2018/09/26 11:00

小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子らが凹んだ時に食べるものは? 『食べる女』大会やってみた!【映画の料理Vol.39】

準備万端、食べる女大会!

文=金田裕美子/Avanti Press

前回、本コラムでとりあげた『オーシャンズ8』は、英米豪の豪華女優陣8人が集結し、颯爽と宝石泥棒ドリームチームを演じた痛快エンタテインメント作品でしたが、今回の『食べる女』(全国公開中)は、日本の豪華女優陣8人が集結、等身大の女性たちの日常や悩み、恋、そして食を描くドラマです。

タイトル通り、物語をつらぬく大きなテーマは「食」。最初から最後まで、美味しそうな料理が次々と登場します。その数なんと50品以上。映画を観終わったあとは、「あー、あれ食べたい」とお腹が空くこと必至です。今回はそのメニューの中から特に気になったものをいくつか作ってみたいと思います。

8人の「おいしい」女たち

『食べる女』に登場する女性たちの中心的存在は、都内の古い一軒家、通称“モチの家”で古本屋を営む雑文筆家の敦子(小泉今日子)。おいしいもの好き、料理好き、そして世話好きの彼女のもとには、年齢も職業もバラバラな悩める女子たちが夜な夜な集まってきます。

敦子の幼なじみで料理屋を営む美冬(鈴木京香)、敦子の担当編集者でマンションを購入したばかりの圭子(沢尻エリカ)、優しい彼を物足りなく感じている制作会社アシスタントプロデューサーの多実子(前田敦子)、料理ができず夫に出て行かれてしまったマチルダ(シャーロット・ケイト・フォックス)、別の女性と暮らす元夫を諦めきれない2児の母で耳モデルのツヤコ(壇蜜)、“お手軽な女”から卒業したいと思っている古着屋店員のあかり(広瀬アリス)、元夫の経営するバーで働き続ける珠美(山田優)。

『食べる女』公開中 (C)2018「食べる女」倶楽部

みんなが仕事帰りにぱっと寄れるくらいの都会に、古いとはいえこんな素敵な日本家屋を持っているなんて、なんという贅沢。そしてその家で、おいしいご飯やお酒をふるまわれている敦子の友人たちが心底うらやましい。「私もまぜてー」と言いたくなってしまいます。

とはいえそこに入れてもらうのはどう考えても難しそうなので(架空だし)、映画に出てくる料理を自分で作ってテーブルに並べてみたいと思います。名づけて“セルフ『食べる女』大会”。なんだか響きが寂しい気もしますが、劇中とにかくたくさんの種類の料理が登場するので、まずはメニュー選びから始めます。

テーブルいっぱいにこだわり料理を

原作者であり本作の脚本・製作を担当している筒井ともみさんは、『失楽園』(1997年)や『阿修羅のごとく』(2003年)などの映画脚本や、エッセイ『舌の記憶』(2007年刊、新潮文庫)からもわかるように、とても食へのこだわりの強い方。まわりに多くの人が集まって一緒にご飯を食べている敦子は、筒井さんの分身のような存在なのかもしれません。

その敦子の料理は豪華食材を使ったよそ行きのものではなく、日常的な素材にちょっとひと工夫を加えたものが多いようです。まずは敦子の食卓から、特に印象的だった「トマトと卵の炒め物」と「手羽先の岩塩焼き」をリストアップ。

敦子の食卓の様子
『食べる女』公開中 (C)2018「食べる女」倶楽部

美冬が切り盛りする「ごはんや 道草」のカウンターには、大皿にさまざまな料理が並んでいます。こちらも家庭的なお惣菜がメイン。その中から美冬が一番こだわっていそうな「肉じゃが」と、「なすの焼き浸し」を。

「ごはんや 道草」で下ごしらえをする美冬とマチルダ
『食べる女』公開中 (C)2018「食べる女」倶楽部

圭子が偶然出会う冴えないサラリーマン、タナベ(ユースケ・サンタマリア)は、実は大の料理好き。タナベは出張料理を願い出て、圭子の家のキッチンで「太刀魚のムニエル」を作ってくれます。これがとってもおいしそうだったので、これもやってみましょう。

