2017/10/10 13:00

吉岡里帆の「水着やりたくなかった」「女優としてはハンデ」という本音が切り拓く未来

 女優としてブレイクを果たした吉岡里帆(24)が、水着で写真撮影をするグラビアの仕事を「最初はやりたくなかった」話は有名だが、友人でシンガーソングライターの吉澤嘉代子(27) との対談で、あらためてその当時を振り返った。

 CINRAの運営する女性向け媒体(自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ)「She is」に掲載されたその対談で、インタビュアーからグラビアで着用していた水着の「紐の細さがすばらしい」という話を振られた吉岡は、次のように語った。

『あの時間もある種、文字通り切り売りの時間だったんです。だって私は水着姿なんて絶対出したくなかったし、両親からも、「本当に結婚するような人にしか見せちゃだめ」という教育を受けてきたから。それを、全国区の、ワンコインで買える週刊誌で披露して、1週間後には廃棄処分されて。こんなに脱いでも、翌週には別の女の子のことを見るんだろうなと思うと、自分のその「旬すぎる時間」みたいなものがすごく辛かったです』

 これは彼女の本音なのだろうが、しかし『これを言うと、ファンでいてくれる方たちはすごく怒る』というところまで彼女は踏み込んで発言する。「応援している人をバカにしてる」という手紙が送られてきたこともあるという。

『やりたくないというのは私の偽れない本当の気持ちで、でも、そう思いながらも脱ぐことに意味があると思っていました。嫌なんだけど、自分の夢をつかむために、それをやってほしいと求めてくれる人がいる以上、その人たちに応えるのが私の生き方だということに抗えなかったんです』

 やりたくないけれども、やることに意味があると自分で納得して腹をくくったからこそ、結果的にグラビアによって一般ユーザーから注目されて、女優業での姿も拡散された。結果、彼女の演技をクリエイターが見る機会を得ることにつながり、評判が評判を呼んで今がある。やりたくないことは頑としてやらないと意固地になっていたら、今もまだブレイク前の女優だったかもしれない。人から求められることをやる、と彼女は決め、その勝負に勝ったということだ。

 さらに水着グラビアを「女優としてはハンデ」と認識していることまで、彼女は明らかにしていく。グラビアを活動のメインに据えている女性タレント(あまり多くはないが)にケンカを売るような発言ではあるかもしれない。ただ、決して喧嘩腰ではないし、丁寧な説明ありきだ。

『人は、脱いだ人を「脱いでる人が芝居している」って見るんですよ。脱がない人のことは、はじめから「この人は芝居する人なんだ」という目で見ます。その壁ってすっごく厚くて高くて、自分で自分の首を絞めるみたいな行為をしてしまったと思うこともあります』

 これだけ彼女が言葉を尽くして真摯に語っていても、どうやら一部の「ファンでいてくれる方たち」には通じないのか「すごく怒る」声がネット上に見受けられる。

・グラドルを下に見ていて不愉快。
・グラビアは自分をアピールできる武器とは考えられないのか。グラビアの仕事が次の仕事に繋がる事実は否定出来ない。

 といった声だ。また、彼女に対して「重く考えすぎだ」と見る向きもある。あるいは「怒る声」ではなく、嫌々やっているからこそ凌辱的でそそるという、まさに「どのように水着グラビアを消費しているか」を直球で伝える声も。

・綾瀬はるかや深田恭子だって有名になっても水着写真集出してるのに。
・そう堅く考えなくても……。
・これを言ったことで吉岡里帆のグラビアに「この人は嫌々水着になっている」という付加価値がついた
・境遇考えるとほんと捗る

 こうした様々な意見を、すでに吉岡里帆は嫌という程目にし、聞いてきただろう。

 2015年の「週刊プレイボーイ」(集英社)インタビューで、吉岡里帆は「グラビアの話を最初にもらった時は抵抗があったのでは?」と質問されて『実は…泣いちゃいました。あははは』と答えている。

『だってグラビアに出るなんて人生で一回も考えたことなかったから(笑)。でも自分にとってこれもチャンスなんだなと思えたのでやらせていただくことにしました』

 そして2017年もまた、同誌のインタビューに応じて(2時間を超えるロングインタビューだったそう)おり、「割と有名な話ですが、吉岡さんは最初、水着グラビアをやりたくなかったんですよね」と聞かれて『はい。撮影のお話をいただいたとき、「絶対私にはできない」って、マネジャーさんとの電話で号泣しちゃいました(笑)。当時は京都の小さな劇場でお芝居することだけが自分のすべてだった時期で、とても狭い世界にいたんですよね。週刊誌に水着姿で出るということがまるで想像つかなくて。自分とは最も遠い世界のような気がして、危険な一歩を踏み出すみたいな心持ちでいたんです』と、その覚悟を明かしている。

