2019/03/08 11:00

「特撮ヒーロー」は大人にこそ届けたい“すべて”が詰まっている

『ライズ ダルライザー –NEW EDITION-』3月9日より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開(C)2018 Dharuriser Planning

2019年に入り、特撮ヒーローが俄然注目を集めている。

平成仮面ライダー20作記念となった正月映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(2018年)の大ヒットはもとより、特撮ヒーローおたく女子の日常を描いたNHKドラマ『トクサツガガガ』が特撮ファンのみならず一般にも大いに共感されて評判となっている。

またTBS系ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは人質です―』の中で生徒を人質に校舎に籠城する担任教師(菅田将暉/彼は『仮面ライダーW』の主演スターでもある)が、かつて特撮ヒーローのスーツアクターを務めていたという設定が、ドラマの展開に大きな影響を及ぼし始めている。

一方では最近は全国各地でご当地ヒーローが生み出されているが、こんな世知辛い世の中だからこそ、改めてヒーローが待望されているのだろうか?

『トクサツガガガ』の中に「大事なことはすべて特撮が教えてくれる」といった名台詞が出てくるが、今の時代を生き抜くため、みんな大事なものを今一度確認したいのかもしれない。

ちなみに今回ご紹介する『ライズ ダルライザー』だが、そもそもはご当地ヒーローを題材にしたものだが、これが特撮ヒーローさながらの大事件に巻き込まれていくという実にユニークな作品である。

そう、今やヒーローは日本全国どこでも誕生できるのだ!

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ9

館アキヒロ/ダルライザー役の和知健明(左)と妻・ミオ役の桃奈

ご当地ヒーローが地元・白河市で巻き込まれる大事件!

『ライズ ダルライザー』の主人公は、売れない役者アキヒロ(和知健明)。貧乏ながらもなんとか舞台活動を続けてきた彼だが、妻ミオ(桃奈)の妊娠を知って生活のために実家のある福島県白河市に帰省し、地元の警備員として働くことに。

しかし役者の夢をあきらめきれないアキヒコは、あるとき町おこしのキャラクター・コンテストにダルライザーなる地元名産のダルマをモチーフにしたデザインを出品。コンテストは落ちたものの、キャラそのものは話題を集め、いつしか彼自身が演じるダルライザーはご当地ヒーローとして市民の間で認知されていく。

そんな折、街ではパーソナルシートなるハイテク・ガジェットが無料配布されていた。アキヒロもそれを着用してみたことがあったが、それ以来不思議な夢を見るようになっていた。そしてやがて街の人々は何者かに操られるように、他者を排斥するヘイト活動を激化させていく……。

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ8

本作はこのように役者の夢破れて地元に戻った青年が、ご当地ヒーローになることで心の再生を……というだけなら、まあ割かしよくある人情話ではあるのだが、実際に特撮ドラマまがいの大事件が発生し、そこに主人公が否応なく巻き込まれていくという(しかもヒーロー・スーツ姿で!)というのが大きなミソなのだ。

果たしてパーソナルシートの秘密とは? アキヒコの夢に出てくる謎の女性の正体は? そして彼は愛する妻とやがて生まれてくる子供を護れるのか?

こういった事象を振り返っていくことで、実は本作が愛と勇気を謳いあげた“ヒーロー”映画であることが容易に理解していただけることだろう。

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ7

大人の胸にも純粋に響く「単純明快な教え」

実はこの作品、ダルライザーを演じる和知健明が自身の半生をモデルに原作とプロデューサーも務めたもので、監督・脚本も自主映画の世界で活動してきた佐藤克則で、これが初の長編映画となる。

クラウドファンディングで制作資金を集め、キャストの大半は和知の地元・福島県白河市の市民。そんなご当地インディペンデント映画ではあったのだが、2018年に都内で限定上映されるや、作り手の情熱とそれに見合った面白さに多くの観客が興奮し、正式な劇場公開を求める声が高まり、このたび再編集を施したニュー・バージョンを完成させ、全国公開に向けて動き出した次第なのだ。

実際、ご当地ヒーローを主人公にした地方発信のドラマは多数あり、それなりの支持を得たものもいくつかあるが、ここまでヒーロー性を徹底させたものは少ないのではないか。

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ2

まず同年度の第1回タイ国際映画祭でプロダクション・デザイン賞を受賞したほどのスーツのかっこよさ。

そしてアクション・シーンのために、何と『ダークナイト』(2008年)、『アウトロー』(2012年)などに採用された護身術“KEYSI”(ケイシ)の生みの親であるフスト・ディエゲスを日本に招いてのアクション指導!(ご本人も出演し、自らアクションを披露してます)

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ4

アレハンドロ役を演じたフスト・ディエゲス(左)と館アキヒロ/ダルライザー役の和知健明(右)

ちなみにヒーローの名前ダルライザーは、白河市の名産“ダルマ”に起き上がるという意味の“ライズ”を組み合わせたものだが、これがまさにダルマのように起き上がろうとする主人公の人生を示唆し、ひいては作品そのもののテーマを巧みに訴えたものにも成り得ている。

もちろん巨額の制作費で作られたものではないので、特撮的な見せ場に限界はあるものの、逆に今のCG技術を駆使すれば低予算でもここまで魅せられるという事実にこそ目を向けてもらいたい。

ライズ ダルライザー –NEW EDITION- サブ1

何よりも「あきらめるな!」「立ち上がれ!」「悪いことをすれば必ず罰を受けるのだ!」「正義は勝つ!」といった、まさに子どもの頃に見た特撮ヒーローたちの単純明快な教えは、現代社会の複雑な諸事情を鑑みたものへと、深く訴えられ、それは童心をなくして久しい大人の胸にも純粋に響くものがある。

やはり、大事なことはすべて特撮ヒーローから教わるのだ!

『トクサツガガガ』の小芝風花(主人公の叶ちゃん役)や『3年A組』の菅田将暉にもぜひ本作を観ていただき、感想を聞いてみたいと思う。きっと共感してくれるはずだ。

(文・増當竜也)

(C)2018 Dharuriser Planning

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