2019/02/27 11:00

『移動都市/モータル・エンジン』の圧倒的世界観は、師弟の伝承に理由アリ

(『移動都市/モータル・エンジン』3月1日全国公開)(C)Universal Pictures

『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のピーター・ジャクソン監督が脚本・製作を担い、イギリス人作家フィリップ・リーヴのファンタジー小説を映画化した『移動都市/モータル・エンジン』(3月1日公開)。本作のメガホンを取ったクリスチャン・リヴァーズ監督は、ジャクソンの秘蔵っ子ともいえる視覚効果アーティストです。

脅威の映像表現で映画史に軌跡を刻んだP・ジャクソン

9歳の頃に、テレビで見たオリジナル版『キング・コング』(1933年)に衝撃を受け、映画監督を志したというピーター・ジャクソン。その後、すぐに両親の8mmカメラで短編映画を撮り始めたという生粋の映画人です。

ジャクソンの名を世に広めたのは、第51回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞に輝いたケイト・ウィンスレット出演の心理ドラマ『乙女の祈り』(1994年)。その後手がけたJ・R・R・トールキン原作『指輪物語』を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング』三部作では、シリーズ累計でアカデミー賞17部門に輝くなど、世界を熱狂の渦に巻き込みました。

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚にあたる『ホビット』三部作も高く評価されたほか、満を持して臨んだ『キング・コング』(2005年)のリメイクではアカデミー賞3部門を獲得するなど、その脅威の映像表現で映画史に新たな軌跡を刻みました。

P・ジャクソンの秘蔵っ子!? クリスチャン・リヴァーズ

このジャクソンの快進撃で重要な役割を務めているのが、本作で初監督を務めたクリスチャン・リヴァーズです。

リヴァーズは高校時代、ファンレターと共に自作のドラゴンの絵をジャクソンに送り、スタッフとして迎え入れるよう依頼したといいます。熱い思いが届きチームに召集された彼は、ジャクソン監督作『ブレインデッド』(1992年)のストーリーボード(絵コンテ)を担当。それ以降25年にわたって、全作品でストーリーボード・アーティストを務めています。

近年ではデジタル技術の分野でもその才能をいかんなく発揮している彼は、ジャクソンのメモリアル的作品である『キング・コング』(2005年)でアカデミー賞視覚効果賞を獲得。映像全般でジャクソン作品を強固に支える人材となっていったのです。

映像はもちろん、美術や特殊効果などもこなすオールラウンダーのリヴァーズ。『ホビット 思いがけない冒険』(2012年)、『ホビット 竜に奪われた王国』(2013年)では第二班の監督としても作品に従事し、デヴィッド・ロウリー監督のファンタジー『ピートと秘密の友達』(2016年)でも同じポジションを務めています。優秀なスタッフとしてだけでなく、監督を担う人材としても着実にキャリアを重ねてきました。

「長い間クリスチャンのために映画を製作したいと思っていたから、完璧なタイミングだった」とジャクソンが今回の監督起用について語っていることからも、彼を育てようとする姿勢が見て取れます。ジャクソンにとって彼は、単なるコラボレーションを越えた“秘蔵っ子”のような存在なのかもしれません。

初監督にして壮大な世界観の映像化に成功

本作はフィリップ・リーヴの『移動都市』4部作を原作とする冒険ファンタジーです。最終戦争が勃発し、60分で世界の文明が荒廃。残された人類は移動型の都市に住み、各地を回りながら資源を確保しています。しかし、その頂点に君臨する巨大都市“ロンドン”は、小さな都市を捕食することで資源を手に入れ、そこの住人を奴隷にしてしまいます。

さびついた要塞のような巨体をきしませながら残忍な牙をむくロンドンの小都市捕獲シーンは、まるで小動物をねぶりながら追い詰める大型肉食獣の捕食風景を見ているようで、その緊迫感と迫力に息苦しくなるほど。

また、圧倒的なパワーとパワーがぶつかりせめぎあう様子を、俯瞰から余すことなく描き切った構図の見事さ。その一方で世界の破滅を目論むロンドンの指導者・ヴァレンタイン(ヒューゴ・ウィーヴィング)と、彼に反旗を翻す少女ヘスター(ヘラ・ヒルマー)との因縁の人間ドラマも見ごたえ十分です。

“細部まで作り込まれた緻密な世界観”と“圧倒的なスケール”という“ジャクソンイズム”を継承するリヴァーズは、上質なストーリーテリングと圧巻の映像表現で壮大なファンタジー作品である本作にリアルな命を吹き込んでいます。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)

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