2019/01/11 06:30

原作第4部を続編にした『ドラゴン・タトゥーの女』シリーズのクールな妙味

『蜘蛛の巣を払う女』2019年1月11日(金)全国ロードショー/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

スウェーデン発の大人気サスペンス小説“ミレニアム”シリーズ、その第1作をハリウッドで映画化した『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)からおよそ7年、待望のシリーズ第2作『蜘蛛の巣を払う女』が完成した。

しかし映画ファンも原作ファンも、この映画化は少々意外な結果だったように思える。

なぜなら……といったことを、しばし検証していきたい。

スウェーデン発の“ミレニアム”シリーズとその映画化作品

そもそも“ミレニアム”シリーズはスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによるミステリー・サスペンス小説で、2005年に第1作『ドラゴン・タトゥーの女』が、続けて第2作『火と戯れる女』、第3作『眠れる女と教卓の騎士』が発表された。

主要人物は、雑誌“ミレニアム”の発行責任者兼共同経営者のミカエル・ブルムクヴィスト。若き日はジャーナリストとして脚光を浴びていたが、財界汚職事件の告発記事が仇となり、名誉棄損で訴えられて敗訴となり、意気消沈。そんな彼が大財閥の元会長から、40年前に親族の娘ハリエットが失踪した事件の真相を依頼されたことを機に、天才的資料収集能力を持つリスベット・サランデルと知り合う。

拒食症患者のようにガリガリで顔色が悪く、左の肩から背中にかけて龍の刺青(ドラゴン・タトゥー)を、鼻にはピアスを施した短髪の女リスベット。ハッカーとしても天才的だが、過去のトラウマからか、敵とみなした者、特に女を虐待する者に対しては情け容赦ない攻撃的側面も備えている……。

このように、ミカエルとリスベットのコンビが奇々怪々なるさまざまな事件に遭遇していくのが“ミレニアム”シリーズである。

本国ではシリーズ累計290万部を越えるベストセラーとなり、その後世界30か国以上で翻訳され、2015年までに全世界で8000万部以上を計上。しかし当のラーソンは第1部が発売される前の2004年に死去しており、その後の栄光を知る由もなかった。

さて、“ミレニアム”シリーズはスウェーデン本国で2009年に3部作が立て続けに映画化された。ミカエルにはスウェーデン映画界の盟友ミカエル・ニクヴィスト。リスベットに扮したノオミ・ラパスは、これをステップにハリウッド進出を果たしている。

そして2011年、デヴィッド・フィンチャー監督、ダニエル・クレイグのミカエル、ルーニー・マーラのリスベットによるアメリカ映画『ドラゴン・タトゥーの女』が発表された。

原作第4部を第2弾に選んだハリウッド版“ミレニアム”シリーズの英断

ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』の大成功により、多くの原作&映画ファンはスウェーデン本国版のようにダニエルクレイグ&ルーニー・マーラ主演の映画シリーズが続けて制作されるものと踏んでいたのではないか。

しかし、現実はなかなか上手く転がってはいかなかったようだ。

しかも、そうしているうちに2015年、何と故スティーグ・ラーソンによる3部作のエッセンスを踏襲した“ミレニアム”シリーズの最新第4作として、『蜘蛛の巣を払う女』がダヴィド・ラーゲルクランツによって執筆されたのである。

そして2018年、これを原作とするハリウッド版“ミレニアム”映画シリーズ第2弾『蜘蛛の巣を払う女』が完成した。

蜘蛛の巣を払う女 サブ2

デヴィッド・フィンチャーは製作総指揮に回り、リメイク版『死霊のはらわた』(2013年)、『ドント・ブリーズ』(2016年)でホラー映画の新たな旗手として躍り出たフェデ・アルバレスが監督。

キャストも一新され、ミカエルには『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2017年)でテニスの絶対王者ビヨン・ボルグを演じたスヴェリル・グドナソン。リスベットにはNetflix『ザ・クラウン』シリーズ(2016年~)でエリザベス2世を演じて注目され、多数の賞を受賞したクレア・フォイが抜擢された。

ハリウッド版第1作から月日が経っての第2弾ゆえ、キャストの変更は予想できるところではあったが、オリジナル3部作を通り越しての別作者による第4部を第2弾に選ぶという製作サイドの決断には、当初驚かされたというのが偽らざるところ。

しかし、いざ作品に接するとハリウッド版“ミレニアム”映画シリーズの今後の方向性が如実に理解できる仕組みになっていて、それはそれで興味深くも面白い。

蜘蛛の巣を払う女 サブ3

まず今回は完全にリスベットを主役に据え、彼女の悲痛な過去を主軸とする骨肉の争いのドラマが構成されている。彼女が関わる事件も、世界中の防衛システムにアクセス可能なソフトウエアをめぐる国際スケールのもの。

ハードなアクション・シーンも満載で、あたかも女版007といった展開ではあるのだが、決してワンダーウーマン的もしくは肉感的お色気マッチョなテイストに陥ることはない。

それにはやはりリスベットという孤独で悲しみを帯びたクールな趣のヒロイン像をベースにした演出が巧みに施されているからだ。
(またこれによって、ホラー畑のフェデ・アルバレスが監督に起用されたことも理解できる)

蜘蛛の巣を払う女 サブ4

何よりもクレア・フォイのリスベットが、ノオミ・ラパスともルーニー・マーラとも異なる個性を発揮しながら、北欧の凍れる寒さに適応した新たなバトル・ヒロイン像を体現しているところが素晴らしい。

ダヴィド・ラーゲルクランツによる新“ミレニアム”シリーズはこれからも執筆が予定されていると聞くが、そうなるとハリウッド版“ミレニアム”シリーズもそれに即した形で新作が作られ続けていくのかもしれない。

そのときはぜひクレア・フォイのリスベットを継続させた形で展開させてもらいたいものと、『蜘蛛の巣を払う女』を見終えてすぐに待望してしまった次第である。

(文・増當竜也)



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