2018/12/29 11:00

薬師丸に原田知世!映画史を塗り替えた80年代アイドルたち

(C)KADOKAWA 1983

文=中森明夫

2015年、ももいろクローバーZ主演の『幕が上がる』(優れた映画だ)が公開された時、同作品の脚本家が「アイドル映画だと思っていません」と発言した。疑問を持った私は、以下のようなツイートをした。

〈アイドル映画という概念は確立されてないし、誰もポジティブに語らない。「これはアイドル映画じゃない」と否定される時にそう呼ばれるだけで。「サブカル」に近い。まだ確立されてない概念を擁護し、否定されるサイドに立って、ポジティブな価値を語るのが批評家の仕事だと思っています〉

単純に言えば、アイドル映画とは①アイドルが主演する映画、②アイドルをテーマとした映画――とも捉えられよう。実は①がほとんどで、②は稀だ(この件は後出する)。

1980年代はアイドル映画史にとって画期となった。70年代を代表するアイドル映画女優・山口百恵が引退したのだ。百恵の最後の映画『古都』は1980年12月に公開されている。奇しくも同年7月の『翔んだカップル』によって薬師丸ひろ子が映画初主演を果たした(デビューは1978年10月『野性の証明」)。

つまり、山口百恵から薬師丸ひろ子へ! 女王位継承によって80年代アイドル映画シーンの幕が上がった。百恵は『スター誕生!』出身のアイドル歌手が映画にも出たにすぎない。だが、薬師丸ひろ子は映画によってアイドルとなった。ここに80年代初頭の価値変革がある。変革の主は? …角川映画だ。

アンバランスでフリーキーなアイドル女優の時代

(C)KADOKAWA 1983
角川三人娘の末っ娘、原田知世(15歳)の衝撃的な映画デビュー作

翌1981年、7月『ねらわれた学園』、12月『セーラー服と機関銃』と、薬師丸は2本の角川映画に主演している。前者は大林宣彦、後者は相米慎二の監督作で、大林『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』、相米『翔んだカップル』『台風クラブ』『雪の断章 情熱』と、80年代の傑作群によってアイドル映画の二大巨匠ともなった。ことに『セーラー服と機関銃』は1981年の興行ベストワンの大ヒット……にもかかわらず、映画史に残るこの大傑作を批評家&読者ともベストテンにも選出しなかった『キネマ旬報』なる雑誌は、なんとアイドル映画に無理解なことか!

薬師丸に続いて、1983年7月に大林監督作『時をかける少女』で原田知世は人気アイドル女優となる。『時かけ』はその後、ドラマ、アニメ、続篇と様々にリメイクされた。が、筒井康隆の原作を離れ、主役がおおむね短髪少女なのは、1983年版『時かけ』効果なのだろう(原田知世は、“時”と共にヒロインの“髪の毛”も切断した!)。

薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子は角川三人娘と呼ばれた。ルックス的にもっともバランスのよい美人の渡辺典子は、なぜ人気が出なかったのか? 彼女がアイドルではなく、単に女優だったからだ。時代が悪かった。渡辺典子は今日(こんにち)なら乃木坂46にでも所属していたら、相応の人気を得たと思う。薬師丸ひろ子や原田知世のような、80年代はアンバランスでフリーキーなアイドル女優の時代だった。

80年代アイドル映画の傑作

80年代アイドル映画の巨匠監督として、今一人、澤井信一郎を挙げたい。松田聖子(『野菊の墓』)と後藤久美子(『ラブ・ストーリーを君に』)を女優デビューさせ、薬師丸ひろ子(『Wの悲劇』)と原田知世(『早春物語』)を女優開眼させた。2002年にはモーニング娘。の『仔犬ダンの物語』も撮っている。女子アイドルをもっとも美しく撮るこの巨匠監督に、現在、AKBグループや坂道系(乃木坂46、欅坂46)のMVを撮らせていないのは、ある種の犯罪行為のようにも思える。

最後に挙げたい一本がある。『CHECKERS IN TANTAN たぬき』(1985年)だ。チェッカーズが自分たちは実はタヌキだと告白して、アイドルの虚構性をネタバラシする。これぞ①アイドルが主演して、②アイドルをテーマとする、80年代アイドル映画の傑作だ! 原案は秋山道男。1969年、若松孝二監督『ゆけゆけ二度目の処女』の主役オバケである。80年代、チェッカーズや小泉今日子をクリエイトし、今年9月に死去した。享年69。秋山の最後の仕事は映画『止められるか、俺たちを』の主演女優に会って、歌唱指導したことという。それは平成生まれのアイドル女優・門脇麦だった。(本稿を故・秋山道男氏に捧げる)

 

この記事は『キネマ旬報』1月上旬特別号に掲載。今号では1919年の創刊以来今年で100年を迎える『キネマ旬報』が「1980年代ベスト・テン 日本映画篇」を発表。誰もが知るあの名作もランクイン!? 評論家・ライターの作品解説とともに掲載している。(敬称略)

制作:キネマ旬報社

 

『時をかける少女 角川映画 THE BEST』
■発売・販売:KADOKAWA
(C)KADOKAWA 1983

今日の運勢

おひつじ座

全体運

積極的に人の輪に飛び込もう。ぶつかることがあっても、反省の...もっと見る >