2017/07/26 07:00

【ブルボンヌの新作批評27】オネエが“美しく死ぬ”ためにミスコンを目指す『ダイ・ビューティフル』

以前、オネエキャラが集められたテレビ番組で「私たちの葬式はどうなるのか」という話題になった。仕事で会ってる人たちはみんなこっちの姿しか知らない。名前は? 遺影は? 死に化粧は? ……ほんとオネエって、どう死ぬべきなのよ。

 そもそもオネエというのは複雑な単語で、もともとは装いや言動にいわゆる女性性が強く出たゲイ男性のことだったのが、テレビ的にはトランスジェンダーから女性的なストレート、さらには男らしいゲイにまで便利使いされるようになってしまった。ぶっちゃけゲイ女装のアタシはオッサン姿で良いのだが、たぶん女性へのトランスジェンダーであれば、本心では女性としての姿や扱いで死を迎えたいと願う率が高いだろう。だが日本における葬式は親族中心の厳かな儀礼の場。いくら人生の大半を女性として生きていても、親族の理解がなければ本人にとって「美しく死ぬ」こともできないのが現状だろう。

 この映画は、日本からそう遠くないアジアの国フィリピンで、美しく死のうとしたトランスジェンダーの物語だ。冒頭、少年が友人たちと女装をし、ミスコンごっこを姉に撮ってもらいながらはしゃぐ映像とともに、モノローグが流れる。「家族はいつも私を支え励ましてくれます。今の私があるのは家族みんなのお陰です。私をよりよい人間に変えてくれたすべての人たちにお礼を言います。私は唯一無二のミスコン女王、トリシャ」……そう言った途端に、この小さな宴は「何してるパトリック!ドレスなんか着て!」と激怒する父親によって止められてしまう。この「ごっこ遊び」とモノローグは彼女の人生そのものなのだ。そして物語は、アンジェリーナ・ジョリー風の美しいメイクを施された主人公トリシャのアップで幕を開ける。ただしこのメイクは「死に化粧」。子供の頃から女性になりミスコンで優勝することに憧れた彼女の人生が、時間軸を交差しながら描かれていくのだ。

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