、クリスマスの水上運動会へ

ユッケ:本当に助けられているのは、全国で『浪費図鑑』を推してくださる書店員さんたちがいること。

かん:そうそう! 仕事の行き帰りとかに見つけた書店さんに立ち寄ったりしてるんですけど、かなり目立つところに置いてくださっているお店も多くて。

ユッケ:一部の書店さんでは、ジャンルごとの独特の用語やカルチャーを、独断と偏見で解説した「特典ペーパー」も封入させてもらいました。アニメイトさんで配布してもらった「2.5次元舞台ペーパー」は私が作ったんですけど、「バスツアー」の項目は我ながら衝撃的。小越勇輝(おごえゆうき)くんの2016年のバスツアーで、クリスマスに温水プールでの水上運動会をしたというエピソードを紹介しました。

かん:小越くんは、ミュージカル「テニスの王子様2ndシーズン」のリョーマ役の俳優さんだよね。

ユッケ:そう。テニミュで越前リョーマ役を4年も演じ、“プリンス・オブ・テニミュ”と呼ばれた男のバスツアーですよ。クリスマスイヴに北関東かどこかに連れてかれて、夜21時から2時間ほど、小越勇輝と温水プールで水上運動会をするっていうイベントが開かれたことがあったんです。しかもプールの後24時から小越さんによるファンのお部屋訪問があるという。

ひらりさ:ハードスケジュールですね……。推しとプールで運動する機会なんて、普通一生ないよね!?

もぐもぐ:若手俳優がバスツアーを開催するのは普通なの?

ユッケ:水泳大会はなかなかないけど、バスツアー自体はよくやってるよ。でもだいたい牧場に行ってヨーグルトを作ったりするほのぼのイベント。

かん:バスツアーなら、ハロプロもさまざまな伝説がありますよ。今日のテーマ「本当にあった怖い話」にふさわしいエピソードがたくさんあるので、覚悟のある方は「ハロプロ バスツアー 伝説」で検索を……。 

ユッケ:値段はピンキリだけど、水上運動会までくると推しへの愛を試されている感覚すらあるよね……! そういう風に、界隈のカルチャーやら味わい深いエピソードをチェックするのも我々の楽しみです。

ひらりさ:書籍の中でも、ミッキーオタの人による「TDLの年間パスポートは実質タダ!」みたいな話とか、声優現場で遭遇した「リアルクラウドファンディング」の話とか、そのジャンルの人じゃないとわからない、聞くと「へえ〜!」と思ってしまうエピソードが盛りだくさんだよね。現場での応援グッズも、うちわとかペンライトとかフラッグとか、ジャンルごとに変わってくるし。もっと色々なジャンルを取り上げたかった!

ユッケ:そういえば、もぐもぐさんがさっき「関西まで日帰り観劇ツアーした」って言ってたのは、なんだったの?

もぐもぐ:宝塚歌劇団の月組公演を、通称「ムラ」……兵庫県の宝塚大劇場まで観に行ったんです。

ユッケ:宝塚って、東京にも劇場あるよね?

もぐもぐ:メインの公演は、宝塚大劇場で上演してから、東京にやってくるの。待ってれば東京でも観られるんだけど、耐えられなくって、仕事の合間を縫ってムラに行くことにしたの。

ユッケ:禁断症状が出たのか。

もぐもぐ:ムラに遠征する時は何か別の用事を入れることが多いのだけど、今回はどうしてもそういう「言い訳」がつけられなくて……。でも、福岡までは日帰り圏内ですよ。飛行機は偉大!

かん:「○○までは近所」って、「V系バンドで浪費する女」も書いてくれてたね(笑)。

ひらりさ:この後ゲストで登場してくれる「EXOで浪費する女」は、推しのために世界各地を回ってますので、その話も楽しみにしましょう。

ユッケ:K-POPオタ、本当にするっと韓国行くよね。かんは、今のところ予定はないの?

かん:うん、家族の許可が下りなくて……。浪費欲を満たすためにセブチグッズを買い漁ったんだけどそれも買い尽くしてしまって、今はサンリオキャラの「シナモロール」グッズを買い漁っています。

ひらりさ:どういうこと……?

かん:Twitterで、女子高生カラット(※)たちが「ジョシュアはシナモンに似てる!」って盛り上がってるの。

※SEVENTEENファンの愛称。

もぐもぐ:最初聞いたとき、「なにそれ」って思った(笑)。

かん:それまでは特にシナモンに興味なかったんですけど、自分に手の届く範囲では一旦セブチへのお金の使い道がなくなってしまって「これからどうしよう……」と思っていたときに、ふとローソンに寄ったら、「シナモロール一番くじ」をやっていたんですよ。「これ、ジョシュアのグッズじゃん!?」って思っちゃって。結局10回くらいクジを引いて、大量のシナモングッズをゲットしましたね。

ユッケ:いい話だね(笑)。

かん:でもユッケさんにこの話をしたら、「そういえば私の推しの那須くんもシナモンに似てる」って言い出したよね?

ユッケ:うん、似てるよ! ドヤ感のある口元が特に。あと、那須くんはメンバーカラーが青なんだけど、シナモンもよく青~水色の服を着ていることが多いので似ている。

 でも、今テニミュで跡部景吾役をやっている三浦宏規くんという役者も、シナモンに似てるって言われていて。

ひらりさ:自分の推しがなぜかシナモンに見えてくる病?

かん:「推しナモン」!!!

一同:(笑)

もぐもぐ:我々のグループLINE、いつもこんな話ばかりしてるよね(笑)。

ひらりさ:推しが一人いると、人生の他のことも楽しく見えてくるので素晴らしい!

写真=釜谷洋史/文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)

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