2019/01/03 11:00

第91回アカデミー賞大予想!ヒット作と通好みのニッチ作が共存!?

Rick Meyer/GettyImages
【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯20】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

映画の祭典、第91回アカデミー賞に向けた賞レースの季節がやってきた。2018年のキーワードのひとつに「人気映画&オスカー好み映画の共存」がある。もちろん、その両方の要素を含む作品もあり、厳密に分けられるものではないのだが、今回は、オスカー主催者側がこの両者の乖離を埋めるのに試行錯誤していること、賞レースのなかでも投票者の立場(批評家か、映画人か、一般ファンか?)によって、作品選びに例年以上の差が出ているため、あえて、この切り口で有力作を紹介してみたい。

みんなが大好きな“人気映画”を代表する顔ぶれは?

“人気映画”をおおまかに定義づけすると、「ヒーローものやファミリー向け、ホラー、コメディなどのジャンルで、批評家の評価にかかわらず、興行収入を稼いだヒット映画」となる。

この種の映画は知名度抜群にもかかわらず、近年、オスカーにノミネートされない傾向にあり、アカデミー賞自体のインパクトや授賞式の視聴率低下の原因にもなっている。それに危機感を抱いたアカデミー協会が昨夏、「人気映画賞」という部門を新設することを発表したものの、映画業界からの猛反発を受けて撤回するというドタバタ劇もあった。

とはいえ、昨年のオスカーには、いわゆる“人気映画”のノミネートが相次ぎそうだ。その代表6本がコチラ。

『ブラックパンサー』

『ブラックパンサー』© 2018 MARVEL

『ブラックパンサー 4K UHD MovieNEX』/7,800円+税
『ブラックパンサー 4K UHD MovieNEX プレミアム BOX(数量限定)』/14,000円+税
デジタル配信中
© 2018 MARVEL
marvel-japan.jp/blackpanther

まずは、昨年の米映画界の顔ともいえるスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』。米国内で興収7億ドル、全世界で13億ドルという驚異的な数字のインパクトはもちろん、アフリカ系アメリカ人主導の作品がメジャー級ヒットを出せることを証明した功績は計り知れない。

『クレイジー・リッチ!』

『クレイジー・リッチ!』公開中
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT

2018年後半になって、同じくサプライズをもたらしたのが、ロマコメ映画『クレイジー・リッチ!』。25年ぶりのオール・アジアン・キャストによるスタジオ映画として、米映画界におけるアジア系コンテンツや才能の存在感を高めただけでなく、ロマコメ・ジャンルとしては過去10年で最高の米国興収を稼ぐ偉業を残した。

『ブラックパンサー』のオスカー候補入りはかなり有力。『クレイジー・リッチ!』はオスカーには届かない可能性が高いものの、ゴールデングローブ賞や米俳優組合賞へのノミネートを獲得しており、賞レース全体に確固たる足跡を残すはずだ。

『ボヘミアン・ラプソディ』

『ボヘミアン・ラプソディ』公開中
(C)2018 Twentieth Century Fox

批評家には酷評されたものの、一般ファンに愛されたのが音楽伝記ドラマ『ボヘミアン・ラプソディ』。世界的な人気ロックバンド「クイーン」のリード・シンガー、フレディ・マーキュリーの人生、バンドの音楽と成り立ちを描いた作品だ。

フレディ自身のセクシュアリティへの葛藤やエイズの認識など、社会派メッセージを込めながら、数々の名曲や歴史に残るパフォーマンスを再現した感動的なエンタテインメント。オスカーでは、フレディを演じたラミ・マレックの主演男優賞候補入りはほぼ確実、作品賞へのノミネートも有力視されている。

『アリー/スター誕生』

『アリー/スター誕生』公開中
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

こちらも音楽系の恋愛ドラマ映画として、オスカーを席けんしそうなのが『アリー/スター誕生』。

幼い頃から女優を夢見て、逆境をバネにスターダムに駆け上がった自身を投影したかのようなレディー・ガガの演技と圧巻の音楽パフォーマンス、俳優出身監督として、クリント・イーストウッドの後を継ぐ実力を見せつけた監督・主演のブラッドリー・クーパーの采配など、オスカー要素は十分。

