2019/01/24 06:30

山田孝之の初全面プロデュース作が、日本映画をもっと面白くする!

山田孝之プロデューサー(奥)と藤井道人監督(手前)
『デイアンドナイト』
2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
(c) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

文=平田真人/Avanti Press

山田孝之の活躍が、めざましい。

「今さら何を言っているんだ?」と思うことなかれ。ここでは役者としてではなく、作り手の1人としての彼を指している。たとえば、2018年10月公開の映画『ハード・コア』。狩撫麻礼×いましろたかしのコミックを、山田の主演で盟友たる山下敦弘監督が実写化した一篇だ。

俳優同士の信頼関係でキャスティングを実現

かねてからこの2人が本作の映像化に向けて熱く語り合っていたのは、知る人ぞ知るところ。企画が動き出し、主人公・権藤右近の弟である左近役の候補に佐藤健の名が挙がると、『バクマン。』(2015年)と『何者』(2016年)で共演した縁から親交がある山田は、自ら佐藤に掛け合って出演を後押しした。文字通りキャスティングボートを握る役割を果たしたことによって、エンドロールではプロデューサーの1人として名を連ねている。

また「勇者ヨシヒコ」シリーズなどでたびたびタッグを組んできた福田雄一監督とも、昨年10月から配信されているドラマ「聖☆おにいさん」(一部劇場でも限定公開)で新たな協力体制を築き上げた。この作品では制作総指揮として辣腕(らつわん)を奮い、やはり自ら染谷将太の出演交渉にも趣いて実現させる快挙を成し遂げている。

『デイアンドナイト』 主役の明石幸次を演じた阿部進之介
2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
(c) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

製作を一から学んだ力作『デイアンドナイト』

そんな中、“プロデューサー・山田孝之”として黒子に徹し、初期段階から携わった力作が公開となる。1月26日から全国ロードショーの『デイアンドナイト』が、それだ。

かれこれ5〜6年ほど前、本作で主演を務める阿部進之介と、メガホンをとった藤井道人監督の映画談義から企画が立ち上がり、ほどなく山田もミーティングに参加。以前から映画の制作に興味を抱いていただけに、プロデュースをさせてほしいと願い出たとのことだ。

ただし、その時点における山田に映画づくりのノウハウはないに等しかった。が、共に一からつくりあげていく過程で手法を学んでいくというカタチをもって、晴れて“プロデューサー・山田孝之”が誕生する。

『デイアンドナイト』 主演の阿部進之介と藤井道人監督(左)
2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
(c) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

自ら実演してセリフのクオリティを高める

さっそく、脚本を練り上げていく段で、役者という山田のバックグラウンドが活きることになった。藤井監督と脚本家の小寺和久によって書かれたシナリオを阿部と山田が2人で実演し、文字から「生の言葉」に変換することで、リアリティを徹底して追求。削ぎ落とす、あるいは肉づけをするといった作業を繰り返し、会議を重ねるたびに脚本がブラッシュアップされていった。

なお、脚本の直しは28稿以上にも及んだという(筆者は「キネマ旬報 2月上旬号」掲載の阿部・藤井・山田の鼎談を取材した際、3人から『28稿以降は数えるのをやめたので、正確には何稿で決定稿にいたったのかは把握していない』との証言を得ている)。

人物や舞台、状況の設定、そしてセリフを変えつつも、阿部の演じる主人公が明石という名であることや、「昼と夜」「善と悪」という軸はブラすことなく、4年もの歳月をかけてシナリオを完成させている。

映画にせよドラマにせよ、脚本開発におけるプロデューサーの役割は極めて大きいが、稿を重ねるごとに自らが実演することで、セリフのクオリティを高めるという手法は、まさしく山田孝之だからこそなしえた芸当だろう。 

そのようにして紡がれた『デイアンドナイト』の登場人物たちが発する言葉は、息づかいが漏れ伝わってくるがごとく実に生々しく、日常感にあふれている。それゆえに、「昼の顔」と「夜の顔」を持つ明石たちの二面性が余計にもの悲しく、観る者の胸をヒリつかせるのだ。

『デイアンドナイト』
2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
(c) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

役にもっとも適した役者を見る目の確かさ

肌ざわりとしては、往年のケン・ローチ作品やライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』(2011年)のようなザラついた感じ。だが、悲壮感だけを残して終わるわけではなく、一筋の光や一縷の望みを感じさせる、余白を残す結末となっている。

わかりやすく答えを出すのではなく、観た者それぞれが咀嚼をして、自分なりの未来を思い描く──映画ならではの豊潤な時間を味わわせてくれる、見ごたえのある一篇へと昇華させたのは、阿部、藤井、山田の三位一体で取り組んだ賜物だろう。

なお、山田プロデューサーは『デイアンドナイト』でも重要なキャスティングに関わっている。物語のカギを握る北村健一役の安藤政信には自ら出演交渉を行い、唯一無二の存在感を放つヒロイン・大野奈々役の清原果耶をオーディションで選出した。

役にもっとも適した役者を見る目の確かさは、彼自身がふだん同じ立ち位置にいるからこそ。今後、彼のような立場で映画制作にかかわる役者が増えると、日本映画はさらに面白いことになるかもしれない。『デイアンドナイト』は、その起爆剤となり得る威力を秘めた力作なのだ。

『デイアンドナイト』
2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
(c) 2019「デイアンドナイト」製作委員会

今日の運勢

おひつじ座

全体運

現実離れした言動をしがちな今日のあなた。プライベートと仕事...もっと見る >