2018/12/02 11:00

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

 ある日、十三歳の少年ジュゼッペが村から忽然と姿を消した。父親を脅すため、マフィアが誘拐したのだ。少年は監禁されて衰弱し……。

 監督コンビは事件が起きたシチリアの出身者。七百七十九日後に殺され、遺体を硝酸で溶かされた被害者のことが、ずっと忘れられなかったのだという。

 映画の終盤。作り手はフィクションだけにできるミラクルな方法で創作と現実の壁を超え、“被害者一名”の顔と独特の眼差しを観客に提示する。少年の姿はゴーストとなりスクリーンに蘇る。これを観た人たちは、実際の事件も、少年の存在も、けっして忘れないだろうなぁと、わたしは思った。

 フィクションは、ジャーナリズムとは違う形で、現実の悲劇とこんなふうにコミットできたのか。そんな驚きとともに観終わりました。

INFORMATION

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』
12月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
http://sicilian-movie.com/

(桜庭 一樹/週刊文春 2018年12月6日号)

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