2017/06/28 13:00

上戸彩「誰かのために生きることで輝く」という妻・母としての模範回答と、小林麻央をめぐる視線の変化に共通するもの

6月10日から公開中の主演映画『昼顔』が成績好調の上戸彩さん(31)が、同作公開に際して受けたインタビュー記事を読んだ。件の記事は毎日新聞に掲載されたもので、タイトルは『<上戸彩>女性が輝き続ける秘訣は「誰かのために生きること」』。このタイトルを見ただけで「ウッ」となり、これは絶対メンタルに良くないと思ったが、怖いもの見たさでついついタップしてしまった(子どもと四六時中一緒だった今週末、寝ている子どもを抱きかかえて電車に乗っていた時のことだ。そして読み終わると一気にどんよりした気持ちになって、自分の肩にのしかかって眠る我が子の身体がより一層重く感じられた)。

上戸さんはまず女優業について意欲を語り、話はプライベート事情に移行していく。「休日は完全に子どもタイム」で親子でゆったりと過ごすことが多いが、もし一人で過ごせる休日があるなら「高級なエステに行きたいですね。何から何まで癒やされて1日中ゆったりできるエステに行きたいです」(ダイエットに成功したスタッフに高級ホテルのエステをプレゼントしたそうで、一緒に行きたいとのこと)。いいなあ高級エステ、などと油断していると、次の言葉に思わずのけぞる。女性が年齢を重ねても輝き続けられる秘訣について聞かれ、彼女はこう答えている。

「誰かのために生きることかな。私は昔から家族だったり、友達だったり、自分のために頑張ったことってないような気がします。これをしたら家族や友達が喜んで、何か(自分にも)ご褒美があると思っていつも頑張っているから」

完璧だ。彼女のこの答えこそが、まさに、今も昔も世間が「女性」や「母」や「妻」に求めている“理想”であり“あるべき姿”であり“正解”ではないだろうか。そしてこれを記事では<深い答えが返ってきた>と。誰かのために、が、深いのかぁ。

思えば、“タレント・上戸彩”の価値観はずっとぶれていなかった。アイドル女優として人気を博すようになった10代の頃から、ドラマやCMにほぼ絶え間なく出演していた20代を経て、結婚・出産を得て仕事復帰を果たした30代に突入した現在も、インタビューなどでは常に一貫して「家族が大切」である姿勢を見せている。(ひょっとしたら事務所の戦略もあったのかもしれないし、全部が全部彼女の本心なのかこちらには知る由もないが)一般的に見て、思春期の頃からずっと発言の筋がぶれていないこと自体、相当すごいと思う。今回のインタビューでも、おそらくそのぶれない価値観を語ったに過ぎないのであろう。

私は上戸さんの「誰かのために生きる、家族や友達のために頑張る」という価値観を否定しない。それもひとつの人生であり、生き方である。正直共感はできないし、自分はそういう生き方をしたいとは全く思わないけど、上戸さんのような軸を持って生きることも当人の自由である。それはそれ、これはこれ。だけどそれを私は“完璧な正解”だと思ってしまった。彼女のような価値観を、“美しき女性像”“素晴らしき母親像”であるとして、無条件に賛美・強要するような世間の空気を肌で感じるからだ。つまり、「誰かのために生きるなんてまっぴらだ」という価値観は不正解。

「子を持つ女性(要は母親)」は、当然のように自己犠牲精神や奉仕精神を求められる。そのことは、匿名の誰かの意見として提示されるインターネット掲示板(および、まとめサイト等)で広く可視化されたと思う。虐待やネグレクトしているわけじゃなくても、母親がエゴや欲望に素直になった瞬間を捉えては“ダメ母烙印”を押す“世間”が顕在化している。山田優然り、辻希美然り、安藤美姫然り。その決まり文句は「子どもがかわいそう」「子どもによくない」。10代の頃から好感度抜群だった上戸彩さんですら、2015年12月、産後数カ月で生番組の司会を務めた際には「旦那さんの稼ぎがあるのにこんなに早く復帰するなんて」とバッシングの声が上がったし、先日も他紙(スポニチアネックス)のインタビューで家族愛を語ったところ「育児優先は当たり前」とボヤ騒ぎ……。そしてこういった世間の抑圧が“著名人に対するネット批判”に限られてはいないことを、私自身も実際に妊娠・出産して育児をするようになってから痛感した。

子どもを預けている認可保育園で、「子どもにとって母親と過ごす時間は大切」と言葉をかけられると、正直つらくなる。子どもにとっては過ごしやすい良い保育園なのだけれど、私は正直、育児そのものより、世間(あるいは身近な人)の監視と抑圧がよほどストレスだったりする。先日亡くなった小林麻央さんに関する様々な見方からも、「女・妻・母がどうあるべきだと思われているか」がわかってしまう。闘病を公表し、ブログを開設して写真や文章を投稿していた頃、「ブログなんかより子どもを見ろ」という声が大きかった。一方で亡くなってからは「いつも自分のことより家族を思っていた女性」として美談が声高に語られている。どちらも同じインターネット上で。彼女自身やご家族がどうこうではなくて、遠く離れた場所にいる他人の見方がそのようだということだ。無関係な人たちが彼女に理想を投影しているのではないか。

上戸彩さんの言葉に話を戻すと、「誰かのために生きる女性」の美化は、容易に「女は下がれ」の人権侵害につながると私は警戒している。彼女の考えは彼女自身のために尊重されるべきだけれど、正解として提示されてはいけないものだと思う。また、インタビュアーの“女性が年齢を重ねても輝き続けられる秘訣”という問いもおかしい。若いうちは輝きを放つことが可能だが、年齢を重ねるとそうはいかなくなる、という前提に立っているからだ。何より上戸さんはまだ30代になったばかりだというのに。誰かのために生きなくても輝けるだろうし、そもそも輝き続けなくても構わない。生き方に秘訣も正解もないと思う。

今日の運勢

おひつじ座

全体運

不安から暴走してしまうかも。自分がダメだと思ったら、親しい...もっと見る >