2019/02/17 15:00

【佐々木俊尚コラム:ドキュメンタリーの時代】「盆唄」

「盆唄」の一場面 (C)2018テレコムスタッフ
「盆唄」の一場面 (C)2018テレコムスタッフ

 ドキュメンタリーであり、舞台は原発事故のあとの福島県双葉町であり、テーマは伝統芸能をどう保存していくか。この要素だけを並べると、「なんだか重苦しそうな映画だなあ」と腰が引けてしまう人は少なくないだろう。私もそう感じたが、しかし本作の監督は「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」の中江裕司である。まさか予想通りのステレオタイプな映画は作らないだろうと、一縷の望みを抱いて鑑賞してみた。

 そして観終わった感想は──。「まさか、このテーマでこんな素晴らしい音楽映画が可能になるなんて!

 昨年から今年にかけては音楽映画が豊作で目白押しだ。昨年の「アリー スター誕生」から「ボヘミアン・ラプソディ」、それに日本でようやく公開となった「ノーザン・ソウル」、ドキュメンタリー分野では、「ホイットニー オールウェイズ・ラヴ・ユー」「私は、マリア・カラス」。本作は、その大豊作の日々の真打ちとしてやってきた。

 本作の中心的な登場人物は、帰還困難区域になった双葉町に帰れないまま他の土地で避難生活を続ける横山久勝さんとその仲間たちである。彼らが、双葉町の伝統的な盆踊り「双葉盆唄」を存続させようとする話が軸になっている。この横山さんと仲間たちの笑顔やたたずまいが、何とも言えず素晴らしい。単純な悲劇として描くのではなく、かといって非現実的な希望を語るのでもなく、ただ彼らの日常を追い、そこからこぼれ出てくる素敵な表情をカメラが捉えていく。

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