2018/08/30 07:00

コスパ悪すぎ?あまりにも過酷なプロ棋士への道のり

『泣き虫しょったんの奇跡』9月7日(金) 全国ロードショー
(C) 2018『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 (C) 瀬川晶司/講談社

文=パラソル亭ミス/Avanti Press

『3月のライオン』、『聖の青春』に続き、将棋界をテーマにした『泣き虫しょったんの奇跡』が9月7日(金)より全国公開される。

26歳の年齢制限で一度は将棋から離れたしょったんこと瀬川晶司(現・五段)が、改めて将棋と向き合い、周りの人々の助けを借りてプロ棋士となった、まさに“奇跡”の実話だ。本人著の自伝的作品を豊田利晃脚本・監督で映画化。

『青い春』以来、16年ぶりに豊田監督とタッグを組む松田龍平が主人公のしょったんを、子供の頃から彼とともに将棋を志す友人・鈴木悠野を人気バンドRADWIMPSの野田洋次郎が演じる。他にも妻夫木聡、染谷将太、上白石萌音、國村隼ほか豪華出演陣が顔を揃える。

天才少年たちを待ち構える三段リーグの沼、26歳というタイムリミット。

プロ棋士になるには、奨励会という組織に所属しなければならない。将棋少年・少女たちが東京・大阪の両本部に集い将棋に打ち込む。奨励会に入るのにも試験があるため、合格できるのは子供の頃から天才ともてはやされてきた精鋭ばかりだ。

三段リーグと呼ばれる三段同士でのリーグ戦を戦い、上位2名になれば四段昇段、晴れてプロ棋士の仲間入りができるのだが、この三段リーグが最も難関であり、人生を賭けた戦いが繰り広げられる。

子供の頃から将棋に打ち込んできたしょったん(松田龍平)は、中学三年で奨励会に入り、22才の夏に三段となった。ここから魔の三段リーグの幕が開ける

天才・藤井聡太(現・七段)が5敗した三段リーグ。

『泣き虫しょったんの奇跡』9月7日(金) 全国ロードショー
(C) 2018『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 (C) 瀬川晶司/講談社

奨励会を去った後の人生は、本来決して明るいものではない。藤井聡太(現・七段)が中学生でプロ入りした後に高校進学を決めたことがニュースになったように、棋士を目指す人は高校に行かない人も多い。

その一方で、将棋だけに全てを捧げてきた人が26歳になって一般社会に出ていくのは難しい。ギャンブルやお酒に逃げる人、タイムリミットを待たずに退会していく人、退会後自ら命を絶つ人……。タイムリミットが近づけば近づくほど、焦りが募り、負けを重ねてしまう人も少なくない。

映画の中でも、三段リーグでもがき苦しむ棋士たちの様子が描かれている。冬野渡(妻夫木聡)は「瀬川さんはいい人だった。僕に、タバコをくれた」と言って奨励会を去っていく。タバコをもらったという些細な優しさが印象に残るほど奨励会の雰囲気は殺伐としているのだ。

プロと大差ない実力者が揃う三段リーグで勝つためには、ミスにつけ込むようにしてでも相手を倒さなければならない。仲間を失う覚悟で戦わなければならないことも棋士たちを精神的に追い詰める。 

プロより強いアマチュアになったしょったんが起こした“奇跡”

『泣き虫しょったんの奇跡』9月7日(金) 全国ロードショー
(C) 2018『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 (C) 瀬川晶司/講談社

“26歳の誕生日を迎えるまでに四段昇段できない者は退会”という奨励会の規定により、子供の頃から、将棋一筋で生きてきたしょったんの夢は、あっけなく断たれる。

しばらくは将棋と縁を切っていたしょったんだったが、かつて一緒にプロを目指した幼なじみの鈴木悠野(野田洋次郎)をきっかけに将棋を再開する。そして、三段リーグのプレッシャーから解放され、改めて、将棋の面白さや楽しさを感じたしょったんは、再びプロになりたいと思うようになる。一度、やぶれたからこそ、夢が叶う、そんな“奇跡”が始まるのだ。

しょったんは、ひたすら努力を続けたスーパーマンとして描かれていない。プロ棋士になりたいと強く願いながらも、頑張りきれない自分のだらしなさにも気がついてるのだ。そんな人間の弱さが、将棋の楽しさと過酷さを浮き彫りにする。

将棋界で起こっている過酷な争いや心の葛藤が細やかに表現されているのは、豊田監督自身が17歳まで奨励会でプロ棋士を目指していたことが大きく関係しているだろう。将棋界の古い体制、制度の堅苦しさにも注目して欲しい。この映画を観た後は、将棋界への見方が、良くも悪くもガラッと変わるはず。

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