2019/02/26 18:46

心にしみる言葉溢れるアカデミー賞!隠れ主役はあの人【第91回アカデミー賞ハイライト】

アレキサンダ・マックイーンのドレスを着た主題歌賞受賞レディー・ガガ Todd Wawrychuk / (c) A.M.P.A.S.
 
【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯25】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と「伝説のチャンピオン/We Are the Champions」で幕を開けた第91回アカデミー賞授賞式。近年まれに見る混戦模様を反映するかのように、授賞式の間も、『ボヘミアン・ラプソディ』から『ブラックパンサー』、『ROMA/ローマ』からスパイク・リーへと、賞の行方や熱狂の波が行ったり来たり。最終的に、プレゼンターのジュリア・ロバーツが読み上げた作品賞は、人種や立場を超えた友情を描いたドラマ映画『グリーンブック』だった。ハイライトを振り返ってみたい。

主演男優賞を受賞したラミ・マレック(写真中央)
photo by Matt Petit / (c)A.M.P.A.S.

を開けてみれば、順当だった受賞結果

これまでの賞レースにおける各アワード結果がばらけていたために、予測できない大混戦といわれていた今年のオスカー。結果的には、本命2トップであった『グリーンブック』が作品賞、『ROMA/ローマ』が監督賞(アルフォンソ・キュアロン)に輝いた。

『グリーンブック』(c) 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

俳優部門は、主演男優賞がラミ・マレック(『ボヘミアン・ラプソディ』)、助演男優賞がマハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)、助演女優賞がレジーナ・キング(『ビール・ストリートの恋人たち』)と順当な結果。

左からラミ・マレック、オリヴィア・コールマン、レジーナ・キング、マハーシャラ・アリ
photo by Mike Baker / (c) A.M.P.A.S.

主演女優賞のみ、有力候補の1人だったオリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』)が、やや優勢だったグレン・クローズ(『天才作家の妻 40年目の真実』)をおさえて受賞を果たした。コールマン本人にはサプライズだったようで、クローズに向けて、「あなたはずっと私のアイドルだった。こんな形は望んでいなかったんだけど」と興奮気味に“謝罪”し、クローズと会場の温かい笑いを誘った。

グレン・クローズに“謝罪”するオリヴィア・コールマン
photo by Matt Sayles / (c) A.M.P.A.S.

こうしたなか、授賞式前半に発表されて会場を盛り上げたのが、世界中のファンが愛した2作品。

『ボヘミアン・ラプソディ』は、音響編集賞、録音賞、編集賞を制し、主演男優賞を含めた最多4部門で、『ブラックパンサー』は、衣装デザイン賞、美術賞、作曲賞の3部門でオスカーを手にした。

『ボヘミアン・ラプソディ』音響編集賞を受賞したニーナ・ハートストーンをブライアン・メイらが祝福
photo by Phil McCarten / (c) A.M.P.A.S.

こうした部門に対してスタンディング・オベーションが続くことは珍しいのだが、今年は、同2作の受賞が発表されるたびに、会場がスタンディングで祝う様子が印象的だった。世界中の一般観客はもちろん、授賞式に出席しているフィルムメイカーや映画関係者にとっても、祝福せずにはいられない2作品だったのだろう。

授賞式の隠れ主役は、スパイク・リー

受賞の行方とは別の次元で、今年の授賞式の隠れ主役ともいうべき存在感を放っていたのは、『ブラック・クランズマン』の監督スパイク・リーだ。

左から脚色賞を受賞したデヴィッド・ラビノウィッツ、ケヴィン・ウィルモット、スパイク・リー、チャーリー・ワクテル
photo by Mike Baker / (c) A.M.P.A.S.

社会派フィルムメイキングを語る上で欠かせない存在ながら、『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』などではオスカーに恵まれず、2015年にはアカデミー賞名誉賞を受賞したものの、2年連続で俳優部門を白人俳優が占めたことで、授賞式へのボイコットを表明したことでも知られる。だからこそ、『ブラック・クランズマン』の面白さと重要さもさることながら、“あのとき、渡せなかったオスカーを今度こそ!”というムードがあったのだ。

そのムードは、オスカーの授賞式にも充満していた。衣装デザイン賞を受賞したルース・E・カーター(『ブラックパンサー』)は受賞スピーチで真っ先に、30年のキャリア初期からコラボレーションしてきたリーに感謝。

『ブラック・クランズマン』の作品紹介では、バーブラ・ストライサンドが同作に感動し、自身のツイッターで褒めちぎったところ、リーから直々にお礼のメッセージが届いたエピソードを披露。「ブルックリン出身で帽子好き」と共通点が多いことを明かすと、客席で立ち上がって呼応するリーの姿が映った。

スパイク・リーに呼びかけるバーブラ・ストライサンド
photo by Aaron Poole / (c) A.M.P.A.S.

