2019/03/27 12:00

白石和彌監督が映画『麻雀放浪記2020』をiPhoneで撮影したわけ

映画『孤狼の血』(2018年)や『凶悪』(2013年)などハードボイルド作品を多く手掛けている白石和彌監督が今回手掛けたのが、日本映画の名作『麻雀放浪記』のリメイク作『麻雀放浪記2020』。ブラックコメディという今作とこれまでのハードなアウトロー作品には、「名もなき人たち、それも底辺や弱者に焦点を当てたい」という同じ思いが詰まっていました。監督に、映画を撮るうえで大事にしていること、フィクションとノンフィクションの魅力について語っていただきました。

カメラの重量によって映像が変わる。だから今回はiPhoneでポップに撮影しました。

『麻雀放浪記』といえば、1984年に監督・和田誠&主演・真田広之で映画化されていますが、リメイクしようと思ったのはなぜですか?

10年ほど前に斎藤工さんが色川武大(阿佐田哲也のもうひとつのペンネーム)さんの原作映画『明日泣く』(2011年)で「麻雀放浪記」の原作者・阿佐田哲也さんを演じているんですよ。そのときにいつかは『麻雀放浪記』をリメイクできれば、という話になったみたいですね。

僕はそのずいぶん後にお話をいただいたんですが、1984年の映画は邦画史に残る大傑作であってそれに勝てるわけがなく、正直リメイクする意味ってなんだろうな?と思いました。

ただ、主人公の坊や哲(ぼうやてつ)が2020年にタイムスリップしてくるという設定が出てきて、最初は半笑いだったんですが、色々話していると昭和な男が現代にきたら今の社会の歪みなどをコメディタッチで描けるんじゃないかな?と思い始め、監督をすることにしました。

コメディなんですね。

そうですよ! 昔の麻雀ってすべて手で牌を積んでいたのでイカサマも多かったのですが、今は全自動で積んでくれるからイカサマができない。だったらそれを哲がどうするんだ?という話ですから。

いまでこそ麻雀は頭脳ゲームでスポーツだって言われていますが、哲にとって麻雀とは博打をするためのツールでしかなくて生業だったわけですよ。なので必然的に麻雀するのに金を賭けないなんてありえない!となる。そして当たり前ですが賭博法違反で捕まります(笑)。

やっぱり彼にとって現代は生きづらいんです。でもそんな中、当時よりも便利な現代に色々順応してアプリの麻雀で死闘を繰り広げたりするんで、そんな姿を笑ってもらえるといいなと思っています。

白石監督のイメージといえば“アウトロー”なイメージなので、コメディとは意外でした。

『孤狼の血』のような作品は一部の熱烈なファンがいてくださいますが、やっぱり一般の方はなかなか見に来てくださらない。なのでコメディもやってみたいなという気持ちはありました。ただ、設定がぶっ飛び過ぎて、今までの作品とあまり変わらなくなったというのはあるかもしれませんが(笑)。

日本でのハードな映画は、北野武監督の映画『アウトレイジ』シリーズとかはありますが、多く作られていないというのが現状です。とはいえ、『孤狼の血』でこういう作品も面白いと感じてくださった方もいるわけで。アウトロー路線の作品をつくっていきつつ、新たなこともできればと思っています。

新しいことといえば全編をiPhoneで撮影したんですよね。

こだわって最後の方は意地になって撮っていました(笑)。哲は2020年の未来にくるので、少しのSF感とか、昭和な男から21世紀を見たときの違和感を伝えたかったんですよ。そしてできた映像を見るとやっぱり映画のカメラとは違います。

これはもともと僕の悩みのひとつだったんですけど、狙ったわけではないのにどうしても映像が昭和っぽくなってしまう。変な緊張感が漂っていて全然ポップじゃないんです(笑)。『凶悪』や『孤狼の血』だとそこが良さになるのですが、今回はコメディなのでそんなに重い映像にしてもな…というのがどこかにありました。

カメラと映像って、実はそのカメラの質量と映像の重さが比例するんです。映画のカメラで撮ったらそれなりに重い画になるし、一眼レフだと少し軽めになる。そういう意味でiPhoneは一番軽いカメラなのでこれを使い、軽くてポップな画のコメディにしようとしたんです。

(インタビュー前編はここまで)

取材日:2019年2月19日 ライター:玉置 晴子



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