2017/09/24 11:00

『笑う故郷』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

 芸術ってなんだろうね?

 まず、国家や権力から自由で、社会に対して根源的な問いを発するもの。一方で、国家から文化として守られ、共存していく面もある。……それってダブルスタンダードっぽいかも?

 という、芸術家的葛藤の只中にいるのが、この映画の主人公ダニエルだ。アルゼンチン出身の男性作家で、故郷の田舎町サラスを舞台に小説を書き続け、このたびめでたくノーベル文学賞を受賞(ガルシア=マルケスがモデルだと思う)。

 彼は受賞スピーチでこう吐露する。

「芸術家の本分は、問題提起して人々の心を揺さぶることです。しかし今回の受賞は、私が権威の意に沿う都合のいい作家になったということじゃないか。いま喜びに勝る苦しみを感じている……」

 ダニエルはその後のお祭騒ぎにもゲッソリ。そして四十年ぶりに、故郷の田舎町にふらりと帰郷した。

 昔の友人知人と再会し、素朴な歓迎を受けたダニエルはうれしそうだ。でも、のどかな田舎町もけっして楽園じゃない。ここだって小さな国家なのだから。ダニエルは“都合のいい著名人”として、次第に町の文化事業に組み込まれていってしまう。

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