2019/02/17 06:30

新生・戸田恵梨香の笑顔を守り抜く強さ!『あの日のオルガン』

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開 (C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

文=関口裕子/Avanti Press

戸田恵梨香。出演作を観た後は、いつも彼女に魅了されている。演じる役柄は関係ない。一途なヒロインでも、鉄面皮な医師でも、身なりに構わないマッドサイエンティスト的な捜査官でも、記憶をなくしていく女性でも、どんな役だろうがふと気づくと強く惹かれている。

優美な佇まい。でも美しさを第一義にすることなく、作品に応じ、どんな“キャラクター”への表現も厭わない。系譜でいうと、アカデミー賞を4回受賞した名女優キャサリン・ヘプバーンというところか。

昨年は、フランスの大手化粧品会社ランコムの、日本初のミューズに選ばれた。ランコムは、美しさだけでなく、“女性の自由と平等のために戦う日”として提唱され、国連が定めた国際女性デーを応援している。そんなランコムから選ばれるのも、それを受け入れるのも、とても戸田恵梨香らしいのではないか、と思う。

ランコム www.lancome.jp

2005年のドラマ「エンジン」(CX)、「野ブタ。をプロデュース」(NTV)で注目され、2006年『デスノート』で映画デビュー。以来、「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」(2010、2012、2013年)シリーズなど様々なヒット作、話題作、佳作に出演し、2018年は興行収入約93億円、実写日本映画の歴代興行5位を記録した『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命』に出演。戸田は、ドクターのひとり、実利主義の緋山を演じ続けるも、時折、見せる絶妙な優しさや弱さに、10年間応援し続けたファンを身もだえさせた。

また秋には「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS)で若年性アルツハイマー病に進行する軽度認知障害(MCI)に罹患した医師が、人生をかけた大恋愛をまっとうする姿を、大真面目に、そして飛び切りキュートに演じ、視聴者をも恋に落とした。

納得がいくまで話し合った後は…

2019年、そんな戸田恵梨香主演のなんとも素敵な映画が公開される。第二次大戦末期、53名の子どもたちの笑顔を守り抜いた、戸越保育所の保育士たちを描く実話の映画化『あの日のオルガン』だ。

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

空襲が頻繁に起きるようになった東京から、国の決定を待たず、保育所ごと疎開を試みた保育士らの物語。自由意志での疎開ゆえ、避難場所を探すのも、費用の工面も自分たちでしなければならない。加えて子どもたちの疎開に反対する親の説得や、食料の調達、若い保育士たちの精神的支え、疎開保育所の建物の修繕、一部非協力的な疎開先のコミュニティとの付き合いと、クリアすべき問題は山積み。そんな問題に、「私たちには健康な体とほどほどの脳みそがある。それを使ってひとつひとつ解決しよう。そして私たちの文化的生活を作ろう」と、論理的に取り組むのが戸田演じる楓先生だ。

楓先生のあだ名が“怒りの乙女”である理由は?

保育所で楓先生は、“怒りの乙女”とあだ名されている。怒りが向けられるのは、教育をないがしろにする“時代”。当時の日常には、「ただ子どもを預かるのではなく、その歳で芽生える豊かな感性を、文化的な環境で育む」とした戸越保育所の教育方針を否定する出来事が溢れていた。

“文化的な生活”を奪われれば、人であることを奪われたも同然。楓先生はそれを理解しているからこそ怒る“教育者”だった。脚本は極力説明台詞を抑えたものであったが、戸田はそんな楓先生の意思を、声のトーンや表情のわずかな変化で表現して見せた。

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

NHKのあるドキュメンタリー番組で、戸田恵梨香を「一本気。曲がったことが嫌い。芝居に妥協はしない。しかし、その裏側では常に不安と闘ってきた」と紹介していた。不安とは、「何のためにお芝居をするのか?」ということ。戸田は、これまで戦争を題材にした作品に出演するのを避けてきたという。その役が鑑賞者に影響をもたらすことに怖さがあったと。その不安を払しょくしたのは、監督である平松恵美子と納得いくまで行った対話だった。

山田洋次監督の愛弟子で、近年の作品の共同脚本も手掛けている平松監督は、戸田の「役への掘り下げの深さに驚いた」という。二人ともに妥協のない性格。その二人が徹底的に話し合ったとなれば、いかほどの密度だったのか。平松監督は、「話すうちにぜひ一緒に仕事がしたいと思い、かつてない勢いで作品と自己のアピールをしてしまった」のだそう。戸田も平松監督を質問攻めにしたという。

本作に説得力を与え、信頼性を高めた名優たち

平松監督は本作品に惹かれた理由を、「周りの人たちを説得して行動を起こしていく女性たちを素敵だと思ったから。彼女たちには、いろいろな人を巻き込む力と、信頼できる人になら巻かれることをよしとする力があった。自分の中にも類似する部分があり、そこに魅力を感じた」と語る。

なにごとも先入観にとらわれず、のびやかに生きようとする保育士とその生徒たち。この映画の魅力は、まさしくそこにある。心に残るエピソードをここにあげてしまうのは無粋。でも、ひとつだけあげるとすると、戦時下の疎開保育所に響くオルガンの音色と、それに合わせて子どもたちが歌い踊るシーン。ここに集約できると思う。

さらにいうと、オルガンを弾く“みっちゃん先生”こと光枝を演じた大原櫻子の“空気を読まない”自然体も魅力的だし、まるでその時代を生きる子どものように立ち居振舞った子役たちの名優っぷりも見逃せない。

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

子どもたちが名演だったのは、彼らが本当に役者であったことに加え、出演した保育士役の女優さん全員が、撮影のない時間も役さながらに子どもたちと向き合ったためだと、平松監督はあかしている。撮影が始まるのになかなか静まらない子どもたちを、普段は優しい戸田が「うるさいねん!」と一括した姿も楓先生と重なった、と皆が証言する。

「命の大切さや平和への思いは、繰り返し、手を変え、品を変え、言い続けなくてはいけない。でも言い続けても正確に届くかどうか分からない。だからこそ、それを届けてくれる素敵な俳優さんたちの声と身体と表現力が必要」なのだと平松監督はいう。どんなテーマの映画でも観る者を魅了してしまう戸田恵梨香という俳優の存在は、平松監督にとって、この映画にとって必要不可欠だったのだ。

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

届けるという意味では、橋爪功、松金よね子、夏川結衣、田畑智子、田中直樹、林家正蔵らベテランと、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由ら伸び盛りの若手俳優も大いに貢献し、この映画に説得力を与え、信頼性を高めた。

『あの日のオルガン』2月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 配給:マンシーズエンターテインメント

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昨年10月1日、戸田は自身の公式Instagramで、「30歳を迎えた時に決めたのです。今までの考え方や持っているものを出来る限り捨てる。更に進化する為にリセットする。40歳へ向けていざ!!!!」と力強く宣言している。現在の戸田は、すでにリセットした新生・戸田恵梨香だ。本年度後期の連続テレビ小説「スカーレット」への主演も決定している。どんなふうに進化していくのか、期待しかない。



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