2017/09/10 06:00

石川さゆり『天城越え』支え続けた母と娘の女3人暮らし

 
気温35度を超す猛暑日となった7月19日。JR浜松駅に隣接する浜松アクトシティ大ホールは、つめかけた観客で立すいの余地もない。会場のキャパシティは2,300人。三味線の音とともに場内が暗転。桜色の着物をまとった石川さゆりさん(59)の姿がステージ中央に浮かび上がると、大拍手とともに「さゆり~」コールが巻き起こる。石川さんの出世曲『津軽海峡・冬景色』から、コンサートは始まった。
 
「今年の夏は暑いですね。東京は昨日、ひょうが降ったんですヒョ~(笑)」
 
舞台の背景には「45th」の文字が。続いて、これまでリリースした121枚のシングルジャケットが次々に流れた。
 
「みなさま、『そうそう、この歌ね』と思いだしてくださっているのではと思います。デビュー5年目で『津軽海峡・冬景色』がヒットしました。そういった、たくさんの方に聴いていただいた歌だけでなく、知る人ぞ知る歌も、本当に大切な曲ばかりです」
 
石川さんは今年がデビュー45周年。3月25日のデビュー記念日には、生まれ故郷の熊本城・二の丸ステージで、『百年の抱擁』を歌い、昨年の熊本地震から立ち上がる熊本市民にエールを送った。
 
「45周年なんて言うと、自分でも驚いてしまいます。自分の好きな道ですが、やはりみなさんのご声援があってのことです」(石川さん・以下同)
 
'72年、テレビドラマでデビューし、'73年、『かくれんぼ』で歌手デビュー。'77年の『津軽海峡・冬景色』では、日本レコード大賞歌唱賞、FNS歌謡祭グランプリをW受賞。スターダムにのし上がった石川さん。その後も『能登半島』('77年)、『天城越え』('86年)、『風の盆恋歌』('89年)、『浜唄』('12年)と大ヒットを飛ばす。結婚は'81年。結婚の3年後、長女・佐保里さんを出産。母になった。
 
「妊娠7カ月いっぱいまで仕事をして、出産後3カ月半ほどで復帰しました。影も形もなかった人間が、自分の体の中で成長して生まれるということを、私はすごく楽しみました。心臓の音を2つ聞くことができるのも、人生でいましかないんだなと、その心音を録音しておいたんです。出産後、夜泣きをしたとき、それを聞かせると泣きやむんですよ。『なんていとおしいんだろう。やっぱりこの子は、私の体の中から生まれた子なんだ』と、感じながら、日がな一日、日の長さを感じて過ごす。そんな生活がすごく楽しかった。だって、子どものころから、私はずっと家にいたことなんてなかったんですから」
 
子どもを持ったことで、母の偉大さも改めて感じた。
 
「母にはかなわないなあと思うことだらけでした。子育てって、もう一度、生き直しができることなんだなあと思いましたね。この季節には、こんな花が咲いて、こんな虫がいて、って公園で娘にひとつずつ教える。自分が子どものときには、聞き飛ばしていたことを、子どもを持ったことで、もう一度、体験して生き直しているんですね」
 
'89年に離婚してからは、地方でコンサートがあっても、スタッフだけを現地に残して、日帰りで東京まで往復する日々が続いた。
 
「子どもが朝起きると、第一声で『おかあさ~ん』と、親を捜しますから、朝起きたときだけは絶対にいてあげたいと思いました。離婚したとき、娘は4歳。私がいない間は、シッターさんをお願いしましたが、やっぱりかわいそうだなという思いが残って。両親が家の裏に引っ越してきてくれたんですね。その後は2世帯住宅で、一緒に暮らすようになりました」
 
父(智さん)はすでに他界し、現在は、母・様子さんと娘、女ばかりの3世代で暮らしている。
 
「娘は、おからとか、ひじきとか、私より上手なんですよ。おばあちゃんに教わったんでしょうね」
 
母に支えられ、娘から刺激を受けて、いまの石川さんはある。3世代で暮らす家で日々、繰り広げられるささやかで温かな日々が歌手・石川さゆりを支えている。
 
「私、歌のために生きたいなんて考えたことはないんです。でも、年を重ねて、自分の体の中からどんな声が出て、みなさんにどんな歌が届けられるか、やってみたい。そのためにも歌手・石川さゆりである前に、ひとりの女性として、娘として、母として、普通の生活をつくっていることが大事なんです」
 
デビューから45年。歌一筋にも見えた石川さんだが、ここ数年は、震災被災地の支援の活動も活発だ。
 
「私は、いつも いま なんです。限りなく、とめどなく。いま、何が気になることなのかということを、感受し、変化していきたい。ひとつに固まりたくないんです」
 
いまを感じ、いまを生きる。その思いが、石川さんを被災地支援に駆り立てていた。東日本大震災から1年後、デビュー40周年記念シングル『浜唄』をリリース。その歌詞には、被災した宮城県東松島市の大曲浜獅子舞の浜甚句を一部、取り入れている。昨年4月、故郷・熊本が甚大な地震に見舞われると、石川さんは何度も故郷に足を運び、今年の8月20日、大西一史市長から「復興元年特命大使」に任命された。そして今年7月24日に発売された『東京五輪音頭2020』の歌唱を担当。
 
石川さんは いま を楽しんでいた。ズバリ、再婚は? 単刀直入に質問すると、「そんなのって! 私にもわかりません。いつ、どんな出会いがあるかわからないし」と、少女のような驚き方で目をみはった。
 
「でも、今年とか来年というスパンでは、いまの家族がいちばん。母と娘ですね(笑)。母は、明るい人で『おっはよう』『おはこんにちは!』って、朝から心地よいメロディで言うんです。うちの玄関には、母が座れるスペースがあって、仕事に出るときは、いつもそこに座って『行っていらっしゃい』って言ってくれる。あの母の声がいまもわたしの支えです」

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