2018/02/28 17:00

元公安が語る『BG~身辺警護人~』――木村拓哉は“敏腕ボディーガード”に向いている!?

 主演ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)の演技が好評を博している木村拓哉。彼が演じる島崎章は、日ノ出警備保障株式会社身辺警護課の敏腕BG(ボディーガード)という役柄だが、果たしてその演技は、リアルボディーガードの目にどのように映るのか。

 元・公安外事警察に勤務、引退後は警察と裏社会について多数の著書を執筆する傍ら、依頼があれば民間ボディーガードとして要人警護もこなす、北芝健氏にその解説をお願いした。

木村拓哉は“威圧感”を表現できている

――最初に、木村さんの“体格”や“見た目”は、ボディーガードとして適しているのでしょうか? 『BG』で同じくボディーガード役を演じる、斎藤工、上川隆也などの長身俳優と比べると、背が低いな……と感じてしまうのですが。

北芝健氏(以下、北芝) ボディーガードは、警護対象者を守るために、“威圧感があること”が大切です。そういう意味で、ボディーガードは、体格がガッシリしていること、また見た目に関しては、強面であることが適しているといえるでしょう。私もこの顔のためか、警察にいるとき、ボディーガードとしての仕事を上司からよく振られました。

 また、ご指摘のように、長身というのもポイントになりますね。木村さんは、確かにほかのキャストに長身俳優が揃っているので一般体形に見えますが、第1話を見たところ、ちゃんと体を鍛え上げていましたし、また、威圧感を体格や見た目以外の面で出せていると思います。身辺警護中は切り替えてオドオドした雰囲気を一切見せず、周囲に目配りをしている。そういった点で威圧感を出せているので、十分に“適している”といえます。

――ボディーガードに向いている性格や人間性といったものはあるのでしょうか? その点では、木村演じる島崎はどう見えますか?

北芝 島崎さんは、劇中でクライアントのワガママともいえる指示を、文句も言わずにこなしています。こういった業務外の命令も、ボディーガードをしているとよくあるんです。依頼人の買い物の荷物を持つなど、実際には警護することが困難になる場合があるものの、やはり雇用関係にあるので、従わざるを得ないんです。

 島崎さんは、もともとボディーガードの経験者ということもあると思いますが、こういったワガママを受け入れる忍耐強さがあるし、一度受けた依頼はやり遂げるといった真面目さ、相手を観察して気配りをする性質を持っている。そこもまたボディーガードとして向いていると思います。

――『BG』で木村さんは、本格的なアクションシーンに挑戦していますが、そのスキルに関しては、どのように思いますか?

北芝 個人の感想ですが、第1話を見た段階では、木村さんのアクションはところどころに拙さも見受けられました。ですが回を重ねるごとに、演技に磨きがかかり、いまでは文句なくアクションシーンも見どころの1つになっていると思います。

――劇中には、警視庁警備課も登場しています。島崎は、民間のボディーガードという役柄なので、警視庁警備課のSPと違い、殺傷能力の高い武器の携帯は許可されていないそうです。北芝さんは、民間ボディーガードだけでなく、警察官時代にもボディーガードの任務をしていたそうですが、どんな違いがあるのでしょうか?

北芝 やはり拳銃を持っているかどうかで、要人警護をしているときの安心感は違います。ここは日本だとわかっていても、例えば金融業の社長に民間のボディーガードとしてついているときは「襲ってくる相手が拳銃を持っていたらどうしよう」と警護中に不安を覚えることもあります。

――島崎と警視庁警備課SPの落合義明(江口洋介)との対立も描かれていますが……。

北芝 島崎さんと落合さんの対立は見どころの1つですが、現実は違います。実際には、民間警備会社で働くボディーガードは、警察OBの人間が非常に多く、千葉県で警備会社の講演に呼ばれたとき、民間警備会社の社長・副社長合わせて100人近くが集まりましたが、ほぼ全員が千葉県警OBだったこともあります。

 このようにSPと民間のボディーガードはいわゆる現役とOBの関係にあたり、民間警備会社は、警察退職者の再雇用先としての側面もあるので、落合さんのように民間ボディーガードをバカにしたような高圧的な対応をしてくることはまずありません。民間警備会社側も、SPの人となりを現役時代からチェックしていますから、落合さんのような態度を取っていると、引退後にボディーガードとなる道が閉ざされてしまいます。

――第3話では、身辺警護課に緊急の依頼が舞い込み、人気タレント・かのん(三吉彩花)に支給する現金「1億円」の警護を島崎たちが任されていました。“人物以外”の警護をする依頼は現実にもあるのでしょうか。

