2019/01/26 06:30

石橋静河が語る“家の重圧” 婿養子問題に揺れる『二階堂家物語』

『二階堂家物語』
1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

取材・文=平辻哲也/Avanti Press

2017年、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也監督)で数多くの映画賞を受賞し、2018年はNHK連続テレビ小説「半分、青い。」に出演し、秋には出演映画が相次いで公開された石橋静河。

イラン人女性アイダ・パナハンデ監督が奈良・天理を舞台に描いた『二階堂家物語』(2019年1月25日公開)では、跡継ぎ問題に悩む二階堂辰也(加藤雅也)の娘・由子を演じた。跡取り息子が欲しい地元の名士の父、若い女性との再婚を半ば無理やり勧める祖母(白石和子)。家族がバラバラになる中、現代っ子の由子も巻き込まれていく……。

2018年、ブレークを遂げた若手実力派・石橋が語る「家」の重圧とは?

『二階堂家物語』
1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

目の前のことに集中して地道にやっていく

──「半分、青い。」に出演し、秋にはヒロインを務めた『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)を始め、『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督)、『生きてるだけで、愛。』(関根光才監督)が相次いで公開されました。昨年、キネマ旬報、ヨコハマ映画際、ブルーリボン賞などで新人賞を受賞されましたが、生活の変化はありましたか?

受賞式の前にいくつか撮影をしていて、たまたま、この秋に公開が重なったのですが、そんなに劇的に変わったことはないです。目の前のことに集中して、地道にやっていくことに変わりありません。経験を積み重ねていくしかない。地続きのままやっている感じです。

──この『二階堂家物語』の撮影も受賞前ですね。これは「なら国際映画祭」のグランプリ監督が奈良で映画を撮るという企画でしたが、出演経緯を教えてください。

去年の7月に「オーディションを受けてみる?」と言われ、挑戦したいと思いました。スカイプ(ビデオ通話)で監督とお話しして、「役についてどうか」「あなたはどういう人なのか」と問われ、いくつかのシーンを読んでみて、役をいただくことができたのですが、どんなことになるのかまったく想像はついていませんでした。海外の監督とお仕事をするのも初めてでしたし……。

──アイダ・パナハンデ監督は英語を話せます。バレエでのカナダ、米国留学で培った語学力を活かせたのでは?

細かい演出はペルシャ語の通訳の方を介してでしたが、基本的なことは全部英語でした。直接に話せたことで、監督は、こういう人なんだとか、より人柄を感じながらできたので、すごく良かったです。

『二階堂家物語』
1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

イラン人女性監督と仕事をして感じた“強さ”

──監督はとても意志が強い方だと感じました。

そうですね。スカイプで「こんにちは」と話した瞬間から、今まで会ったことがないタイプの人だなと思いました。こちらが飛ばされてしまうぐらい本当に強い意志を持った方で、ある意味、カルチャーショックでした。オーディションの結果に関係なく、監督に対して、人としてとても興味がありました。

──監督と交流する中、その秘密は分かったのですか?

イランでは映画を作ること自体すごく難しいと聞きました。女性は必ずヒジャブ(覆う布)を着なければいけない。その女性が監督をすることはさらに難しい。でも、それをアイダ監督はやろうとしている。いろんな制約がかかっていると、強くならざるを得ないし、強くないと絶対できないんだなと。そこまでして映画を作りたいんだという意志を感じたときに、同じ女性としてかっこいいなと思いました。私は、この作品を撮影した1年前は、今よりもっといろんなことに自信がなく、毎回本当に悩みすぎるぐらい不安だったんです。そんななか、この撮影現場ではいろんな新しいチャレンジがあって、そのなかでまた違う発見があるんじゃないかと思っていました。

──そんなイランの女性監督が日本の伝統的な家制度で揺れる家族の物語を描きました。

私自身、こういう家の問題があること、「婿養子」という言葉も馴染みがなかったんです。由子も現代の女の子で、ましてや、外国人のボーイフレンドがいて、家督制度というものに対して疑問を抱いている。自分が最初に素直に感じたことが由子の思いに近いのではないかなと思うので、違和感なく、由子が感じることを探っていけました。

『二階堂家物語』
1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

台詞のニュアンスで試行錯誤を繰り返した現場

──撮影はいかがでしたか?