そして、いざ脚色賞での受賞が確定すると、大喜びでステージに上がり、プレゼンターのサミュエル・L・ジャクソンに少年のように飛びつきハグ。大喝采のなかで、黄色のノートパッドに書いたスピーチを必死で読みながら、人種差別の歴史と現代政治へのメッセージを放った。期待された監督賞は逃したものの、オスカー像がリーの手に渡ったことで、安堵の喜びを感じた人は多かったはずだ。

とはいえ、そこで終わらないのが、スパイク・リー。

作品賞が『グリーンブック』と発表された際には、怒って離席しようとした姿が目撃されている。その後、舞台裏のインタビューで、『ドゥ・ザ・ライト・シング』が作品賞を逃した時の受賞作『ドライビング Miss デイジー』同様、バディもののロードムービーである『グリーンブック』と重ねて、「誰かが誰かのために運転するたびに、俺は負ける」とぼやいたという。文句のなかにもウィットを込めるリー節は健在なのである。

波乱万丈だった授賞式までの道、その結果は?

今年の授賞式に向けて、アカデミー側は最後の最後までプランニングに奔走した。新しく決定したことが、そのたびに批判の対象となったからだ。

まずは昨夏、「人気映画部門」の新設を発表し、大反発を受けて撤回。年末には、司会に決定したケビン・ハートが、過去の差別的ツイートの炎上により、降板。司会なし授賞式が確定した。

年が明けると、授賞式をコンパクト化するために、主題歌賞ノミニーの5曲のうち、レディー・ガガ&ブラッドリー・クーパーの「シャロウ 〜『アリー/ スター誕生』 愛のうた」と、ケンドリック・ラマー&シザの「オール・ザ・スターズ」(『ブラックパンサー』)のみを披露することを発表。世間の批判を浴びて、結局、全曲が披露されることになった(ところが、授賞式数日前に「オール・ザ・スターズ」演奏はキャンセルに)。

「シャロウ 〜『アリー/ スター誕生』 愛のうた」を歌うレディー・ガガ&ブラッドリー・クーパー
photo by Matt Petit / (c) A.M.P.A.S.

それでもなお、授賞式短縮にこだわるプロデューサー側は、撮影賞を含む4部門の受賞者をコマーシャル中に発表するとして、ジョージ・クルーニーやブラッド・ピット、ギレルモ・デル・トロらが抗議する大騒動に。結局、全部門が例年どおり、ライブ中継で発表されることとなった。

これらの迷走は、授賞式でしっかり、“自虐ギャグ”に変身。冒頭のプレゼンターを務めたコメディアンで女優、プロデューサーであるエイミー・ポーラーが「今年は(コマーシャル中に4部門の発表するのではなく)授賞式中にコマーシャルを発表します」とギャグにして笑いを取った。

たくさんのダメ出しを受けてプランの変更を繰り返したアカデミー。結果的に、「クイーン」のパフォーマンスで幕を開け、多様なプレゼンターを配して、司会の穴を埋め、100万ドルのスマイルのジュリア・ロバーツが投げキッスで閉める最終案は、奏功したのではないだろうか。

アダム・ランバートとクイーンのパフォーマンスで開会
photo by Aaron Poole / (c) A.M.P.A.S.

華やかさを取り戻したレッドカーペット

今年は、授賞式前のレッドカーペットの華やかさも印象的だった。近年のオスカーでは、さまざまな理由でレッドカーペットが静まりをみせていたからだ。

「そのドレスはどのブランド?」といったファッションに関する質問が女性だけに向けられることへの違和感、#Me Tooムーブメントをはじめとするハリウッド内部での怒りや自粛ムード、政治的質問を避けたいセレブが多かったこと、思わぬ失言でSNS炎上するケースが続いたことなどが、背景にあったように思う。大物になればなるほど、世界各国のカメラを避けて、授賞式開始直前に滑り込む姿が目立った。

左からエマ・ストーン、エイミー・アダムス、レイチェル・ワイズ
photo by Kyusung Gong / (c) A.M.P.A.S.

