2019/04/03 06:30

国を超えても魅了する『いま、会いにゆきます』とは何なのか

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

2004年。今から、もう15年前。1本の映画が生まれた。

『いま、会いにゆきます』。

既に連続ドラマの世界では最前線、エース級の才能を発揮していた土井裕泰ディレクターが、脚本に盟友・岡田惠和を迎え、満を持して放った映画監督デビュー作。

観客の心を熟知した土井と岡田が、その叡智を結集して創り上げたこの映画は瞬く間に人々の感情を揺さぶり、記録にも記憶にも残る名作に。当時は「いま、会い現象」と呼ばれるほどのムーブメントになった。

土井は『映画 ビリギャル』(2015年)、「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年)、「カルテット」(2017年)などで、岡田は「最後から二番目の恋」(2012年)、「ひよっこ」(2017年)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)などで、もはや日本中で知らぬ者はいないほどの演出家と脚本家として君臨。この二人は、昨年もテレビドラマ「この世界の片隅に」でコンビを組んでいる。

そんな土井&岡田の結晶作、市川拓司の同名小説を原作とした『いま、会いにゆきます』が、韓国でリメイクされた。

『Be With You 〜いま、会いにゆきます』(4月5日より公開)。

これが、日本版『いま、会いにゆきます』へのリスペクトにあふれた仕上がりになっている。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

「号泣必至」のストーリーは未だ色褪せず

夫・ウジンとまだ幼い息子を残して、この世を去った女性・スア。息子は、雨の日に母親が現世に帰還し、梅雨の季節だけは一緒にいてくれるという「物語」を信じ、待ち続ける。そして1年後、奇跡は起きた。スアが記憶喪失の状態で戻ってきたのだ。半信半疑だったウジンも事態を受け入れ、一家3人の生活が始まる。

自分に夫がいたこと、息子を産んだことの実感はなかったものの、次第にその暮らしに馴染んでいくスア。息子は雨が降り続けることを祈り、ウジンは自分自身の「はつ恋」が今再び始まったことに感極まる。しかし、別れのときは刻一刻と近づいていた……。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

……と、あらすじを綴るだけでも涙がこぼれそうになる。2004年、「号泣必至」と言われたストーリーの感触は今もまったく色褪せていないことが、この韓国版からは伝わる。

韓国映画のイメージが変わる

韓国映画のイメージは観客それぞれで異なるはずだが、どこか大仰なドラマティックさを想起するひとも多いのではないか。本作に出逢うと、おそらくその印象は変わると思う。

土井と岡田が創り上げた『いま、会いにゆきます』は、日本の伝統芸能「能」にも通じる幽玄な世界観であり、能が幽霊や亡霊を大切に扱ってきたのと同じように、ヒロインの束の間の復活をかけがえのない時間として浮かび上がらせた。つまり、きわめて日本的な情緒に彩られた一作だ(娯楽のプロ中のプロである土井と岡田が、アートではなく、あくまでもエンタテインメントとして昇華していたからこそ、あれだけの大ヒットとなったわけだが)。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

『Be With You 〜いま、会いにゆきます』は、そうした和の感性をできるだけ崩さず、実に丁寧に、繊細な情緒を、韓国のフィルターを通すことでよみがえらせている。

そう、ヒロインが「よみがえる」のと同じように、『いま、会いにゆきます』の魂がよみがえっている。そんな韓国映画界のナイーヴなアプローチに胸打たれるのである。

素晴らしきかな、ギャップ萌え

日本版『いま、会いにゆきます』は、中村獅童と竹内結子が夫婦を演じた。韓国版ではドラマ「ごめん、愛してる」(2004年)のソ・ジソブと、『私の頭の中の消しゴム』(2004年)のソン・イェジンが体現している。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

「中村獅童とソ・ジソブでは随分開きがあるのではないか」。そう感じる韓国ドラマ&映画ファンもいるかもしれない。だが、それはルックスだけの話で、少し冷静に考えれば、なぜ、ソ・ジソブなのかは理解できるはずだ。

ウジンは病弱で、愛する妻に先立たれ、息子を育てることだけを拠りどころに、依然、失意の日々を送る、ある意味「弱い」キャラクターだ。ソ・ジソブが近年演じてきた骨っぽく男臭い役どころからはかなりギャップがあるはず。本作の妙味はまずそこにある。

歌舞伎俳優である中村獅童は当時、『ピンポン』(2002年)で強烈な個性を発揮し、一躍、アクの強い人気者になった。そんな獅童が、「繊細でおとなしい」人物に扮したことが、観客にとっては想定外の情緒につながったのである。

つまり、“ギャップ萌え”。パブリックイメージとは反対のキャラクターを表現することで、ソ・ジソブはあのときの中村獅童のような意外性を達成している。「そう、こんなソ・ジソブも見たかった」。ファンならそう思うのではないか。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

ビジュアルよりも個性に着目した配役

『いま、会いにゆきます』という物語の本質も、“ギャップ萌え”にある。

復活を遂げたヒロイン・スアは、記憶を失っていることから、自分のことがよくわからないままでいる。息子や夫からは大歓迎されるが、彼女自身は事態が飲み込めず、当初はクールな対応しかできない。

スアは、彼女にとっては「夫であるらしい」男性・ウジンに問う。「お互い好きで結婚したのよね? 馴れ初めを教えて」。ウジンにしてみれば、こんなクエスチョン自体、傷つくことに他ならないが、二人の出逢いから絆の成就にいたるまでの、決して平坦ではなかった道のりを語って聞かせる。そのうち、スアの様相は変化していく。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

これはなんだろう。そう考えると“ツンデレ”という言葉がすぐに思い浮かぶ。

『いま、会いにゆきます』のヒロインは典型的なツンデレである。復活した当初、冷ややかなキャラだったからこそ、夫の萌え&燃えに拍車がかかる。これはほとんど全人類共通の普遍だろう。女も男も、ツンデレには弱い。

竹内結子とソン・イェジンもまた、一見、タイプの異なる女優に思える。だが、このヒロインの本質をよーく見定めてほしい。ツンデレがはらむ、硬さと柔らかさ。竹内も、ソン・イェジンも、異なる感触を地続きで表現することに長けた演じ手だ。

(C)2018 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

キャストのビジュアルではなく、演者の個性、才能を見極めた上でオリジナル版に近づけていく手法は、『いま、会いにゆきます』にふさわしいナイーヴなものである。

『いま、会いにゆきます』ファンも、ソ・ジソブやソン・イェジンのファンも、きっと全員が納得、しみじみしてしまう、これは新たなる名作なのである。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)

 



【関連ニュース】

今日の運勢

おひつじ座

全体運

仕事で結果が出やすい日。今の作業に一区切りつけて、これから...もっと見る >