2019/03/19 06:30

ブラック・ムービーの礎を築いた!鬼才スパイク・リーの功績

(『ブラック・クランズマン』3月22日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開)
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第71回カンヌ国際映画祭のグランプリに輝き、先日の米アカデミー賞で脚色賞を受賞したスパイク・リー監督作『ブラック・クランズマン』(3月22日公開)。白人至上主義を掲げるアメリカの秘密結社<KKK(クー・クラックス・クラン)>に潜入捜査を行った、大胆不敵な黒人刑事による回想録の映画化です。

この信じられないような実話をユーモア交えてスリリングに描いた監督のスパイク・リーは、ブラック・ムービーの先駆者として知られています。

大学在学中から映画監督としての才能を発揮

ニューヨーク大学ほか複数の大学に通い、映画制作やマスコミ学について学んだスパイク。在学中に制作した『ジョーズ・バーバー・ショップ』(1983年)は、全米の大学生・大学院生を対象とした学生アカデミー賞で大賞を受賞するなど、高い評価を獲得しました。

さらに、商業デビュー作となったラブコメディ『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』(1986年)がカンヌ国際映画祭で上映され、続く秀作『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)がアカデミー賞脚本賞にノミネートされるなど、早くからその存在感を世界に示しています。

若き才能として注目されたスパイクは、盟友デンゼル・ワシントンを主演に伝記映画『マルコムX』(1992年)を製作。この作品は代表作の1つとなりますが、新たなマイルストーンとなった『ブラック・クランズマン』では主役の黒人刑事ロンをデンゼルの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが演じています。

パワフルで衝撃的なスパイク・リー作品

アフリカ系アメリカ人が直面する実情をリアルに映し出し、アメリカが抱える差別意識を浮き彫りにしてきたスパイク。彼の作品の中に再三登場する「Wake Up!」と、「Black Power!」という反骨の叫びは、今なお続く差別と偏見へのアンチテーゼとして、鋭い刃物のように観る者の心に刺さります。

その一方で彼の作品には厳しい状況を冷静に見つめ、シニカルな笑いに変える独特のユーモアも。最新作のプロデューサーを務めたジョーダン・ピールは、「『ブラック・クランズマン』は彼の作品との共通点がいくつもある。どこか笑える雰囲気でハラハラして、迫力がある」とコメント。スパイク本来の持ち味が生かされている注目作であると太鼓判を押しています。

スパイク・リーの後進たちが活躍中!

スパイクはこれまで数々の衝撃&話題作を世に送り出し、ブラック・ムービーの礎を築いてきました。今では多くの黒人監督が良質なブラック・ムービーを製作し、高い評価を得ています。

ライアン・クーグラーが手掛けた『ブラックパンサー』(2018年)は、マーベル・スタジオ史上最高傑作との呼び声も高く、本年度の米アカデミー賞ではアメコミ映画として初ノミネート(作品賞など7部門)され、作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞を受賞しました。

またバリー・ジェンキンス監督作『ムーンライト』(2016年)は、第89回アカデミー賞で作品賞含む3冠を獲得。本年度の米アカデミー賞でも『ビール・ストリートの恋人たち』(公開中)が3部門にノミネートされ、助演女優賞(レジーナ・キング)に輝いています。

そして前述のジョーダン・ピール監督作『ゲット・アウト』(2017年)は昨年米アカデミー賞・脚本賞を受賞、低予算ながら大ヒットを飛ばしています。

黒人歴史家の杏レラト氏は現在活躍中の30・40代の黒人監督について、スパイク作品が当たり前のようにあった時代に生まれ育ち、深い影響を受けていると『ブラック・クランズマン』に寄せたコラムの中で言及。さらに「ピール監督は、“10代のころに『ドゥ・ザ・ライト・シング』が公開され、映画監督になるって12歳の時に思ったんだ”と語っている」と、スパイクがピールに与えた影響について指摘しています。

軽妙なタッチと手に汗握る緊迫感が絶品『ブラック・クランズマン』

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そんなスパイクの最新作『ブラック・クランズマン』は、『オールド・ボーイ』(2013年)以来5年ぶりとなるリアル・クライム・エンターテインメントです。

1970年代の米・コロラド州。街で初めての黒人刑事ロン・ストールワース(ジョン)は、書類管理担当から潜入捜査官に立候補します。黒人解放運動にまい進する過激なブラックパンサー党への潜入捜査を進めるかたわら、電話を通じてKKKとコンタクトを開始するロン。顔が見えないことをいいことに、電話口で激しく黒人蔑視発言をするロンの姿を、ポカンと見つめる白人の同僚刑事たちの姿が笑いを誘います。

本作では70年代の人種差別の実情を描く一方、再び不寛容の波が押し寄せる現代アメリカに向けて放たれた痛烈な批判も映し出します。そんなアメリカが抱える根深い痛みをメッセージとして訴えながらも、軽妙なタッチと手に汗握る緊迫感が本作を絶品クライム・サスペンスに仕上げています。

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近年ますます注目されるブラック・ムービー。この春のお出かけ候補の1つに、ホットな話題作『ブラック・クランズマン』の劇場鑑賞を加えてみてはいかがでしょうか?

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)



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