2018/08/12 11:00

『判決、ふたつの希望』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

© 2017 TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL - EZEKIEL FILMS - SCOPE PICTURES - DOURI FILMS
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 舞台は中東レバノンの首都ベイルート。地元民のトニーはある日、排水管を直すの直さないのという些細な行き違いから、パレスチナ難民のヤーセルになぜかブチ切れる。二人の諍いは侮辱と暴力の応酬になり、やがて法廷に持ちこまれた。右派の弁護士が地元民のトニーに、人権派の弁護士が難民のヤーセルについて、それぞれのイデオロギーのパフォーマンスを始め、それにマスコミも食いついた。そして、排水管から始まった揉め事は、ついには大統領まで巻きこんでの場外大大大乱闘に!?

 この作品は、複雑な背景を持つ政治問題を、手に汗握る法廷劇に昇華した社会派エンターテインメント映画だ。わたしはふだん、裁判のニュースを聞くとき、「法的にはともかく、人としてはどっちが正しいのかな? そしてその正義はこの裁判で守ってもらえるの?」とやきもきするんですが、この映画の中には正しさが複数あって、正義が二転三転し、翻弄されどおしでした。

 難民側の弁護士が「人種差別だ!」と憤る一方、地元民側の弁護士は「でもこの国は難民でもう手一杯じゃないですか」と憂える。難民はケアされるが、国内問題の犠牲者は放置されている、トニーもその一人だ、これは“難民VS地元の透明人間”の戦いなんだよ、と。

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