2017/10/28 11:00

結成25年 サニーデイ・サービスの解散・再結成と組織論

(c)佐藤亘/文藝春秋
(c)佐藤亘/文藝春秋

サニーデイ・サービスのベーシストでありながら、年間600杯以上を食べる“ラーメン評論家”でもある田中貴さん。学生時代にデビュー、20代末のバンド解散、会社員を経て、46歳となった今、再結成したサニーデイ・サービスで活動しています。その独特な仕事へのスタンスを紐解く前後編インタビュー。前編では「コピー機の使い方すらわからなかった」という会社員時代とバンドの中での役割論について聞きました。

解散したとき「一生会うこともないだろう」と思ったけれど

――田中さんはとても不思議なスタンスでお仕事をされていますよね。本業はミュージシャンである一方で、ラーメンの本を出したり語ったり、ラーメン評論家としての活動もされています。

田中 別に評論家と名乗っているわけではないですけどね。好きで食べてるだけなので。

――そして、かつては会社員として別のバンドのマネージャーもやられていた。

田中 いや、あくまでも裏方として働いていたということなんです。2000年にサニーデイ・サービスが一度解散して、その後にスクービードゥーのスタッフをやることになったのも、彼らはまだ何も知らないから現場でいろいろ教えてやってくれと頼まれたのがきっかけでした。

――その頃田中さんは何歳でしたか。

田中 29歳です。それまではアルバムを作ってツアーをしてという毎日で、友達と遊ぶこともなかったし、忙しいのもあって世間知らずのまま30になった感じでした。僕のデスクはあったけれど、普通に朝10時に出社するようなことはほとんどなかったんですよね。とにかく当時のスクービーが忙しくて、現場にそのまま直行していたんで。

――そういう30代前半の頃は、自分の将来像をどう考えていましたか?

田中 どうでしょうね。大学在学中からバンドをやってたので、就職活動をしてないんですよ。それこそコピー機すら触ったことがなくて。大学のテストのときも、ノートのコピーとか、友だちに頼んじゃってましたから。譜面をコピーするのに「どうやればいいんですか?」って周りに聞くことから始まりました。

――2008年にサニーデイ・サービスが再結成しましたが、そのときにはどんな決断があったんでしょうか。

田中 それも「やってみようか」という感じだったんですよ。解散した時は曽我部(恵一)に対して、「一生会うこともないだろう」くらいには思ってたんだけど。でも、8年経ったら曽我部のソロに呼ばれてベースを弾いたりもしていて、ちょうど北海道のライジング・サンというフェスから「サニーデイで出てくれませんか」という話があったんです。それで、その場で再結成を決めた感じでした。

バンドは組織ですから、自然と役割分担ができてくる

――曽我部さんはローズレコーズという自らのレコード会社を立ち上げてDIYな形で音楽活動を続けています。サニーデイ・サービスのアルバムもそこからリリースが続いているわけですが、田中さんの考えとしてはどうでしたか?

田中 再結成のときも「メジャーでやればいいのに」と思いましたよ、正直。気の合うディレクターと一緒にやれば、それなりに融通はきくし、そんな嫌な思いをすることもない。しかも、ちゃんと宣伝はしてくれる。だからアルバム1枚の契約でもいいから「再結成しました」というのをメディアを使って広めた方がいいのにと。曽我部にもそういう話をしたんです。そうしたら「田中、誰か会って話しといてよ」みたいなことになって(笑)。それで何人かレコード会社の人と会って話もしたんです。

――裏方時代の経験も人脈もあるから、レコード会社の人とも対等な関係で交渉ができるわけですよね。

田中 そうですね。スタッフとして仲良くなったレコード会社の人もいるし、音楽的に趣味の合う人も多いので。だけど、途中で曽我部がやっぱりメジャーは嫌だと。いまだに「あの時にメジャーでやってたら」とは思いますけどね。ネットやSNSを使えば自分たちだけで伝えられることもあるし、アーティストがメジャーに所属する意味がなくなってきたとも言われるけれど、やっぱり地方に行くとテレビの影響力の大きさを感じます。そういう意味ではちょっと後悔はありますね。

――田中さんは当初のバンド時代にもメンバーを車に乗せて運転していたそうですが、ある種のマネージャー気質があるとは思いませんか?

