2019/02/22 16:30

なぜ『グリーンブック』はオスカー本命に躍り出たのか?

『グリーンブック』3月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

2月24日(日本時間25日)、いよいよ発表される第91回アカデミー賞。ここで、5部門にわたってノミネートされている小品がある。それが『グリーンブック』(3月1日より公開)だ。作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞だから、主要部門と言っていい。ただ、並み居る強豪に較べると地味な作品ではある。

オスカーの前哨戦と言っていい第76回ゴールデン・グローブ賞では、コメディ/ミュージカル部門の作品賞をはじめ3部門に輝くなど、“穴馬”から“本命馬”への躍進を果たした。常に番狂わせと隣り合わせにあるアカデミー賞。何が起きてもおかしくはないが、『グリーンブック』はかなりイイ線をいっている。オスカーに“好まれそう”な作品なのである。

社会問題に親近感をもって接する

1962年。まだ、今よりもはるかに黒人差別が強固だった時代。ホワイトハウスで演奏したこともある黒人ピアニストのドクター・シャーリーが、黒人差別が過酷なアメリカ南部であえてツアーをすると決断。その運転手に選ばれたのが、ナイトクラブで用心棒をしているイタリア人のトニーだった。腕っ節は強いがかなりの単細胞で、屈折した繊細さを持つ天才ピアニストとは別の世界の住人。だが、ドクター・シャーリーは、このイタリア人と旅することにこだわった。

かくして始まった演奏旅行。反骨精神のあらわれなのか、あえて白人の集うバーに行って袋叩きにされるなど、ドクター・シャーリーはトラブルを引き起こす。その都度、トニーは何度も修羅場をくぐってきた辣腕で事をおさめるのだが、ドクター・シャーリーのそんな“ねじれ”が理解できない。

才能とインテリジェンスにあふれた黒人がなぜ、自分のプライドを傷つけられるとわかっている炎の中に飛び込んでいくのか?

トニーが抱く疑問は、わたしたち観客が考えることと一緒だ。こうした構造が親近感を呼び、粗暴だがシンプルな性根の持ち主であるトニーに導かれるように、ドクター・シャーリーの深層心理に近づいていくことになる。

『グリーンブック』3月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

ひとの心を打つ要素を兼ね備えている

本作はまず、第一に、バディムービーである。相棒ものは、性格が正反対であるほうが活性化する。それでいてどこか共通点があるから、バディはバディとして成立するのだが、本作ではドクター・シャーリーもトニーも、世の中の偏見と闘う意志がある、というところが重なる。

ドクター・シャーリーはあからさまに好戦的だが、トニーは力強くスルーすることで偏見をなきものにしようとしている。黙殺しようとする、と言い換えてもよい。

頭がいいわりに無鉄砲なピアニスト、ドクター・シャーリー。思慮深いとは言えないにもかかわらず、ここぞというときには決断力を発揮する運転手、トニー。二人は、いいコンビなのだ。

第二に、本作はロードムービーである。旅をする過程で、ぶつかり合うばかりだった凸凹コンビの心と精神は近づき、二人だけの絆が生まれていく。物理的な移動が人と人との距離を縮め、結びつけていく。このオーソドックスな展開が、観る者の感情を自然に潤わせる。

第三に、とてもウォーミーで、エンディング後の余韻が深い。21世紀の現在にもつながる社会問題を背景にしてはいるが、個人と個人との関係にスポットを当てているから、堅苦しさもなければ、説教臭さも皆無。黒人専用のトイレがあったという事実に愕然ともするが、そんな偏見と状況を乗り越えるのも、また人間なのだと思わせられる。

『グリーンブック』3月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

さらに、名台詞が多いのも、“最新の名作”感があっていい。

「ひとの胸を打つためには、才能だけじゃダメだ。勇気が伴わなければ」

「さみしかったら、自分から動かなくちゃね」

決して“優等生”なタイプではないが、嫌われる要素がなく、多くのひとに愛されるキャラクター性を有した映画。この作品が持つ、“かけがえのない人格”がオスカーを制しても、なんの不思議もない。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

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