タナベの持つ袋から顔をのぞかせる太刀魚
『食べる女』公開中 (C)2018「食べる女」倶楽部

その1 牛バラの肉じゃが

では、最初はいちばん時間がかかりそうな肉じゃがから。使うのは豚肉ではなく「大きめに切った牛のバラ肉」、「牛バラの肉汁が残ったフライパンでしらたきも炒める」という、原作にも出てくる美冬のこだわりをしっかり踏襲したいと思います。

玉ねぎはくし切り、にんじんは乱切りに。じゃがいもは小さめだったのでまるごと使いました。鍋に油を入れ、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを加えて炒め、出汁をひたひたに注ぎます。牛バラ肉は大きめに切ってフライパンで炒め、取り出します。

しらたきを下茹でして食べやすい長さに切り、先ほどのフライパンで炒めます(脂が多すぎるようならペーパータオルなどで拭き取ってください)。こうするとしらたきが「水っぽくならずに旨味を充分に吸ってくれる」んだとか。これと牛肉をじゃがいもの鍋に入れ、砂糖、みりん、酒、しょうゆを加えて煮込みます。

しらたきを炒めてから入れるのがミソ

牛肉が柔らかくなるまでに少々時間がかかりますが、今回はじゃがいもをまるごと使っているので煮崩れしにくい。牛肉が柔らかくなったら最後にさやえんどうを飾って出来上がり。

その2 なすの焼き浸し

なすの焼き浸しは、なすのヘタの根元にぐるりと浅く包丁で切れ目を入れ、まるごと魚焼きグリルで焼きます。全体に焦げ目がついて柔らかくなったら取り出して、皮をむきます。すぐやるとあっついので、少し冷ましてからむくほうが無難。皮をむいたなすを、出汁、みりん、塩、しょうゆを合わせた漬け汁に漬け、冷蔵庫に入れて味を含ませます。

皮をむく時は熱いので気をつけて

お皿に盛って、鰹節をかけます。

その3 トマトと卵の炒め物

トマトと卵の炒め物は、白きくらげが入るところが筒井さんのこだわりなんだそう。白きくらげは食物繊維やミネラル、ビタミンDが豊富で、薬膳にも使われる食材。美肌効果もあるんだとか。黒きくらげと違ってスーパーなどではあまり見かけないので、中華食材屋さんでゲットしてきました。これを水に浸けて戻します。薄いので15分程度でOK。トマトはくし切りに。

上は白きくらげを戻す前と戻したあと。白くてきれい

フライパンにごま油を入れ、溶き卵をザーッ。半熟くらいになったら一旦取り出します。同じフライパンに白きくらげとトマトを入れて強火で炒め、少量の鶏ガラスープ、塩、こしょうを加え、先ほどの卵を戻し入れてさっと炒めれば出来上がり。簡単ですぐできちゃいます。

その4 手羽先の岩塩焼き

手羽先の岩塩焼きは、手羽先に岩塩をふり、敦子がやっていたように「おいしくなーれ」と言いながら手で塩をなじませます。これを魚焼きグリルに並べ、裏表をこんがり焼くだけ。

おいしくなーれ

トマトと卵炒めに増して簡単です。

その5 太刀魚のムニエル

お次はタナベ特製メニュー。太刀魚の切り身に塩、こしょうをふり、全体に小麦粉をまぶします。フライパンにサラダ油とバターを入れて溶かし、太刀魚を入れて両面をきれいな焼き色がつくまで焼きます。

小麦粉をつけてバターで焼くだけ

お皿に取り出してレモンを添えれば完成。タナベはさらに「旬の山ウドとクレソン、ラディッシュの和風サラダ」と、「さっとあぶった油揚げ」も作ってくれます。サラダを真似しようと思ったのですが、あいにく今は山ウドの季節ではないので、本来は主役なのであろう山ウド抜きでクレソンとラディッシュのサラダを作りました。タナベのこだわり通り、しょうゆベースの和風ドレッシングには山椒の粉でアクセントをつけます。油揚げはさっとあぶってしょうが醤油と。

日本酒で乾杯!

