2017/09/30 07:00

中村獅童演じる“究極のダメ男”、「四谷怪談」伊右衛門の放つ抗いがたい色気とは?

NEWシネマ歌舞伎「四谷怪談」 9月30日公開 (C)明緒

文=大谷隆之/Avanti Press

ああ俺は、これまで中村獅童という役者の、一体どこを見ていたのだろう──。2016年初夏、渋谷・コクーン歌舞伎の第15弾「四谷怪談」を観終わった後、真っ先に浮かんできたのはそんな溜息まじりの感想でした。主役の民谷伊右衛門を演じた獅童さんの圧倒的な色っぽさに、心底びっくりしたからです。

全身から滲む、浮かばれない色男の切ないオーラ

NEWシネマ歌舞伎「四谷怪談」 9月30日公開 (C)明緒

もちろんそれまでも、“歌舞伎界の異端児”と言われた彼の活躍は、映画やテレビでたくさん目にしていました。たとえば、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(2006年)で演じた海軍大尉。いつもは威張っているくせに、いざ戦闘となると部下の命を平気で踏みにじる“イヤ~な感じ”は、今も強く記憶に残っています。あるいは近年では、NHKの「トットてれび」(2016年)もすばらしかった。満島ひかりが黒柳徹子役を演じ、戦後テレビ史をぎゅーっと凝縮したこのドラマで獅童さんが担当したのは、稀代の喜劇俳優・渥美清。決して明るいだけじゃない。寂しさや孤独癖も滲む「寅さん」の素の表情は、多くのドラマ通を唸らせました。

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