2019/03/28 06:30

なぜ『プリティ・ウーマン』が今も幸福感を与えるのか

Hulton Archive/GettyImages

1990年に公開され、大女優ジュリア・ロバーツを生み出した名作『プリティ・ウーマン』。 全世界で記録的大ヒットとなっただけでなく、90年代からのハリウッドにおけるロマンティック・コメディブームの火付け役となった作品である。

平成も終わりを迎えようとしている昨今、ロマンティック・コメディの数は減少しているが、そんな今だからこそ観たい傑作ロマンティック・コメディの魅力を振り返りつつ、新たなラブコメの誕生を待ち望みたい!

映画史上最も稼いだロマンティック・コメディ

『プリティ・ウーマン』はわずか1,400万ドル(※)という製作費ながら、全世界で約4億6,000万ドル(※)の興行収入を記録。日本でも1990年12月に公開され、1991年の年間興行収入ランキングで堂々の3位(一般社団法人日本映画製作者連盟調べ)を記録する大ヒットとなった。映画史上最もヒットしたロマンティック・コメディであり、2018年にはブロードウェイでミュージカル化もされている。

本作を製作したタッチストーンピクチャーズは、ディズニー傘下の映画製作会社で、『プリティ・ウーマン』は、娼婦が主人公の“R指定を受けたディズニー作品”という珍しい映画でもあるのだ。

あらすじ

ニューヨークを拠点に活躍する大富豪で実業家のエドワード(リチャード・ギア)。仕事のためロサンゼルスに滞在していた彼は友人の車でホテルへ戻ろうとするが、慣れないマニュアル車の運転に戸惑い道に迷ってしまう。困り果てたエドワードがハリウッドの繁華街に車を停車していると、ヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)という娼婦が声をかけてくる。エドワードは彼女にホテルまでの道案内を頼むが、気さくな人柄に惹かれ、一晩300ドルで話し相手になってほしいとヴィヴィアンをペントハウスに招待する。一夜が明け、楽しい時間を過ごしたエドワードは、ロス滞在中の6日間、契約金3,000ドルでパートナーとして過ごすことをヴィヴィアンに提案。家賃の支払いもままならない彼女は喜んで申し出を受け入れる。ゴージャスな生活を送る中でヴィヴィアンは洗練され、エドワードもまた、彼女と過ごすことで人生を見直していくが、2人には別れの日が近づいていた――

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ダークな内容のR指定映画になるはずだった!?

製作当初、ヴィヴィアン役にはメグ・ライアンやミシェル・ファイファー、ダイアン・レインなど名だたる女優の名前が候補として挙がったが、彼女たちは娼婦という役柄に難色を示す。

そこで抜擢されたのが、女性群像劇『マグノリアの花たち』(1989年)で注目されていたジュリアだった。彼女は初の主演に大喜びするが、母親に“娼婦役”と言えなかったようで、「ディズニー映画の主演よ!」と伝えたとか。

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また、大富豪で実業家のエドワードを演じたリチャード・ギアは、本作のオファーを受けた際あまり乗り気でなかった。しかし、ヒロインに決まっていたジュリアに会ったことで気が変わり、出演をOKしたそう。

公開から25周年を迎えた2015年、アメリカのテレビ番組で、監督とキャストたちが再集結し、当時のエピソードを披露している。

ジュリアは当時出演を渋っていたリチャードに、「お願い、イエスと言って」というメモを手渡したのだとか。また、初期段階では、娼婦のドラッグ依存症を扱ったシリアスな内容になる予定だったそうだが、ジュリアとリチャードが主演に決まったことでハッピーなストーリーに変更されたというエピソードも明かされている。

ジュリア・ロバーツの魅力が爆発!

本作は、オードリー・ヘプバーン主演の映画『マイ・フェア・レディ』(1964年)が元ネタになっている。下町生まれの粗野で乱暴な女性をレディに仕立てることができるか? という賭けを行った上流階級の男性が、やがて身分違いの恋に落ちていくというのが大筋のストーリーだ。

元ネタの時代背景には階級社会があるが、『プリティ・ウーマン』の舞台は現代。 ヒロインは賭けの対象ではなくなり、階級の違いは“大富豪と娼婦”という設定に置き換えられ、元ネタの魅力をうまく活かしたラブ・ストーリーに仕上げられた。

街角の娼婦だったヴィヴィアンがゴージャスに洗練されていく姿は非常に爽快で、全編にわたってジュリアの美しさとユーモアセンスが爆発。本作で米アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされており、女優ジュリア・ロバーツの鮮烈な輝きが刻まれた作品と言えるだろう。

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主題歌は、1964年に発表され、日本でもCMなどで頻繁に使用されているロイ・オービンソンの名曲「オー・プリティ・ウーマン」。同曲をバックに、美しく変貌したヴィヴィアンが高級店立ち並ぶロデオドライブを闊歩するシーンはあまりにも有名だ。

リチャード・ギア演じるエドワードも大きな見どころ

ジュリアに隠れがちだが、本作を観直すと、リチャード・ギア演じる実業家エドワードの成長が丁寧に描かれていることに気付く。

一見優しそうなビジネスマンのエドワードだが、素顔は弱った会社をバラバラにして売りさばく血も涙もない実業家。父親の最期を看取ることもなく仕事に没頭し、恋人は仕事の道具程度にしか思っていない人物である。

しかし、これまで彼に近づいてきた女性とは正反対のヴィヴィアンが発する言葉の一つ一つが胸に刺さったエドワードは、本当に大切なものに気づいていく。だからこそエドワードは、映画のラストで、仕事でも人間関係でもこれまでにはない思い切った行動に出る。

豪華絢爛なセレブ生活のシーンが印象的な本作だが、血の通ったドラマが積み重ねられているからこそ、ハッピーエンドを心から喜べるのだろう。

そこにヴィヴィアンにマナーを叩き込むホテルの支配人やリムジンの運転手、憎たらしい弁護士や高慢ちきなアパレル店員たちの存在が加わったことで、『プリティ・ウーマン』は奇跡のエンターテイメントに仕上がった。

ロマンティック・コメディが再び観たい!

CGによってなんでも映像化できてしまう昨今、劇場では体感型のエンターテイメントが主流。ネット配信によって気軽に映画を観ることができる環境が整ったためか、劇場公開されるロマンティック・コメディは少なくなってしまった。

時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、『プリティ・ウーマン』のような作品を観終わった後の何とも言えない“幸福感”は、ロマンティック・コメディでしか味わえないもの。

『プリティ・ウーマン』のようなハッピーな気分になれる作品が再び生まれることを願いつつ、未見の人はもちろん、久しく観ていない人も、ぜひこの機会に見直して欲しい。きっと新しい発見があるはずだ。

※…box office mojo調べ

文=稲生稔/SS-Innovation.LLC



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