 ただ、同誌インタビューでは、「She is」ほど赤裸々ではない。もっとずっとオブラートに包まれた言葉で、水着グラビアを肯定する。

『グラビアって肌の露出だけを見せるものではなくて、その人のパーソナリティや内面を写すものなのかなって。今は自分自身、特別な表現方法だと思っています』

『私、ほかのアイドル、モデル、女優さんと比べて突出してビジュアルが美しいわけではないのは、自分でよくわかっているので。むしろ込み上げてくるものをいかに残すかという点で勝負したいなって。だから毎回、自分の気持ちに嘘をつかず、素直な表情を出していきたいと思っています』

 そして9月15日にリリースした自身初のフォトブックとなる『吉岡里帆コンセプトフォトブック 13notes#』(東京ニュース通信社)では、グラビア撮影について『お仕事を選り好みする立場になかったですし、何か結果を出さないと、という気持ちがあったんですけど、グラビアで評価されるほど、お芝居から離れていってしまうのではないか』不安だったと明かす。

 2014年に初めて水着グラビアを撮影し雑誌に掲載された時、本人が撮影に際して恥ずかしすぎて泣いてしまっただけでなく、グラビアを見たご両親もショックで泣いてしまったという。女優として演技することとは別の(ように思える)水着グラビアの撮影に心細い思いをしていた彼女がマネジャーに相談すると、彼女の今後を見据えた上でのブッキングだと説得されたそうだ。やがて彼女は水着の写真を撮影する現場でも「せっかくやるならグラビアでも最高な作品を残そうというふうに意識を変えて」いき、「“最高のワンカット”を残すために何ができるか模索するというアプローチが、お芝居でもすごく生きている」という。

 彼女が所蔵する芸能プロダクションのエーチーム及びエーチームグループにはグラドルを経て女優となった酒井若菜や、ヘアヌード写真集のリリース経験もある高岡早紀、THEグラドルのほしのあき、グラビアで人気を博した芹那などがいる。ビジュアルが、週刊誌やマンガ誌の男性読者に受けると判断されれば、まずグラビアから、というルートを辿ることが是とされているのだろう。

 吉岡里帆もその流れにうまく乗った。「She is」でもまた『時間が経って、それがよかったと言ってくれる人がいるのは、やっぱりすごく嬉しい。今となっては、グラビアは本当にやってよかったです』と肯定的な発言を残している。

 それでも彼女だけじゃなく、グラビアに登場する女性たちは本当は同じように理解しているのではないだろうか。肢体を消費され、旬の時間を分け与えることの消耗を。その引き裂かれるような感覚を、消費する側は知りもしないし、また知ってしまっては基本的に、無邪気に消費できない。辛い思いを抱えながら嫌々脱いでいる女にぐっとくるという性癖もあるわけだが、あくまでも、何も考えずに(傷つかずに)無防備に脱いで無意識な挑発をしている女性であってほしい、という願望がそこには投影されているのではないだろうか。

 こうした本音を、「イメージ」をまとって仕事する女優が言葉にすることは珍しい。彼女自身もリスクだという認識はあるかもしれない。当たり障りない言葉しか提供しない女優は神秘的なイメージを纏うことができるが、しかし実像が見えずともすれば生身の人間であることを忘れられてしまう危険もある。お人形さんに徹して、発信することのない存在と認識されることもある。一昔前まではそういう女優が本当に多かった。たとえば黄金世代と呼ばれる1985年生まれの世代はまだ、人形系だ。だが吉岡里帆はそうではない。

『私の仕事は、自分というものを誰かに押しつけることではなく、誰かに「染まる」ことなんです。バラエティーだったら芸人さん色に染まるし、ミュージシャンと対談をするなら、その方の言葉をちゃんと聞いて、そこに沿った言葉を発したい』

と言うように、求められる仕事内容に濁りのない透明な状態で応じようとするけれど、彼女自身の中身は彼女の思考がパンパンに詰まっている。実際には他の多くの女優たちも、アイドルたちもそうであるはずだけれど、それを見せずに対メディア、対ファンでは100%透明でいる。どのようなイメージを与えられても構わないという顔をしている。とてもタフであるけれど、さすがに異常でもある。もちろんインタビューの現場では本音を話しているのに、編集の段階で削除されていく言葉たちもたくさんあるだろう。

 だからこそ吉岡里帆が切り開いていく地平が、これからの女優にとって、ひいては若い世代の女の子にとってエールになり、「ちゃんと発言していいんだ」と自信を持つ契機になることも考えられる。飾らないとか等身大だとかの褒め言葉は、日常がズボラだのなんだのというカミングアウトではなく、こうした本音に与えられるべきなのだと思う。

(犬咲マコト)

今日の運勢

おひつじ座

全体運

雑誌をチェックして、映画やコンサート、アート系の展覧会に出...もっと見る >