2018/08/29 11:00

現地レポ『カメラを止めるな!』LA上映はいかに?

完売になったチケットカウンターの様子と、映画祭プロデューサーの鈴木智香子氏
撮影=町田雪
【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯14】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

日本で感染拡大中の映画『カメラを止めるな!』が8月18日(土)、米ロサンゼルスで上映され、米国での感染初夜を予感させた。約200人強の満員御礼の会場が大ウケした反響の模様をレポートしたい。

毎年恒例のLAの日本映画祭での上映

今回、一夜限りの上映の舞台となったのは、第13回ロサンゼルス日本映画祭(JFFLA/Japan Film Festival in Los Angeles)。会場は、LAダウンタウンのリトル東京に位置する、全米日系人博物館内にある約200人収容の劇場だ。チケットは完売、小さな劇場入り口前には、上映を待つ人々の列ができた。

第13回ロサンゼルス日本映画祭の会場となった全米日系人博物館
撮影=町田雪

観客層は目視する限り、日本人や日系人観客が7~8割、アメリカ人観客が2~3割ほど。アメリカ人観客も、日本人同伴であったり、日本人の友人に勧められた人が多かったようだ。

LA在住の日本人映像&メディア関係者の姿も目立った。日本での話題が米在住の日本人に伝わり、現地の友人や知人たちへと運ばれる、まさに、感染経路の入り口だったのではないだろうか。

国境を超えた感染の瞬間

観客が着席した午後6時前。映画祭主催者側からの挨拶があり、同作の制作予算が約300万円であることが語られたときには、会場から「おお~っ」とどよめきが起きた。

満席の会場の様子
撮影=町田雪

そして、上映前に流れたウォシュレットのコマーシャルでも一斉に笑いが起き、本編前に会場が一体となるウォーミングアップが完了(ウォシュレットは日本が誇る文化として米国でも評判であり、かつ、TOTOのコマーシャル仕立てがしゃれていたため、観客の高揚感にマッチしたのか)。

いざ、上映が始まると、同作の魅力である伏線から回収まで、徐々に高まる大ウケの波。日本人観客とアメリカ人観客の間で、ウケにズレはほとんどなく、国境の壁は感じられなかった。

アメリカ人観客の反応は…?

上映後、隣に座っていた20代前半のアメリカ人男性2人に話を聞いた。日本人の友人に「日本で話題になっている」「面白いから観るべし」と勧められてきたが、前知識はほとんどなかったという。

『カメラを止めるな!』
(C) ENBUゼミナール

「とても面白かった。なにより、周りの観客と一緒に反応し、みんなで一体となっている感じが楽しかった。『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年の英ミュージカル・ホラー映画)を観たときの感覚を思い出しました」。

こちらも日本人の友人に勧められてきたという女性に感想を聞いたところ、最初に出た言葉は「チャーミング」。「トレーラーを観ただけだったので、ゾゾっとする準備万端で来たのですが、心温まる愉快で愛すべき映画で、ほろりとさせられました」。

「米国の人々にもウケるか?」という問いには、「もちろん、確実に!」との答え。さらに、「おかしな言い方かもしれないけれど、フィルム・メイキングへのラブレターだとも思いました。今日一緒に来られなかったインディペンデント・フィルムメイカーである恋人の彼にも、絶対に観せたい」と、米国での一般公開を切望していた。

世界中に感染拡大する『カメラを止めるな!』

同作は今年4月にイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭でインターナショナル・プレミアされた際、米大手映画業界紙「バラエティ」のリチャード・クイパーズ氏が、「ゾンビ映画に新風を吹き込んだ、驚くほど独創的なホラー・コメディ」と絶賛レビューを発表している。

『カメラを止めるな!』
(C) ENBUゼミナール

そうしたなか、ロサンゼルス映画祭の東京代表である伊木静子氏も同作品の誘致を希望し、上映が決定したという。

「今回、同映画祭でも上映する短編『Oh Lucy!』(2018年)が海外の映画祭で評価を得て、長編映画製作につながったように(平栁敦子監督・脚本/短編は桃井かおり、長編は寺島しのぶ主演)、『カメラを止めるな!』も米国での一般公開はもちろん、リメイク製作など、いろいろな発展があればいいなと願っています」と伊木氏。

世界配給を手がける英拠点のThird Window Filmsの動きにも期待がかかる。

『カメラを止めるな!』は日米の架け橋となるか

ロサンゼルス側では、ハリウッドで美術監督として活躍し、今年から同映画祭のプロデューサーを務める鈴木智香子氏が指揮をとり、ソーシャルメディアをはじめ、自身の業界ネットワークを通じても同作を宣伝。

『カメラを止めるな!』
(C) ENBUゼミナール

「アメリカ人にとっては、ゾンビ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、(その監督・脚本の)エドガー・ライトなどが好きな人々にもアピールできる作品だと思います」。

同映画祭はもともと「チャノマ映画祭」という名称で発足したもの。「これまでは、お茶の間で楽しめる家族映画を主に上映する映画祭でしたが、今回は、アメリカ人が観ても面白い作品、同時に日本文化をアピールできるような作品を集めました。

ハリウッド業界の人々や、普段は日本映画を観ない現地の方々にも作品を観てもらう機会となることで、日本のフィルムメイカーにも希望を与えられるような、日米の懸け橋を目指しています」と鈴木氏。

『カメラを止めるな!』は、その想いを込めた上映作品として、確かな手ごたえを残したのではないだろうか。

*          *

個人的な感想になるが、筆者も『カメラを止めるな!』について、日本の友人たちから続々と絶賛コメントを聞いていた。心の準備ができていたつもりだったが、結果、揺さぶられっぱなしだった。

期待値が上がりすぎて楽しめない、というのは話題作が陥りがちな罠だが、同作にはそんな方程式は通用しない。ユニバーサルに国境を越える日本発の映画として、米国での一般公開を心から願う。

(Avanti Press)

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