北芝 現金輸送の警護などは割とあります。セコムやALSOK(綜合警備保障)といった警備会社を見ていただいてもわかるように、現金輸送は通常業務でやっていますので、ノウハウもあり、そこまで困難な任務というわけでもありません。

――同話には、渓谷の上にかかる高所の吊橋から、手錠を命綱にしてぶら下がるといったアクションシーンもありました。民間のボディーガードがこのような危険な任務を任されるものなのでしょうか。

北芝 そのような、あからさまに命の危険がある依頼は、警備会社が審査の段階ではねてしまいますのでボディーガードが任務に就くことはありません。やはりビジネスですし、日本では特に安全面が重視されていています。もし命を落としたりして、遺族が会社側を裁判で訴えた場合、十中八九会社側が負けてしまいますから。

 ちなみに第3話は、実はかのんが誘拐されていた(その後、狂言誘拐だと判明)という展開でした。誘拐だとわかった場面では、島崎らが警察に通報するかどうかで揉めたものの、結果危険性が高いという理由から、通報することに。しかし逆に言えば、小さな犯罪(例えば、依頼人が運転中に信号無視をしたなど)を犯しても、危険性が高くなく、証拠が残らず、しかも即座に逮捕されるような案件でない場合、ボディーガードは見て見ぬふりをすることもあります。

――そのほか、北芝さんが劇中で“ここはリアリティがある”と感じた点をお教えください。

北芝 島崎さんは、ボディーガードの仕事を辞めた後、警備員に転職して6年働き、配置転換によって再びボディーガードになるという設定ですが、とてもリアルだなと思いました。私もそうですが、頼まれれば警備員もしますし、ボディーガードの仕事があるときはボディーガードをしています。それを人に話しても、「ボディーガードが警備員もするの?」と、信じてくれないんですよ。なので、この設定が視聴者に受け入れられて、好反応だったのはうれしかったですし、島崎さんに親近感が沸きましたね。

――逆に、ここは現実と違うなと思った箇所を教えてください。

北芝 「ボディーガードの世界では、失敗を犯した者は現場には戻れません」といったセリフがありましたが、そんなことは現実にはありません。島崎さんは、過去に子どもの命を守るために、クライアントから目を離してケガをさせてしまったという過去があり、それが一度ボディーガードを辞める原因となったわけですが、緊急性のある正当な理由によって起こったことですから、それでボディーガードとして働けなくなることはないです。

 それとは別に、現実のボディーガード業界は人材難ということもあります。言い方は悪いかもしれませんが、クライアントが死んだわけでもありませんから、その程度の理由で会社も解雇することはあり得ませんね。

――最後に、北芝さんが過去に経験した、印象に残っている「ボディーガードの任務」を教えください。

北芝 ライブドア時代の堀江貴文さんを警護した時のことでしょうか。堀江さんが逮捕される少し前のことですが、7人のチームを組んで、私がリーダーの立場となり、講演会中の警護任務に就きました。まだ粉飾決算の問題が出る前だったものの、ライブドアの株で損したという人が、講演中に罵声を飛ばすだけでなく、堀江さんに襲い掛かろうとしたり……そういった人を取り押さえるなどの対応には苦慮しました。

 しかも講演後、別会場で座談会のような企画も予定されていたんです。堀江さんを連れて、徒歩で移動することになっていたのですが、どこから襲われても対処できるように、堀江さんの周辺を7人で取り囲んでいきました。その時のことは、とても印象に残っていますよ。

北芝健(きたしば・けん)
早稲田大学卒業後、商社に勤務するも一念発起して警視庁入庁し、交番勤務の後、私服刑事となる。一方で鑑識技能検定にもパスし、警視庁の語学課程で優等賞をもらい、公安警察に転属したが、巡査部長昇任試験を拒否し、巡査のまま退職。ロス市警の捜査に協力したことから、アジア特別捜査隊と懇意になり、犯罪捜査をネイティブの英語で伝える語学力を身につける。現在は現場捜査の経験を活かし、複数の学校の講師として犯罪学を教える。プロファイリングの第一人者としてテレビのコメンテーターとしても活躍。

『迷宮探訪 時効なき未解決事件のプロファイリング』(北芝健 著、双葉社)
科学捜査の発達した現代でも尚、絶えず起こる未解決事件。その現場を訪れて、はじめて解き明かされる事件の深層、そして真犯人―。迷宮事件の霧をすべて晴らす「北芝プロファイリング」完全版事件現場の現在。

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