2019/01/19 07:00

安易リメイク大反対!ルカ・グァダニーノ監督が熱弁『サスペリア』愛

『サスペリア』2019年1月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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日本公開時には「決してひとりでは見ないでください」というインパクト大のキャッチコピーも相まって熱狂的ファンを生んだ、イタリアンホラー映画の古典的名作『サスペリア』(1977年)がついにリメイクされた。メガホンをとったのは、ボーイズラブ映画『君の名前で僕を呼んで』でオスカー・ノミネートを受けたルカ・グァダニーノ監督だ。

サスペリア ルカ・グァダニーノ監督

ルカ・グァダニーノ監督

10代の段階で『サスペリア』リメイク計画

美少女被虐ホラーの巨匠ダリオ・アルジェント監督の代表作である『サスペリア』のリメイク企画には、数年前からミミ・レーダー監督やデヴィッド・ゴードン・グリーン監督など多くの監督の名前が挙がっていたが、実現せず。満を持して登場したのが、2008年に自らリメイク権を獲得したルカ監督だった。『ミラノ、愛に生きる』、『胸騒ぎのシチリア』、そして『君の名前で僕を呼んで』とジャンルとしては“ドラマ”を手掛けてきた中での『サスペリア』リメイク。ホラー映画ファンはかなり驚いた。

しかしルカ監督の『サスペリア』愛は凄まじい。10歳の時にイタリアの映画館でオリジナル版のポスターを目撃して一目惚れ。13歳で本編を初めて鑑賞し、虜になった。ルカ監督曰く「僕の『サスペリア』に対する愛は、愛する対象を食べて自分の血肉にしようとするカニバリズム的愛」。10代の段階で『サスペリア』リメイク計画を立てるようになったという。

以降アルジェント監督に対しても妄執的愛を持った。「彼を生で見たのは14歳か15歳の頃。レストランで食事している場面に偶然出くわした。私はレストランの窓の外からアルジェント監督の姿をずっと眺めていたよ」と苦笑い。その後、アルジェント監督にインタビューする機会を得て友人関係を結び、ついに『サスペリア』リメイクという少年時代の夢を叶えるに至る。

サスペリア リメイク

『サスペリア』(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

安易コピー・リメイクに対して批判的

オリジナル版は、ニューヨークからドイツにやってきたスージー(ジェシカ・ハーパー)が、魔女が支配するバレエ学校で血みどろの恐怖と対峙する姿が描かれた。ルカ版『サスペリア』はオリジナル版の設定を借りつつも、テロで揺れる不安定な社会情勢、ファシズムの恐怖などを織り交ぜて、人間の深層心理にあるトラウマや拭い難い恐怖までをもあぶり出す。オリジナル版の99分の上映時間を優に超える153分という文芸ドラマばりの長尺からも、ルカ監督の本気度が伝わってくる。

「安易にコピーしたり、考えなしに作っているリメイク作品に対して私は批判的だ。たとえばハワード・ホークス監督の『遊星よりの物体X』(1951年)には2つのリメイクが存在する。一つはジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』(1982年)。オリジナル版のエッセンスを抽出する一方で、時間・空間・編集が非常に緻密な傑作だった。

しかし、前日談として2011年に作られたマティス・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニア監督の『遊星からの物体X ファーストコンタクト』は最低のコピーだった。場所と状況を借りながらも、時間・空間・編集をまったく無視した結果、駄作になったと思う。だから私が自分で『サスペリア』をリメイクする際には、時間・感覚・物語を運ぶペースを重視。その思いが観客に伝われば嬉しい」と思い入れを熱弁する。

サスペリア リメイク2018

『サスペリア』(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

5人組ロックバンド・レディオヘッドのボーカルであるトム・ヨークが、これまで断り続けていた映画音楽に初めて挑戦したことも話題。オリジナル版では、プログレッシブバンド・ゴブリンによるメタル調の楽曲があまりにも有名だが、ルカ監督はここでもコピーを意図的に避けたようだ。

「トムにはどんな音楽であったらイヤかを話し合い、“アルノルト・シェーンベルクのようなクラシック音楽はどうだろうか?”とか“キャラクターとしての音楽がほしい”などとリクエストした。当初はオファーに難色を示したトムだったが、そのミーティングに刺激を受けたようだった」と起用の舞台裏を明かす。

サスペリア リメイク 2019

『サスペリア』(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

気になるダリオ・アルジェント監督の反応は?

オリジナル版でヒロインを演じたジェシカ・ハーパーが、重要な役どころで登場する。「とにかく素晴らしい人。ドイツ語のセリフも完璧だった。初恋の人に会った気分というか、尊敬する人に会ったという感覚。撮影期間中はオリジナル版についての秘話を沢山聞くことができた。どんな話を聞いたか? 内緒だよ」と嬉しそう。

そして本編完成後には、本家のアルジェント監督を招いての特別試写会を開いた。「アルジェント監督は内向的な性格で、人に対して心を開かない人。でも映画を観た後に個人的に電話をくれた。どんな感想だったか? それも秘密にしておきたいね」と二人だけの内緒のようだ。

それでも「公の場でアルジェント監督は“ルカ監督が作った『サスペリア』はインテリ映画であり非常にデリケートな作品だ。一方、私の『サスペリア』は猛々しい映画だ”と発言してくれた」とアルジェントの反応を明かす。

この反応に対してルカ監督は「その発言を聞いたときは驚いた。だって私はアルジェント監督の『サスペリア』こそ、デリケートでおとぎ話のような映画だと思っていたから。逆に私がリメイクしたものこそ、猛々しい。お互いに真逆の意見を言うのも面白いね」。

少年時代に抱いた『サスペリア』リメイクという夢を、悪夢的ビジョンに落とし込んで新生『サスペリア』として再生させたルカ監督の熱意は、新・旧ファンにどのように受け止められるだろうか。1月25日より全国公開。

(文・石井隼人)



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