2019/02/23 11:00

この手があったか!耳で聞く映画『THE GUILTY/ギルティ』が注目な理由

『THE GUILTY/ギルティ』配給:ファントム・フィルム 提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

デジタル技術の進歩は、単にさまざまな映像技法を可能にしただけでなく、作り手になにがしかの意欲を与えることにも繋がっているように思える。

撮影機材の軽量&簡便さによって、たとえば昨年の話題作『カメラを止めるな!』は35分強の長回し撮影を可能としたが、3月8日より公開されるノルウェー映画『ウトヤ島、7月22日』はテロリストによる銃乱射事件の衝撃的惨劇の模様を72分ワンカットで映し出す。

ネットいじめに端を発するホラー映画『アンフレンデッド』(2015年)およびその続編で3月1日から公開される『アンフレンデッド:ダークウェブ』、父親が失踪した愛娘をPCを駆使して探し出すサスペンス映画『search/サーチ』 (2018年)のように、映画全編がパソコン画面だけで展開される新感覚的アイデアのものも登場してきた。

そして2月22日より公開されたデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』も斬新なアイデアでスリリングなドラマが展開されるサスペンス映画である。

何が斬新かというと「電話からの声と音だけで誘拐事件の全貌を描く」という、シンプルかつ画期的なものなのだ。

誘拐された女性からの電話!そのときオペレーターは?

本作の主人公は、緊急通報指令室のオペレーターを務める元警察官のアスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)。日頃は交通事故による緊急輸送の遠隔手配などに勤しんでいる彼は、あるとき1本の電話を受ける。

それは、今まさに自分が誘拐されているという女性からの決死の通報だった!

彼女が怯えながらも伝え続ける状況や、車の発車音、犯人の息遣いなど、電話から聞こえてくるかすかな音だけを手がかりに、アスガーは彼女の居場所を突き止め、事件を解決しようとするのだが……。

THE GUILTY/ギルティ サブ2

かねがね映画は「画で魅せる芸術」と認識されて久しいものはあるが、実際は無声映画からトーキーの時代になって才能ある映画人は台詞や音楽、音響などを単なる説明の道具ではなく、映画そのものに機能させるべく腐心しつづけてきた。

その意味では本作もまさにその頂点に位置する傑作と呼び讃えても差し支えないというか、そうかこの手があったのか! と、あたかもコロンブスの卵のように映像に関わる者なら驚嘆することだろう。

劇中、電話の向こう側が映し出されることはなく、そのぶん観客は主人公の耳に入ってくる声や音を聞きながら彼とともに脳裏で想像し、推理を働かせていく。つまり観客と主人公が同化しながら映画に参加していくことにもなるのだから、実に見事な仕掛けである。

THE GUILTY/ギルティ サブ3

まさにこれぞ映画のネクスト・ジェネレーション!

監督のグスタフ・モーラーは1988年生まれで現在30歳。デンマーク国立映画学校を卒業。卒業制作作品がノルウェー国際映画祭ネクスト・ジェネレーション賞を受賞し、本作が長編デビュー作となるが、まさに“次世代”ならではの意欲と才能をフルに発揮して、このシンプルかつ秀逸なアイデアに負けないノンストップ・サスペンスとしての演出を披露している。

またこの作品、上映時間88分の中で、事件の全貌のみならず主人公の過去までもが自然に触れられ、その人生の悔恨(かいこん)なども描かれていく。脚本も監督自身の筆によるものだが、それを脱稿した時点で作品の成功は保証されていたとみてもいい。

THE GUILTY/ギルティ サブ1

アスガー役のヤコブ・セーダーグレンはデンマークのスターで、ここでの引き締まった演技や存在感もさながら、声のトーンも映画の雰囲気に即しており、彼が電話の向こう側に話しかけるだけで映画のエモーションが醸しだされていくあたりも素晴らしい。

とにもかくにもシンプルかつ芳醇、そして至高ともいうべき映画のカタルシスをとくと堪能できる88分。サンダンス映画祭観客賞をはじめ世界中の映画祭で絶賛され、受賞の栄誉に預かった傑作がいよいよ日本に上陸!

映画にはまだまださまざまな可能性が秘められていることを大いに示唆した、映画ファンならずとも必見! と強く推したい次第である。

(文・増當竜也)

(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S



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