2018/09/04 17:00

ささいな口論が国を巻き込む法廷劇に……「判決、ふたつの希望」を採点!

© TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL.
© TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL.

〈あらすじ〉

レバノンの首都ベイルート。現場監督として住宅の補修作業を行っていたパレスチナ難民のヤーセル(カメル・エル=バシャ)は、ベランダから排水が垂れ流しになっていることに気付く。家主のレバノン人男性トニー(アデル・カラム)はヤーセルたちが善意で補修した排水管を破壊する。ヤーセルが思わず吐いた「クズ野郎」という一言にトニーは激怒し、謝罪を要求する。雇い主に説得されて、渋々謝罪に出向いたヤーセルは、トニーから放たれたパレスチナ人を侮辱する言葉に激昂し、トニーに怪我を負わせてしまう。法廷に持ち込まれた2人の諍いは、マスコミの報道に煽られ、レバノン全土に民族の対立が広がっていく。

〈解説〉

ジアド・ドゥエイリ監督が自身の経験を脚本のヒントに描く社会派エンターテインメント。第90回アカデミー賞でレバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされた。113分。

  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★☆異文化の者同士が一触即発的に共存する地。その中でどう賢く折り合ってゆくか。法廷場面はおかしみも漂う、快作!

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆民族や宗派の軋轢という難儀な題材にひるまず、「古傷」の意味を深く考察している。苦痛をひとり占めできる者はいない。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆血みどろの侵略の歴史や同じ宗教でさえ争う信仰心の深さに、全く縁がないせいかオヤジ同士の喧嘩の展開にただ仰天。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆怒りと赦しの熱誠な考察。ハリウッド的文法で交通整理した中東の縮図でもあり、個の顔が迫る人間味重視の演出がいい。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆誰にだって言い分はある。法廷劇を通じて明かされる民族の歴史。映像に息吹きをかける“レバノン・ショット”が熱い。

INFORMATION

『判決、ふたつの希望』(レバノン、仏)
8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
監督・脚本:ジアド・ドゥエイリ
脚本:ジョエル・トゥーマ
出演:アデル・カラム、リタ・ハーエク、カメル・エル=バシャ、クリスティーン・シュウェイリー、カミール・サラーメ ほか
http://longride.jp/insult/

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年9月6日号)

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