2019/03/09 06:30

【知ってる?】『猿の惑星』で原作に最も近いのは「ティム・バートン監督版」

※画像はイメージ
Tomohiro Ohsumi/GettyImages

衝撃のラストシーンで、SF映画史に語り継がれている『猿の惑星』(1968年)。1970年代にかけて計5本のシリーズになり、2011年以降に作られた猿の視点で人類との戦いを描いた三部作もヒットしました。

ところで、皆さんご存知でしたでしょうか? 実は2001年に公開されたティム・バートン監督版こそが、最も原作小説の精神を受け継いだ作品なのです。

※各作品のラスト(オチ)に触れている部分があります。映画未見の方はご覚悟願います。

原作小説にタイムスリップは存在しない

1968年に公開された、フランクリン・J・シャフナー監督版の『猿の惑星』の大まかなストーリーはこんな感じです。

長い宇宙航行の果てに、3人の宇宙飛行士がたどり着いたのは、知性をもった猿たちが人間を支配する“猿の惑星”。猿たちに捕らえられた主人公テイラー(チャールトン・ヘストン)は協力者の助けを借りて脱出に成功。猿たちが“禁断地帯”とよんでいる場所に向かいますが、そこで彼は変わり果てた自由の女神像を発見して呆然とします。そう、猿の惑星とは、未来の地球の姿なのでした……。

この衝撃のラストの効果もあって、『猿の惑星』は大ヒット。SF映画の名作と呼ばれるようになりました。その後にシリーズ化されると、『続・猿の惑星』(1970年)、『新・猿の惑星』(1971年)、『猿の惑星・征服』(1972年)、『最後の猿の惑星』(1973年)が公開されています。このシリーズでは、タイムスリップによって過去(1973年のアメリカ)に飛ばされた猿の夫婦が遺した子どもによって、地球の支配権が人間から猿へと移ります。

しかし、原作小説の設定は違います。主人公が降り立った“猿の惑星”は、地球から300光年離れたペテルギウスであり、地球ではないのです。猿たちに危険視された主人公は、命からがら脱出に成功。周回軌道上に待機していた宇宙船で、地球に帰還するのです。この小説『猿の惑星』の作者はピエ-ル・ブール。映画『戦場にかける橋』(1957年)の原作者でもあるフランス人です。

彼は第2次世界大戦で日本軍に捕らえられ、親独のヴィシー政権軍に引き渡されて捕虜になりました。この経験が『戦場にかける橋』に活かされているのですが、同時に戦前はゴム園の監督者として多くの現地人を使役していた自分が、逆に虜囚になってしまったという“立場の逆転”についても考えさせられる結果になり、それが『猿の惑星』のヒントになったといわれています。

ほんのちょっとしたことで立場は入れ替わるかもしれない……。つまり、ブールはSFとしてこの小説を書いたのではなく、『ガリヴァー旅行記』のような寓話だと考えていたのです。

『猿の惑星』のラストを書き換えた人物とは?

この観点でシリーズを振り返ってみると、ティム・バートン監督作『PLANET OF THE APES/猿の惑星』こそが、原作のストーリーに最も近い作品であることに気が付きます。

「リメイクではなくリ・イマジネーション」をうたったこの作品。宇宙で磁気嵐に巻き込まれた主人公レオ(マーク・ウォールバーグ)が“猿の惑星”に飛ばされるというストーリーや、脱出して地球に帰還した彼が見た“ある光景”など、かなり原作に忠実です。

アクション・アドベンチャーの要素を強めるために、猿と人間の軍団の大規模な戦闘シーンを加えるなどの工夫がされたのですが、残念ながらヒットには至らず。シリーズの中では鬼っ子的存在になり、バートン作品の中でもあまり語られることのない映画になってしまいました。しかし、人間の文化や風俗を猿がそのまま真似している、滑稽でシニカルな描写は、原作の精神を継いだものといえるのです。

では、なぜ最初の映画が原作を離れ、このような形になったのか? それは脚色を担当した人を見れば明らかです。

その人の名はロッド・サーリング。人気TVシリーズ「トワイライト・ゾーン(ミステリー・ゾーン)」や「四次元への招待」のクリエイターであり、自らホストとして出演し、小説家でもあった才人。

その特徴はひねりの効いたプロットと、観客をあっと驚かせる意外性のあるエンディングにありました。そんなサーリングですから、単に原作を映画用に書き直すだけでなく、当時の米ソ冷戦による核の脅威を取り入れ、「核戦争によって荒廃した未来の地球」に結末を書き換えたのです。

こうした時代性を取り込む試みは、シリーズを通して行なわれ、『続・猿の惑星』ではベトナム反戦運動、『猿の惑星・征服』では黒人差別とそれに反抗する暴動を思わせる描写があります。

近年の三部作『猿の惑星:創世記』(2011年)、『猿の惑星:新世紀』(2014年)、『猿の惑星:聖戦記』(2017年)は、タイムトラベルを用いない形で『猿の惑星・征服』をリブートした作品。それまでの特殊メイクではなく、モーションキャプチャーによるCGを大胆に使用したダイナミックなアクションを導入して大ヒットしました。

そしてここにも、現在問題になっている、様々な事項に関してのメッセージが込められています。それは民族の対立や移民排斥という形で突きつけられる、様々な差別と分断でした。

映画は常に、“時代を映す鏡”なのです。

(文/紀平照幸@H14)



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