2018/09/27 11:00

とある嘘をきっかけに狂いだす運命の歯車

(C)2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

球根ひとつの値段が邸宅1軒分の価値になったという17世紀の「チューリップバブル」を背景に、豪商の若き妻と無名の青年画家の禁断の愛をドラマチックに描いた『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(10月6日より公開)。

若き二人を演じるのは『リリーのすべて』(2015年)のアリシア・ヴィキャンデルと、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)のデイン・デハーン。フェルメールの絵画「真珠の耳飾りの少女」を思わせる清楚な衣装に身を包みながら、実に脱ぎっぷりよく、熱い想いを胸に秘めた女性を体現したアリシアと、破滅的な美青年役が見事にハマるデインの肢体に目を奪われる1作だ。

出会いのきっかけは「肖像画」

物語の舞台となるのは、スペインから独立したことで「黄金時代」と呼ばれるほどの好景気に浮かれていた、17世紀のオランダ。そのなかで、絵画とチューリップは2大ブームとなっていた。

フェルメールやレンブラントといった巨匠が輩出された当時、成功者たちは、自分たちの成功を形として残すために肖像画を発注。また、希少価値のあるチューリップの球根が投資の対象となり、酒場の奥の隠し部屋で、夜な夜な巨額の取引が行われていた。

アリシアが扮するのは、修道院で孤児として育った美しい少女ソフィア。親子ほども年の離れた裕福な商人コルネリス・サンツフォールト(クリストフ・ヴァルツ)のもとに嫁いだものの、なかなか後継ぎを授からず焦る日々を過ごしていた。

そんな時、夫妻のもとにやってきたのが、デイン演じる若手画家のヤン・ファン・ロース。コルネリスの依頼で肖像画を描くために派遣されてきたヤンは、ソフィアに一目惚れ。画家とモデルとして時間を共にする中で、ソフィアも徐々にヤンに惹かれていく。 

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絵画の世界に秘められたドラマチックな恋愛とは?

一方、女中のマリアが妊娠したことを知ったソフィアは、後継ぎを待ち望むコルネリスに、自分が妊娠したと信じ込ませる計画を思いつく。そして、ヤンやお抱えの医師をも巻き込み、皆でコルネリスを欺くことに成功する。しかしそこにチューリップの球根の売買による巨額の取引が絡み、それぞれの思惑とは裏腹に運命の歯車が狂っていくのだ。

本作の大きな見どころは、冒頭でも触れた通り、絶世の美男美女であるアリシアとデインが惜しげもなく披露する、情熱的で大胆な逢瀬のシーンだろう。

不倫であることは間違いないのだが、ソフィアが置かれた境遇を考えると、若い二人が惹かれ合うのも無理はないと思わされる説得力がある。もちろん、二人の身勝手な振る舞いのせいで、不幸になる人が次々現れてしまうのだが……。

本作では、そんな愛と欲望と情熱によって自制心を失ってしまう、人間の業や弱さも浮き彫りにしている。皮肉にも、当時一番高値で取引された「ブレイカー(色割れ)」というチューリップの品種も、実はウイルスに起因する突然変異から生まれたものなのだとか。危うい魅力に、強烈に惹かれてしまう人間の愚かさを象徴しているかのようなエピソードであるとも言えるだろう。

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フェルメールの絵画のような世界に生き、花と愛に狂った人々の姿を、美しい映像で綴った『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』。アリシアやデハーンが放つ瑞々しいエネルギーもさることながら、コルネリスを演じたクリストフ・ヴァルツや、修道院の院長を演じたジュディ・デンチらベテランのオスカー俳優たちによる、人生の酸いも甘いも噛み分けたかのような名演も見逃せない。

(文/渡邊玲子@アドバンスワークス)

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