そんなわけで、各メディアが数時間前からカーペット到着の様子を中継しているのに、一向にスターが到着せず、ファッション・レポートもインタビューも進まない、という状況だったが、今年は、授賞式開始2時間前の時点で、「クイーン」パフォーマンスのボーカルを務めたアダム・ランバートや、レディー・ガガとともに主題歌賞にノミネートされたマーク・ロンソン、先日のグラミー賞受賞者ケイシー・マスグレイヴスらが次々と到着。

ラミ・マレックやブラッドリー・クーパー、エイミー・アダムス、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズらのノミニーたち、ジェニファー・ロペス&アレックス・ロドリゲス、クリスチャン・ベール夫妻らも余裕をもって到着し、ファッションでも楽しませてくれた(「そのドレスは?」の質問はなくても、ファッション好きにとってのお楽しみであることには変わりない)。

左からアレックス・ロドリゲス&ジェニファー・ロペス、クリスチャン・ベール夫妻
photo by Kyusung Gong / (c) A.M.P.A.S.

今年Netflixで新シリーズが配信され、時の人となった片付けコンサルタントの近藤麻理恵こと、こんまりの姿も。

こんまりこと近藤麻理恵とタキシードドレスが話題のビリー・ポーター(右)
photo by Kyusung Gong / (c) A.M.P.A.S.

レッドカーペットの存在には賛否両論があるが、台本を読むだけではない、スターやフィルムメイカーたちの本音やリアクションが見られる貴重な機会でもある。前向きなかたちで華やかさを取り戻すのであれば、それは喜ばしいことだと思う。

受賞スピーチに溢れた、若者へのメッセージ

受賞者やプレゼンターのスピーチでは、若者や子どもたちへのメッセージが目立った。

『Bao』で短編アニメーション映画賞を受賞したドミー・シーは、「スケッチブックの後ろに隠れているオタクの女の子たちへ。アナタの物語を世界に伝えることを怖がらないで。変な子って思われることもあるかもしれないけど、それで、つながれることもある。それは最高の気分だから」と呼びかけた。

『スパイダーマン:スパイダーバース』で長編アニメーション映画賞を受賞したプロデューサーのフィル・ロードは、同作の多様なキャラクターが、世界中の子どもへのメッセンジャーになれたことに感無量であったよう。「誰かの子がこの映画を観て、『彼はボクみたい』『彼らはボクらみたいにスペイン語を話している』と思ってくれたなら、もうそれだけで受賞した気分です」。

左から『スパイダーマン:スパイダーバース』プロデューサーのフィル・ロード、ボブ・パーシェチェット、ロドニー・ロスマン
photo by Matt Petit / (c) A.M.P.A.S.

ここでも、心に響くメッセージを放ったのは主題歌賞に輝いたレディー・ガガ。

「私はずっと必死で走り続けてきました。大切なのは勝つことではなく、あきらめないこと。もし夢があるなら、つかみ取ってください。大事なのは、何度、拒絶されて、倒れて、打ちのめされたかではなくて、何度、立ち上がって、勇気を出して進み続けるかなのです」。涙ながらのスピーチを共にスピーチするかのように聞いているジェニファー・ハドソンの姿が印象的だった。

そして、主演男優賞を手にしたラミ・マレックは、「小さい頃の自分に、いつかこんな日が来ることを教えてあげたら、カーリーヘアの小さな頭が噴火してしまうだろう」と話したあとに、「(幼い自分は)アイデンティティに悩んでいたから」と告白。「私たちの映画は、ゲイで移民だった1人の人物が、堂々と自分らしく生きた姿を描いています。今晩、その彼(フレディ)と彼の物語が祝されたということは、このような物語が必要とされている証拠だと思います。エジプト系アメリカ人である私自身の物語にも、(新しい章が)刻まれました。皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。

作品賞にノミネートされたタイトルに各賞がばらけて贈られたところに、今回のオスカーの混戦ぶりがうかがえた。

長編アニメーション映画賞にノミネートされた細田守監督、
外国語映画賞にノミネートされた是枝裕和監督もアカデミー賞を楽しんだよう
photo by Phil McCarten / ©A.M.P.A.S.

賞のベクトルも授賞式の行方も紆余曲折であったオスカーへの道。ゴールの景色に納得した人も、そうでない人もいるだろう。だからこそ、監督賞のプレゼンターとして登壇したギレルモ・デル・トロ監督が、封筒を開ける直前に語った言葉が染み入る。

左からギレルモ・デル・トロと『ROMA/ローマ』で監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン
photo by Matt Sayles / (c) A.M.P.A.S.

「このなかに書かれている名前を読み上げる前も、読み上げた後も、5ノミニーの評価は変わらない。皆が情熱を込めた素晴らしい作品なのです」

アワードには勝敗がつきものだけれど、“その年の最高賞”は、映画を観た1人1人がお気に入りの作品に捧げればいいのだと、あらためて思わせてくれた。



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