2019/02/14 11:00

福島とハワイの意外なつながり!海を越えた「盆唄」の歴史

『盆唄』
(c) 2018テレコムスタッフ
2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

文=村尾泰郎/Avanti Press

日本の夏の風物詩、盆踊り。ノスタルジックなイメージがある一方で、最近では時代と共に変化して、Jポップに乗せて踊ったり、盆踊りをこよなく愛する人々が「盆踊ラー」と呼ばれるなど、ちょっとしたブームにもなっている。

日本人はなぜ盆踊りを愛するのか。『ナビィの恋』(1999年)で知られる中江裕司監督のドキュメンタリー映画『盆唄』(2月15日公開)を観れば、盆踊りと日本人の深い 絆が見えてくる。

『盆唄』
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

日系移民が100年以上踊り継いだ「フクシマ・オンド」

東日本大震災で、帰宅困難地域に指定された福島県の双葉町。そこには昔から受け継がれた盆踊り、「双葉盆唄」があった。しかし、今では盆唄を守ってきた人たちは避難生活を送り、練習もままならない。

電気屋を営みながら、手製のギターや太鼓を作る横山久勝さんも、そんな盆唄メンバーのひとり。

子供の頃から盆唄を誇りに思って育ってきたが、最近では仲間たちと練習もできない。このままでは盆唄が忘れられてしまうのでは、と焦りを感じていた。そんな時、横山さんは、福島の盆踊りが思いも寄らない場所で100年以上に渡って受け継がれていることを知る。

その場所とは、海の向こうハワイだった。

日本からの移民が多いハワイでは、福島から移民した人々によって、「フクシマオンド」と呼ばれる盆踊りが受け継がれていた。ハワイという異国の地で、人々が輪になって盆踊りを踊っている姿は、どこかエキゾチックで太古の儀式のようだ。

そんな彼らの姿を見た横山さんは、彼らに双葉盆唄を覚えてもらうことで、盆唄を受け継いでもらうという壮大な計画を思いつく。

『盆唄』
(c) 2018テレコムスタッフ
2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

北陸から相馬、相馬からハワイへ、移民と一緒に旅をした歌

映画では、ハワイ移民と盆唄の歴史についても触れられているが、これがまた興味深い。彼らはハワイでサトウキビ畑を開拓するという大変な重労働に従事しながら、その辛さを忘れるために日本の歌を歌った。

しかし、第二次世界大戦が始まると、ハワイでは日本語や日本の文化は禁止される。そんななか、日本人移民は志願兵となって戦い、アメリカに貢献したことで、戦後、日本文化をハワイで復活させることができたという。

『盆唄』
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

福島からハワイへと海を渡った盆唄。人と一緒に歌も旅をしたのだ。さらに映画では、もうひとつ重要な旅を紹介する。

ハワイに盆唄を伝えに行ったメンバーのひとり、踊りの名手の井戸川容子さんの祖先が、200年以上前に、北陸から双葉町の相馬地区にやって来た移民だったことがわかる。かつて相馬地区は凶作と疫病で人口が3分の1に激減。滅亡の危機に瀕した藩は、北陸地方からの移民を受け入れ、住む場所と農耕具を与えた。

しかし、相馬の人々は見知らぬ移民に対して冷たかった。移民の人々は黙々と働き、地元に貢献することで次第に受け入れられていった。そして、その移民が歌った富山の「ちょんがれ」という歌と踊りが、盆唄の元祖ともいわれているという。そんなエピソードを知ると、ハワイ移民と相馬移民の歴史が重なる。

『盆唄』
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

震災や原発事故で故郷を離れた、避難民という名の移民

大昔から、人々は夢を抱いて、あるいはやむを得ない事情で旅をした。そして、苦しい時や悲しい時、人々は故郷の歌や踊りで癒された。

双葉の人々は、震災や原発の放射能の影響で故郷を離れた避難民という名の移民。今問題になっている避難民差別の問題は出て来ないが、「練習をしたいけど、避難先で迷惑になるかもしれないから控えている」と盆唄のメンバーは語る。

また映画で、避難民の人たちがホテルの中で盆踊りをするシーンがあるが、盆踊りをすると大変な時に遊んでいると思われるかもしれない、という配慮らしい。日本人らしい気遣いだが、そんな彼らがハワイ移民や相馬移民のように地元に溶け込み。堂々と盆踊りができるようになるのはいつのことだろう。

『盆唄』
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

圧巻の盆踊り映像から浮かび上がる、故郷への思い

福島とハワイ。現代と江戸時代。場所や時間を越えて語られる盆唄と人々の関係。そこで浮かび上がるのは故郷への想いだ。

横山さんたちは、ハワイのボンダンス(盆踊り)・チームに「自分たちが生きているうちには双葉には帰れないかもしれない。でも、子供たちが帰れる日が来たら、私たちが教えた盆唄を子供たちに教えてほしい」と訴える。未来の子供たちは、ハワイから伝えられる盆唄のなかにどんな故郷の姿を思い浮かべるのだろう。

映画のクライマックスは、横山さんが企画したイベント「やぐらの競演」だ。故郷の双葉町に、様々の地区の盆唄チームが終結。住人たちが見守るなか、順番にやぐらにあがって、次々と盆唄を披露する。

20分以上に渡って盆唄の演奏が流れ、その地区に住む人々が撮った様々な写真が紹介されるが、それを見れば誰もが自分の故郷のことを思い出さずにはいられないはずだ。

『盆唄』
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー(フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開)

盆唄復活を目指して奔走する横山さんと仲間たちを追いながら、「故郷とは何だろう」と問いかける本作。ハワイでは、日系二世の歌手と楽団がミュージカルのように歌ったり、相馬移民のくだりではアニメを使って江戸時代の出来事を紹介したりと、中江監督は工夫を凝らしながら大きなテーマを親しみやすい語り口で掘り下げ、盆唄がもたらす高揚感で観る者を励ます。『盆唄』は震災で亡くなった人たちへの鎮魂歌であり、同時に生き残った者の希望の歌でもあるのだ。

『盆唄』
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