2017/10/22 11:00

『女神の見えざる手』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

©2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA
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“必要に迫られ、後から手に入れた特殊能力”を持つ主人公が妙に好きだ。例えば、目が見えないぶん凄い戦い方ができる座頭市とか。最近だと『ベイビー・ドライバー』の主人公も大好きだった。

“天才に生まれたゆえに日常生活では変人”というキャラとはちがう。逆だ。彼らにはまず才能じゃなくて欠損がある。そこを直せないから、フォローするために、別の能力を開発したのだ。

 きっと、自分にもそういうところがあると感じて、つい応援してしまうんだろう。それに、人の技能ってのは多かれ少なかれそういうもんだ、とも思うのだ。

 さて、この映画の主人公エリザベスは、ワシントンD.C.で活躍する凄腕のロビイストだ。ロビイストとは、顧客の利益のために政党や議員に働きかける“根回しのプロ集団”のこと。政府の大きな決定を左右するために、“アメリカ民主主義の寄生虫”と揶揄される職業でもある。

 エリザベスはワーカホリックで勝利依存症。目的のためならどんな手段も使う、悪役っぽいキャラクターだ。だからうんざりするはずなのに、ジェシカ・チャステインの演技がうまくて引きこまれてしまった。「私は嘘をついて育ったの。生きるために、まともな生活を手に入れるために、仕方なく。だから嘘が得意!」という独白に、あぁ、この人のも後から開発された能力なんだ、わたしたちと同じ、といつのまにか味方になっていた。

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