2017/09/19 17:00

成瀬の世界を見事に体現 仲代、静の芝居も素敵!――春日太一の木曜邦画劇場

1960年作品(111分)/東宝/4500円(税抜)/レンタルあり
1960年作品(111分)/東宝/4500円(税抜)/レンタルあり

 その役者人生をインタビューさせていただいた最新刊『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』(文春文庫)の執筆に当たり、改めて仲代のフィルモグラフィを俯瞰して驚かされたことがある。

 それは、役柄の幅の広さだ。たとえば黒澤明作品だけをとっても、『用心棒』では蛇のような冷酷なやくざを演じたかと思えば、翌年の『椿三十郎』では剛直な侍を演じた。五社英雄作品のやくざ役でも、『出所祝い』ではストイックな男を演じる一方で『鬼龍院花子の生涯』では粗野な男を演じる――といった具合に、一人の役者とは思えないほど千変万化の様を見せているのだ。

 ただ、演じてきた役柄には一つだけ共通点がある。それは、その多くが平凡な日常を暮らす「マイホーム」感からかけ離れた役だということだ。そして仲代は、それを強烈な殺気や狂気と共に演じてきた。

 では、だからといって仲代が「平凡な人間」を「日常的な芝居」で演じられない役者かというと、そうではない。

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