これで「セルフ食べる女たち大会」メニューの完成です! ひとつひとつそんなに手間がかかっているわけではありませんが、並べると結構壮観。映画の実際のレシピとは違うと思いますが、見た感じはそんなに遠くないのでは。日本酒も用意して、さあ乾杯!(映画では敦子たちがひょうたん模様の赤いラベルがかわいい福島のお酒、國権を飲んでました)

牛バラを使った肉じゃがは、こってりとして骨太な感じ。中華風のトマトと卵炒めは、白きくらげがコリコリして食感が楽しい。山椒の粉入りドレッシングは、ちょっと新鮮な刺激。どの料理もさりげなく、でも飽きのこなそうなお味でした。

食べる女大会!

そして重要なシメは、卵かけご飯。みんなでわいわい食べていた8人の女性たちは、卵かけご飯だけはそれぞれひとりで食べています。このシーンで「あれ?」と思ったのは、お茶碗ご飯の上に直接卵を割り入れていたこと。それだと混ぜにくいので、私はいつも別の器に卵を溶き、しょうゆを入れてからご飯にかけていたのですが……。

向田邦子さんのエッセイにも卵かけご飯の話が出てきて、「子供は2人に1個で、母が溶いてしょうゆを入れた卵を私と弟のご飯に分けてくれるのだが、最初に入れてもらう長女の私の方には白身がジュルンと入って嫌だった」というようなことが書かれていたので、溶いてからかける方がメジャーなのかと思っていました。

お月様のような TKG

卵かけご飯は「TKG」という略語まで生まれ、専用のしょうゆが発売されるくらい人々に愛されているメニュー。卵のかけ方にもそれぞれこだわりがあるのかと思い、ちょっと周囲にアンケートをとってみたところ、「そのままかける」派が結構多いことが判明しました。

直接かける理由をきいてみると、「洗い物を増やしたくないから」。ガクッ。味へのこだわりじゃないのか。それゆえ直接派の人々も、生卵が器に入って出てくる旅館の朝食では、溶いてからご飯かけるのだとか。なるほど。あの食べ方には、彼女たちの生活感があふれていたわけですね。

卵かけご飯を食べる敦子
『食べる女』公開中 (C)2018「食べる女」倶楽部

家に何人も友人が遊びに来るとなると、ちょっと張り切ったメニューを作ろうとしてしまいがちですが、敦子のように日常的で簡単なメニューで気の置けない仲間とわいわい、というのはとてもいいなと思いました。映画には今回作ったもののほかにも、ワンタンスープや春雨と牛挽肉の中華風煮込み、アイナメのしゃぶしゃぶなど、おいしそうな料理がたくさん出てきます。また別のメニューで何度でも「セルフ食べる女大会」ができちゃいます。映画を観てやってみようと思った方、ぜひ私も誘ってくださいー。

【材料】
《肉じゃが》
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、牛バラ肉、しらたき、さやえんどう、サラダ油、出汁、砂糖、酒、しょうゆ、みりん
《なすの焼き浸し》
なす、しょうゆ、鰹節
《トマトと卵炒め》
トマト、卵、白きくらげ、ごま油、鶏ガラスープ、塩、こしょう
《手羽先岩塩焼き》
手羽先、岩塩
《太刀魚のムニエル》
太刀魚切り身、小麦粉、塩、こしょう、サラダ油、バター、レモン
《山ウドとクレソン、ラディッシュのサラダ、山ウド抜き》
クレソン、ラディッシュ、しょうゆ、砂糖、酢、出汁、サラダ油、山椒の粉
《炙った油揚げ》
油揚げ、しょうゆ、しょうが、鰹節
《卵かけご飯》
卵、ご飯、しょうゆ
【映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具】
ちゃぶ台、こたつ、古い一軒家、猫、羽織、古本、おしながき

今日の運勢

おひつじ座

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何かとガマンすることの多い日。ストレスがたまりそうだけれど...もっと見る >