台詞がすごく難しかったです。脚本はアイダ監督と、監督の旦那さんであるアーサランさんの2人が書いたものでした。初稿はペルシャ語から英語になったものを日本語にしていますが、違う言語を介しているので細かいニュアンスがわからない部分があったりしました。言葉としては成立しているけれども、核が見えず、それを理解するのがとても大変でした。監督といろんな言葉を交わし、演ってみて、監督から「NO」と言われながら、とにかくひたすら現場で試すしかなかったんです。

──セリフが直訳的だったということですか?

当たり前のことかもしれませんが、日本とイランでは言葉の使い方がそもそも違うんだと思います。日本語だったら全てを言い切らない方が伝わることがあるけれども、ペルシャ語だと、全部言わないと言ったことにならないんだと思います。歴史的に激しい変転があって、極端な話、ちゃんと自分の意思表示をしないと殺されてしまったりもした文化背景があるから、全部言葉にするのだと思います。全てを日本語にすると、「言葉が多いんじゃないかな」と思うことがあっても、監督は「私の国の言葉ではおかしくない!」と言うわけです。で、どっちも譲れない。

だけど、加藤さんが「まずやってみようよ。それで違ったら、話してみよう。そうしないとできないし、どんどん心が離れちゃうから」とスタッフ、キャストに言ってくださった。これは、本当にありがたかったです。 加藤さんは何度も監督に英語で説明してくださいました。監督も頑なだったわけではなくて、「私が映画の中で伝えたいことはこうなんだ」と言ってくれて。あとはただただ、無我夢中でやるしかないと思っていました。

──出来上がった映画を観ると、不自然なセリフはないですね。何も知らない人が観ると、日本人が監督の作品だと思うはずです。

そうですね。監督のこだわりもすごく見えるし、日本人にとっての違和感はあまりない。監督は外から見ているんじゃなくて、私達や(劇中の)家族の中に一緒に寄り添っていたんだな、という気がします。

監督の意志に対して、本当に心が動かされ、何とかしてお芝居で応えたい、と思っていました。関わり続けないと、向き合い続けないといけないんだなと。いろんなことを考えながら、そのこと自体をちゃんと言葉にしなきゃ、と。キャストの方々からも励まされながら、いろんなことを話しました。だから、家族になるのはすごく早かったですね。それも、ある意味、監督の演出なのかもしれません。

『二階堂家物語』
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(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

自由に育ててもらった自分は幸せだった

──雛人形を前に、石橋さんと加藤さんの父娘が会話するシーンは感動的でした。涙なしにはいられない。

あのシーンは何十回もやったんです。監督がご自分のお父さんとの個人的なお話をしてくださったことが大きかったです。一番大事なのは言葉に囚われるんじゃなく、監督が何を感じているかや、この画が何を伝えたいか。それをブレさせてはいけない。それを踏まえた上でどうやって芝居をするか、どういうふうに動いて、セリフを言うかを考えていかないといけない。自分がちゃんと応えられているのか、不安がありました。

──その前にあった、外国人のボーイフレンドの部屋で自由に踊るシーンも印象的でした。

あそこは由子の感情が広がっていくシーンなのだと思っていて。監督からも「何も制約がなくて、ただ自由に気持ちよく踊ってほしい」と言われました。

──『きみの鳥はうたえる』でも、踊る場面がありましたね。踊るシーンは本当に楽しそうに見えます。それにしても、石橋さんは出演作で歌ったり、踊るシーンが多いですね。

そうなんですよね(笑)。踊りは自分の中にあるもので、とても大事なものだと思っています。それをいろんな映画でやらせてもらっているのはすごく不思議なんですけど(笑)。

──『二階堂家物語』は家の重圧もテーマのひとつになっていますね。

私は、何かプレッシャーをかけられたりみたいなことが今まで一度もなく、本当に自由に育ててもらったんだと気付きました。

ただ、私が芝居を始めるときに、私はきっとこういうふうに言われるんじゃないかとかは、子供の頃からずっと無意識のうちに考えてはいました。もしあったとしたら、こう言われるし、こういうふうに見られるだろうから、「私はやらない!」と思っていたんですけども、実際には親や周りからは、「こうしなさい」とか、「やっちゃ駄目」とは一切言われませんでした。あらためて、それは本当にしあわせなことなんだなと思っています。

『二階堂家物語』
1月25日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
(c)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited,Nara International Film Festival(配給:HIGH BROW CINEMA)

 

若手演技派の石橋が「いろいろ自信がない」といったのが印象的だった。賞にも慢心せず、やりたい“何か”を探している。イランの女性監督とともに作った伝統的家制度をめぐるホームドラマは、彼女にとっても大きなチャレンジだった。手探りの中、見つけたものは大きかったはず。2019年もさらなる成長を見せてくれそうだ。



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