2017/07/05 00:15

市川海老蔵・小林麻央夫妻への「なぜ標準治療を受けなかったか」という視線

歌舞伎役者・市川海老蔵(39)の妻・小林麻央(享年34)さんが2017年6月22日に亡くなった。昨日7月3日に初日を迎えた東京・歌舞伎座公演の「七月大歌舞伎」では、夫妻の長男である勸玄くん(4)が、史上最年少の宙乗りを成功させた。今朝の情報番組やネットニュースはその話題でもちきりであった。

海老蔵が妻の病を公にしたその約3カ月後の16年9月から、麻央さんは新たなブログ「KOKORO.」を開設。病床にありながらもいくつものポジティブなワードを並べ、ときには楽しげに子供のこと、夫のこと、治療法や体調など日々を綴ってきた。「必ず治る」という彼女の強い信念を感じさせるものだったが、幼い子供ふたりを残してのあまりにも早すぎる死に、歌舞伎界のみならず、多くの人が悲しみにくれた。

麻央さんの没後1週間以上経ったいま、夫妻には語られることのない「空白の1年8ヵ月」があったことを複数の週刊誌が話題にしている。

6月29日発売の「週刊新潮」(新潮社)は「海老蔵は三度過ちを犯した 小林麻央の命を奪った忌まわしき民間療法」のタイトルで、かなり手厳しい記事を掲載した。記事によると、海老蔵が犯した3つの過ちとは、<1・しこりが見つかっていながら再検査を急がなかったこと><2・標準治療を拒否したこと><2・気功などの民間治療に頼ったこと>だという。

2014年2月、人間ドッグを受けた麻央さんの胸にしこりが見つかった。この段階で細胞を調べるなどの精密検査は行われず、医師は半年後の再検査をすすめた。麻央さんが次に検査を受けたのは8カ月後であるが、ガンはすでに脇のリンパ節に転移していたという。このときすぐに治療に取りかかれば5年生存率は90%超であり、病院は当然標準治療をすすめるも、麻央さんは首を縦にふらなかった、という。標準治療とは、手術、抗がん剤、放射線、ホルモン療法、分子標的治療薬を組み合わせた治療のことで、ガンになったと聞けば恐らく誰もが思い浮かべる一般的な治療方法のことである。

なぜ夫妻は標準治療を拒んだのか。それについては6月30日発売の「女性セブン」(小学館)が、麻央さんが脇のがん転移を告知された都内A病院の関係者の話として「麻央さんと海老蔵さんは切らない治療を模索していた。女性にとって乳房にメスをいれるというのは大きな抵抗がある。だがそれは病院の方針とはあわず、結局病院を移ることに」との経緯があったと説明。さらに同誌は麻央さんが3人目の妊娠をのぞんでおり、そのため抗がん剤の投与や手術後のホルモン治療などを受けることで今後の妊娠への影響を懸念、標準治療に踏み切ることができなかったのではないかと推測している。

標準治療を拒否した夫妻はその後のいわゆる「空白の1年8カ月」の間、気功などの民間の代替医療を施していた、と「週刊新潮」は伝える。同誌は海老蔵がこれまでに風水師や占い師に傾倒していることをあげ、そうしたスピリチュアル傾向が標準治療を拒否し、気功に頼るという選択をさせたのではないかと推測している。「気功でがんが小さくなりました」とのwebページをアップする人物にも取材を試みているが、その主催者が語った気功の内容とは「ベッドに仰向けになった患者さんに私の掌をかざし、気を通していきます。大きなエネルギーが通る背骨の真中をめがけて――」……つまりは気を通して免疫力をアップさせがん細胞の増殖を抑え込むという仕組みらしい。気功にまったく詳しくない筆者でも、いや、詳しくないからなのか、コメントを読んだ瞬間「怪しい」と呟いてしまった。むろん、海老蔵夫妻が通ったとされる気功と同じ場所ではないのだが、おそらくどこでも理論はそう変わらないだろう。「新潮」は気功に頼るうちに病状はどんどん悪化し、気づいたときには乳房から膿が出る状態になってしまっていた――としている。

ここから先の経緯については、海老蔵、そして麻央さん自身もたびたびブログで発信している通りである。大学病院でのQOL手術の結果、麻央さんは今年6月まで懸命に生きた。

また7月4日発売の「女性自身」(光文社)には、麻央さんが5カ月前にも足繁く通っていたという表参道にある完全予約制のクリニックが無届医療で業務停止となったことを報じ、このクリニック名は瞬く間にツイッターの検索ホットワードに名前があがることとなった。麻央さんはここで<水素免疫温熱療法>と名付けられた治療法に取り組んでいたのだという。水素水に20分浸かるというこの治療法、クリニックホームページによると「水素水を体内に取り込むことで、がん周囲の異常血管の増殖を抑制する」とのことなのだが……(現在クリニックのホームページは閲覧できない状態)。QOL手術後も、麻央さんは様々な民間療法を試していたとされている。

筆者としては、代替医療そのものをすべて悪だと決め込む気持ちはない。だが、それはあくまで標準治療を受けたうえで併用するならば、の話だ。ゆえにQOL手術後、病院で治療を受けながらの温熱療法通いや酵素風呂やジュースクレンズに関しては、効果の有無はともかくとしても、否定するようなことではない。ただし、若くして思い病にかかってしまった海老蔵夫妻の無念と哀しみにつけこんで悪質な民間療法をそそのかす輩がいたのだとしたら、それはまったくもって許せない。スピリチュアルを一概に悪だとも言えないものの、先進医療との併用を認めず、医療を否定し患者を苦しめるような業者もゼロではない。

それにしても、これら一連の報道を耳にして、筆者がまず疑問に思うのは、麻央さんと海老蔵は本当に標準治療を全面的に拒否し、代替医療のみに頼ってしまったのだろうか、というところだ。そのことについては彼らから公表されてないため、わからない。ただ、もし彼らが週刊誌記事通りの選択をしていたのだとしたら、その無念はいかばかりか。無念だからこそ公表などしたくないのではないか。そっとしてあげてほしいと思えてならない。この「なぜ」という視線を浴びせること自体、今の遺族に対してあまりにも酷なのではないだろうか。いまはただ麻央さんのご冥福をお祈りしたい。

(エリザベス松本)

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