2018/09/17 07:00

ラブリー・マッチョ「マ・ドンソク」はなぜ愛される?

(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

昨年公開された『新感染 ファイナル・エクスプレス』で鮮烈な印象を残し、日本でもじわじわと人気が高まっているマ・ドンソク。韓国のトップスターと言えば、タイプは違えどやっぱりイケメンというイメージが強かったが、マ・ドンソクはずばりマッチョ。

だが、ただのムキムキではない。本国では、彼の名前と「ラブリー」を合わせた「マブリー」というニックネームで呼ばれるほど、そのラブリーなチャームが愛されている。

最新主演作『ファイティン!』(10月20日より公開)では、アームレスリングの選手に扮して感動の物語を体現。韓国では今年5月に公開され、動員100万人を記録した。

なぜ大ヒットしたのか。腕周り50センチの迫力、臨場感満点の腕相撲ファイトはもちろん、本作にはマ・ドンソクならではの魅力、オリジナルな愛嬌が充満しているからなのだ。

(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

こう見えて、奥ゆかしいヤツなんです

 マ・ドンソク演じる主人公マークは、幼い頃にアメリカに養子に出された韓国人。だが養父母を早くに亡くし、孤独に生きてきた男だ。かつてはアームレスリング選手として世界レベルの強さを誇っていたが、八百長疑惑をかけられ、いまはクラブの警備係として、その腕力をごくわずかなときだけ発揮していた。

そんなマークが、スポーツ・エージェントを名乗るパク・ジンギの口車に乗せられ、韓国で行われる腕相撲大会のために帰郷することに。ジンギは、マークに実母の住所を教える。そこから、情と活劇が織りなす「マ・ドンソク・ワールド」が繰り広げられていく。

(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

マ・ドンソクは単に腕っぷしが強いだけの俳優ではない。もちろん、文句なしのアクションは見せる。今回のマークは何かトラブルが起きたときだけ、相手を倒すが、アスリートらしい直線的な動きで、極力、手短に事を済ませていく合理性がたまらない。無駄打ちをしない。最低限のパンチで、事態を終結させていくのがマ・ドンソクのスタイルだが、そのありようは『新感染 ファイナル・エクスプレス』とも、今年のGWに日本公開された主演作『犯罪都市』とも異なる。合理的な活劇を見せながらも「いつも同じ」ではなく、その都度キャラクター性をにじませるのが、この俳優のアイデンティティだ。

マークは腰の低い男である。見ず知らずの相手に対して、己の力を誇示することはない。ジンギに対して睨みをきかすのも、彼としかるべきパートナーシップを形成してからだし、マイペースはマイペースだが、その底辺には、出逢う相手にどこか「愛を求めている」ような臆病さが、かすかに漂う。

英語で生活していたので、韓国語は話せるけれどあまり使いこなせず、微妙なニュアンスも汲み取れず、肝心な気持ちを語るときは、つい英語が飛び出す。そんな不器用な設定を、マ・ドンソクはさほど強調することもなく、ごく自然に演じる。抑制を効かせることで、マークのロンリネスがスパイスのように香り立つのである。

(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

つまり、マ・ドンソクの演技には品がある。その鍛え上げられた肉体を目の当たりにすると、グイグイ押して押しまくるような芝居を想像するかもしれないが、そうではなく、実に繊細に役を組み上げている。

マークは、いわゆるシャイなキャラではない。奥ゆかしいのである。そしてその低姿勢は、己の孤独と長く付き合ってきたからなのだということが、じんわり伝わるようにマ・ドンソクは表現している。

男は家族を知り、少年に還っていく

これぞ「マブリー」というシーンがある。

バスでたまたま目があった男の子をあやそうと、変顔をしたり、筋肉をふくらませたりするマークは、勢い余って握っていたつり革をもぎ取ってしまう。それまで笑っていた男の子は、あまりのことに泣き出してしまう。ここに至るまでのマ・ドンソクの表情は、めちゃくちゃ可愛い。

思わず、我を忘れてしまう。普段は他人に腕力を誇示することなど決してない男が、つい見せてしまったパフォーマンス。「あ、やっちゃった」の顔が、これほどしっくりくる俳優もいないのではないか。誰もが、この主人公のことが好きになってしまう瞬間だ。

マークは実母の死を知った後、これまで会ったことのなかった妹らしき女性スジンと彼女のふたりの子供と家族のような生活を始め、新たな気持ちでアームレスリングのチャンピオンを目指していく。

(C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ここで重要なのは、挫折を経験したアスリートの再起ではなく、マークという男が家族の存在を噛みしめることで、ある意味、少年のような面持ちになっていくことである。

これまで傷つくことを恐れてなどいなかったはずのマークが、傷つくということを初めて知り、ほんのちょっぴり意固地になるシーンがある。そのときの、哀しみを噛み殺したいのに噛み殺せず、そのまま背を向けて去っていくマ・ドンソクの風情が素晴らしい。こんな図体の男が、少年としての自分の心をどうすることもできずにいること。その不自由を、彼は絶妙な距離感とバランスでかたちにしている。

人気者には理由がある。愛される存在には根拠がある。マ・ドンソクという役者は見つめれば見つめるほどに「味わい」が増す存在だ。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

今日の運勢

おひつじ座

全体運

気のおけない仲間と過ごすと、いい刺激がありそう。未来を開く...もっと見る >