田中 どうですかね……。バンドって、「歌いたい! ギターソロ弾きたい!」みたいな、戦隊もののアカレンジャータイプが集まるものだと思うんですよ。僕もマネージャー気質じゃなかったと思いますもん。でも、数人といえどもバンドは組織ですから、自然とやってるうちに役割分担ができてくる。

曽我部は、トータルとしての作品を作る才能に長けてる

――ベースだったらベース的に支えるような役回りが、自然と性格にも侵食してくるような……。

田中 そうですね。だから楽器を選ぶのが先か、性格が先なのかわからないけど、考えてみると後々プロデューサーになる人ってベーシストだった人が多い気がしますよ。ギターとかボーカルには、そういう目立たず支える側に回る人、あんまりいないんじゃないかなあ。

――サニーデイ・サービスは昨年に「DANCE TO YOU」というアルバムをリリースしました。その時に曽我部さんに話を聞いたんですが、予定していた予算も制作期間も大きくオーバーして、最後にはほぼ一人で家で作っていたということでした。田中さんはそういう状況をどう見ていましたか。

田中 やっぱり曽我部は、トータルとしての作品を作る才能に長けてるんだなと思います。実際、いい曲を書けるだけじゃ一流のミュージシャンにはなれないと思うんです。ジャケットやヴィジュアルや売り方にセンスが出る。そこが優れていないと、この時代売れないと思うんです。「DANCE TO YOU」の時、ボツになった曲が何十曲もあって、僕もそれが知らないうちに消えていくのが最初は嫌だったんですよ。「あの曲、なんでなくなった?」「新しいのができたからこっちにした」「えーっ!?」みたいなこと、曽我部と僕の間でけっこうあったんですけど、出来上がったのを手にしたら「ああ、なるほどな」と思った。僕が何十曲もあるレコーディングした曲から選んでアルバムを作ったとしても、いいアルバムにはなっただろうけど、たぶんそれほど話題にならなかったと思うんです。僕はやっぱり常識人なんですよね(笑)。

後編 サニーデイ・サービスという居場所と「地方の時代」 に続く

取材・構成=柴那典
写真=佐藤亘/文藝春秋

INFORMATION

サニーデイ・サービス、師走の東京・大阪ワンマンライブが決定!
『DANCE TO YOU』以降の曲を中心とした、サニーデイ結成25年目の2017年を締めくくるライブ!
<DANCE TO THE POPCORN CITY>
12/18(月)東京 恵比寿リキッドルーム
12/21(木)大阪 梅田クラブクアトロ
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ストリーミング配信のみという前代未聞のリリースで度肝を抜いた、サニーデイ・サービス最新アルバム『Popcorn Ballads』が、ついにCD・LPとして12/25に発売決定!配信時の収録内容から大幅に改訂された、全25曲100分超の壮大なミュージカル・ジャーニー! 19年ぶりに行われた日比谷野音公演の模様を収めたライブDVD『サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ』も同時リリースです!

たなか・たかし/1971年生まれ。サニーデイ・サービスのベーシスト。2000年のバンド解散後、山下達郎氏が所属するスマイルカンパニー内の新人開発ロック部門のチーフとしてスクービードゥーのディレクション、マネージメントを手がける。退社後、国内外多くのアーティストのサポートミュージシャンとしての活動の他、スネオヘアーの作品を共同プロデューサーとして多数リリース。2008年のバンド再結成後も、声優アイドルユニットや、ボーカロイド作品までプロデュース業は多岐にわたる。2018年放映のアニメ『らーめん大好き小泉さん』では、劇伴にも初挑戦する。音楽以外では、趣味である食べ歩きの知識を活かし、CSフジ『ラーメンWalkerTV2』では乃木坂46をゲストに迎えるメインMCとして、NHK『マイあさラジオ』ではレギュラーコーナーを担当するなどメディアでも活躍中。他に、文筆業も連載を月に三本抱えるなど、多方面にわたり精力的に活動中である。

(「文春オンライン」編集部)

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