それぞれの主演女優・男優賞のほか、クーパー扮するジャクソンの兄役を演じたサム・エリオットの助演男優賞ノミネートも有力視されている。クーパーには、監督賞とのダブル・ノミネートの可能性も。

『クワイエット・プレイス』

『クワイエット・プレイス』公開中
(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

人気カテゴリーの残り2本は、ともに、女優エミリー・ブラントの出演作品。

夫で俳優のジョン・クラシンスキーがメガホンをとり、2人で夫婦役を演じたホラー映画『クワイエット・プレイス』は、製作費1,700万ドルながら、強力なバズによって3億ドル超えの興収を稼いだ、昨年の“口コミ大賞”。

ホラーというオスカーからは敬遠されがちなジャンルながら、「音を立てたら即死」の極限状態をとおして、家族の在り方をあぶりだしたドラマとして、一般観客&批評家双方の支持を受けた。

『メリー・ポピンズ リターンズ』

『メリー・ポピンズ リターンズ』2019年2月1日(金)全国ロードショー
(C)2018 Disney Enterprises Inc.

一方、ブラント主演で54年前の名作をリメイクしたファンタジー映画『メリー・ポピンズ リターンズ』は、ディズニーによるメジャー映画ながら、業界向けの試写会でもスタンディング・オベーションが鳴りやまないほどの高評価。混沌としたこの時代に、明るさをもたらす貴重な“フィール・グッド・ムービー”として、特に、技術部門における複数のオスカー・ノミネートが有力視されている。

ちなみにブラントは、オスカーの前哨戦ともいわれる米俳優組合賞で、主演女優賞(『メリー・ポピンズ リターンズ』)、助演女優賞(『クワイエット・プレイス』)にダブル・ノミネートされている。

社会派メッセージの強い“オスカー好み”な顔ぶれは?

次に、“オスカー好み映画”の顔ぶれを見てみたい。

同カテゴリーのおおまかな定義は、「社会派メッセージが強いドラマで、批評家たちの評価が高く、映画祭でのバズを得ながら限られた劇場で公開される映画」である(例外もあるので、あくまでも“おおまかな”定義)。一般観客への知名度は高くないものの、オスカーのスポットライトがあたることにより、さもなければ埋もれていた作品や才能を世に送り出す、大切なカテゴリーでもある。

『ブラック・クランズマン』

『ブラック・クランズマン』2019年3月22日より公開
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

まずは、黒人警官が白人警官のふりをして、クー・クラックス・クラン(KKK)の構成員となり、潜入捜査を行うという犯罪ドラマ『ブラック・クランズマン』。

黒人警官役のジョン・デヴィッド・ワシントン(デンゼル・ワシントンの息子)と白人警官役のアダム・ドライバーのかけ合いが絶妙で、繊細なトピックスながらコメディ要素も満載。それでも最後にはスパイク・リー監督らしく、米社会の人種・階級差別について、実際のフッテージを交えながら問題を突きつける。リーの監督賞、ワシントンの主演男優賞、ドライバーの助演男優賞ノミネートが期待されている。

『グリーンブック』

『グリーンブック』2019年3月1日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

同じく人種ミックスの主演コンビによるドラマ(ときどきコメディ)映画として絶賛されているのが、天才黒人ピアニストと、粗野な白人用心棒との絆を描いた『グリーンブック』。

「グリーンブック」とは、「アフリカ系アメリカ人用のガイドブック」の意味で、あえて差別の濃い南部へのコンサート・ツアーへ繰り出す2人の型破りな旅と奇跡が感動的だ。社会派テーマが盛り込まれていながら、『メリー・ポピンズ リターンズ』と並ぶ“フィール・グッド・ムービー”2トップに位置づけられている。

