2017/06/14 07:00

戦争映画の常識を超えた信念と生き地獄!『ハクソー・リッジ』

文=増當竜也/Avanti Press

愛国心を抱いてアメリカ陸軍に入隊するも、強固な信仰ゆえに武器を手にしようとはせず、誰も殺さないと誓った敬虔なキリスト教徒デズモンド・T・ドス。やがて彼は衛生兵として戦場に赴いて、敵味方を問わず多くの人命を救い、“良心的兵役拒否者”として初めて名誉勲章を与えられた……。

名優メル・ギブソンが久々に監督した『ハクソー・リッジ』は、衝撃的とも奇跡的ともいえる実在の人物を主人公にした戦争映画の傑作である。

ヴェトナム戦争映画を踏襲する作劇の妙

時代は太平洋戦争の末期。ドラマとしては大きく、軍隊内でのデズモンドと周囲の衝突などを描いた前半と、沖縄のハクソーリッジ(日本では“前田高地”と呼ばれた)における日米の激戦を描いた後半の二部構成となっている。

この構成はスタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』(1987年)と同じであり、また後半での高地をめぐる攻防戦ということでは『ハンバーガー・ヒル』(1987年)を彷彿させる。どちらもヴェトナム戦争映画の名作群のスタイルを踏襲していることにも作劇の妙を感じるのだが、やはり全体を通して痛感させられるのは、従来の戦争映画の常識を超えた主人公の信念である。

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