2019/01/13 06:30

英国王室を揺るがしたリアル・クイーンの“恋のラプソディ”

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
(c) 2017 FOCUS FEATURES LLC.
1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

文=平辻哲也/Avanti Press

19世紀、繁栄を極めた大英帝国を象徴する存在として知られるヴィクトリア女王(1819〜1901年)。『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2019年1月25日公開)はその晩年を輝かせたインド青年との出会いを描く。

ヴィクトリア女王を演じるのは、『007』シリーズの“M”役で知られるイギリスを代表する名女優ジュディ・デンチ。女王の知られざる“老いらくの恋”とも言える人間ドラマは、大人の映画ファンが楽しめる作品になっている。

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
(c) 2017 FOCUS FEATURES LLC.
1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』との意外な共通点

2018年下半期、クイーン旋風が吹き荒れた。英ロックバンド「クイーン」の伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』は12月25日までの累計動員474万人以上、興行収入は65億円以上の大ヒット。この「クイーン」というバンド名はザンジバル島生まれ、インド育ちのペルシャ系インド人のフレディ・マーキュリーが命名した。理由は「堂々としていて、響きがいいから」。イギリス圏の人々にとって、女王とは特別な存在だ。

この“クイーン映画”も奇しくも、女王とインド人の物語だ。

映画は1887年、68歳となったヴィクトリア女王の即位50周年記念式典から始まる。1861年には夫アルバート、1883年には従僕ジョン・ブラウンという最愛の二人の男性を相次いで亡くし、心を閉ざしてきた女王のもとに、記念金貨の贈呈役に選ばれた英領インドの24歳の青年がやってくる。王室のしきたりを無視し、真っ直ぐに微笑みかけてくるアブドゥル。女王はハンサムな青年に強く惹かれるが、周囲はそんな“君主と従者”の関係に猛反対する……。

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
(c) 2017 FOCUS FEATURES LLC.
1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

再びヴィクトリア女王役を引き受けたイギリスの名女優

1837年、18歳の若さで大英帝国の君主に君臨したヴィクトリア女王。在位63年7か月は、2015年に現女王のエリザベス2世がその記録を破るまで、歴代最長。王室にタブーなしのイギリスでは、ヴィクトリア女王を扱った映画は数多く製作され、大ヒットし、高く評価されている。

ロミー・シュナイダー主演の『女王さまはお若い』(1954年)や、エミリー・ブラント主演の『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009年)は若き女王と最愛の夫アルバート公との恋物語。本作と同じくデンチ主演の『Queen Victoria 至上の恋』(1999年、ジョン・マッデン監督)はアルバート公の死後、親密になった従僕ジョン・ブラウンとの秘めた恋模様。本作の舞台はそのブラウンも亡くなり、孤独だったとされる最晩年に当たる。

この物語は、息子エドワード7世によって歴史から抹殺された逸話。それが2010年、アブドゥルの日記が発見され、世に出ることになった。『Queen Victoria 至上の恋』でもヴィクトリア女王を演じ、その人柄が好きになったデンチはこの話に興味を持ち、再びヴィクトリア女王役を引き受けた。

現在84歳のデンチは、さすが貫禄の名演。女王としての知性、威厳、オーラもある一方、セレモニーの最中にいびきをかいて寝てしまったり、孤独ゆえに食べることが唯一の生きがいとなり、意外と“早食い女王”だったり……。高貴な身の上ながら、人間らしさに親しみを感じる。

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
(c) 2017 FOCUS FEATURES LLC.
1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

地位、年齢、人種、宗教をも越えた固い絆

王室で働く人々が人種、身分などの偏見を持つ中、女王はアブドゥルにただただ惹かれていく。その姿はまるで乙女のように純真。観ているこちらもワクワクしてしまう。

最初は異性としてときめくが、やがて、アブドゥルにはインドに残した妻がいることが分かると、妻も呼び寄せての交流がスタート。年齢、人種、宗教をも飛び越え、人間同士の固い絆を結んでいく。

女王はインド皇帝の立場でもありながら、「一度も現地に行ったことがない」といい、アブドゥルからインドについて学び、イスラム教徒の言葉<ウルドゥー語>の個人レッスンを受け、ついには従僕の青年を師とまで仰ぐ。女王は英国国教会の頂点に立つ立場であることから、皇太子や王室の職員は気が気でない。やがては王室を揺るがす大騒動へ発展する……。

ツボを押さえた老いらくの恋のラプソディ(狂詩曲)

メガホンを取ったのは、『危険な関係』(1988年)やダイアナ妃の事故死した最中の英国王室の舞台裏を描いた『クィーン』(2006年)のスティーヴン・フリアーズ。幅広いジャンルを手がけ、人生の機微を滲ませる職人監督だ。デンチとは『ヘンダーソン夫人の贈り物』(2005年)、『あなたを抱きしめる日まで』に続く3度目のタッグで、今回もユーモアを交えて手堅くツボを抑える。

また、女王の離宮「オズボーン・ハウス」で初のロケを行ったのも見どころ。アブドゥル役はインド映画『きっと、うまくいく』(2009年)のアリ・ファザルが演じた。

デンチの近作は『あなたを抱きしめる日まで』、『007 スペクター』(2012年)、『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(2015年)、『オリエント急行殺人事件』(2017年)。そのフィルモグラフィーを見ても、デンチ映画にハズレなし。老いらくの恋のラプソディ(狂詩曲)を描いたこちらの“クイーン映画”も必見だ。

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
(c) 2017 FOCUS FEATURES LLC.
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