作品賞のほか、用心棒役のヴィゴ・モーテンセンの主演男優賞、ピアニスト役のマハーシャラ・アリの助演男優賞ノミネートが有力。

『ROMA/ローマ』

Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』独占配信中
https://www.netflix.com/title/80240715

同じく人種や階級社会を扱ったドラマとして、批評家たちから絶賛されているのが、政治的・社会的混乱に揺れる1970年代のメキシコを舞台に、中流家庭とその家政婦の姿を描いたモノクロのドラマ映画『ROMA/ローマ』。

2014年に『ゼロ・グラビティ』で監督賞を受賞し、ギレルモ・デルトロ、アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥと並ぶメキシコ出身監督として、オスカーの寵愛を受けるアルフォンソ・キュアロン監督が、自身の体験を投影した情熱作。

作品賞、監督賞を含むノミネートが有力視されるなか、外国語映画として、さらにはNetflix映画として、初のオスカー受賞なるか? に注目だ。

『ファースト・マン』

『ファースト・マン』2019年2月8日より全国公開
(C)Universal Pictures

2年前のオスカーにおける“作品賞発表まちがい事件”の当事者である若手監督2人の新作も、2018年の有力作。

『ラ・ラ・ランド』で監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督が、同作のライアン・ゴスリングと再タッグを組んだ『ファースト・マン』は、史上初めて月面を歩いた宇宙飛行士ニール・アームストロングとNASAのミッションを描いたSF伝記ドラマだ。米興収は振るわなかったものの、批評家の評価は高い。

『ビール・ストリートの恋人たち』

『ビール・ストリートの恋人たち』2019年2月22日より公開
(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

一方、同年の作品賞に輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督による『ビール・ストリートの恋人たち』は、1970年代のニューヨークのハーレムを舞台に、若い男女の愛と信念を描いたドラマ映画。

身に覚えのない罪で逮捕されたフィアンセの罪を晴らそうと奔走するヒロインの母役、レジーナ・キングの助演女優賞、叙情的な映像を実現した技術部門のノミネートが囁かれている。

『バイス』

『バイス』2019年4月公開予定
(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

さらに、ゴールデングローブ賞で最多6部門にノミネートされた注目作が、元アメリカ副大統領ディック・チェイニーの激動の人生を描いた伝記ドラマ『バイス』。

ブラッド・ピット製作、アダム・マッケイ監督という『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)チームによる作品力に加え、チェイニー役のクリスチャン・ベールが、約20キロの増量で挑んだ役作りで主演男優賞の有力候補に。

前回のオスカー助演男優賞覇者サム・ロックウェルがブッシュ元大統領役、オスカー常連のエイミー・アダムスがチェイニーの妻役を演じ、そろってオスカー・ノミネートの有力候補となっている。

『女王陛下のお気に入り』

『女王陛下のお気に入り』2019年2月15日より公開
(C)2018 Twentieth Century Fox

最後は、18世紀のイギリスを舞台に、女王と彼女を取り巻く人々の愛と欲望を描いた宮廷コメディ・ドラマ『女王陛下のお気に入り』。

賞レース前半の目玉のひとつである放送映画批評家協会賞では、最多14ノミネートを獲得。主演のオリヴィア・コールマン、助演のエマ・ストーン、レイチェル・ワイズという実力派女優たちが、各アワードの俳優賞で存在感を発揮しており、オスカー・ノミネートを視野に入れている。

日本関連作品はもちろんこちら!

日本関連の作品では、『万引き家族』が外国語映画賞候補のトップ9入りを果たし、最高のライバル『ROMA/ローマ』と肩を並べている。

『万引き家族』(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

長編アニメーション部門では、 『未来のミライ』とウ ェス・アンダーソン監督が日本愛をたっぷり込めた『犬ヶ島』のノミネーションに期待したい。

『未来のミライ』(C)2018 スタジオ地図

『犬ヶ島』(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

第91回アカデミー賞ノミネート発表は、米時間の1月22日(火)、授賞式は2月24日(日)に開催される。



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