2014/04/16 17:00

長谷川潤への大バッシングから、「母親が働く」を考える

 2011年にハワイ在住の男性と結婚し、翌2012年に娘を出産したモデルの長谷川潤が、資生堂の日焼け止めブランド「ANESSA(アネッサ)」の新モデルに起用された。ネットニュース「まんたんウェブ」では長谷川にインタビューを行い、CM撮影の様子や、子育てと仕事との両立について長谷川自身が語っているのだが、この内容についてネット上で批判が集まっている。

 現在、家族とともにハワイで暮らしており、この「ANESSA」のCM撮影もハワイで1日かけて行われた。しかし他の仕事のほとんどは日本で行われるため、基本的に月に1度のペースでハワイと日本を行き来する生活を送っているという。そのとき、1歳半になる長女はハワイで留守番となる。

「寂しいし、(子供に)会いたいんだけれど、それがよかったりするのかなって」
「会えない期間があることで子供に会ったときにありがたみが出てくるから。こちらにいるときは自分のことに集中できる。ずっと子供と一緒にいるとすべてが子供になって自分がセカンド(二の次)になる。こっち(日本)に来ると自分のアイデンティティーをキープできるし、大事にできるから」

 と、インタビューでは自身の子育てや仕事についての考えを語っているが、この発言や“月に1度は幼い娘をハワイに残して日本で仕事をしている”といった生活スタイルについて非難が集まっている格好だ。

 ガールズちゃんねるでは「いつどんな時も子どもに親は必要だよ」「『ありがたみが出てくる』って言い方に違和感」「自分が一番ってことですね」「仕事ももちろん大事だし自分の時間も大事だと思うけど その前に子供の母親じゃないかな?と私は思う…子供は母親とずっと一緒にいたいに決まってるし子供の気持ちをもう少し考えてあげて欲しい…」といった、長谷川の子育てと仕事との両立を批判的に見るコメントが数多く寄せられている。「自分のことがセカンドになるのが嫌なら産むな 子育てはそのくらいの覚悟が必要 たまには息抜きは必要だけど丸一日離れるとか母親としてありえない」など、極端な発言が目白押しだ。

 過去に報じられた関東連合との関係や、深夜にホームパーティを開催し隣人から苦情を言われた話などもアップされており、完全に火がついた状態である。さらには「この人にしても、エビちゃんにしても、SHIHOにしても、佐田真由美にしても、モデルって変な人ばっかりやね」など他の既婚女性芸能人にも飛び火し、相当な燃え上がり具合となっている。

 現在、子供を保育園に預け働いている自分は、これら一連のコメントを長谷川に同情しつつ読んだが、中には「保育園に預けて働いてるママと母親失格女の長谷川一緒にしてもらっちゃこまる」といった論調の意見もあり、驚きでパソコン画面をスクロールする手が止まってしまった。保育園に預けるのは良くても、家族やシッターに預けて仕事に行くのはダメだということだろうか……。

 とかく出産や育児となると、周囲はなにか一言、物申したくなるもののようだ。かつてmessyでも、自然分娩や母乳育児について周囲がそれを押し付ける風潮について取り上げたことがある。

■自然分娩・母乳育児礼賛に苦しめられる女たち

 今回は、母親となった長谷川が月に1度、1歳の子どもと離れて仕事をすることに対して、母親としての自覚が足りないと叩かれている構図であるが、芸能人でなくとも、働きながら子育てをしている女性なら多くがこうした意見に晒されたことがあるだろう。自分も仕事の関係者、それもなぜか中年オヤジばかりから「3歳までは仕事はいいから子供と一緒にいてあげて」と言われて辟易した。親戚からも「3歳までは子育てに集中してほしい、保育園は可哀想」と保育園入園を反対された(けど無視した)。なぜか“保育園は可哀想”といった意見を浴びせてきたり、過去の育児書に出てくる説でいまでは化石レベルの神話となっている。“3歳まで一緒に”といったお願いごとをしてくるのである。

■宋美玄のママライフ実況中継【3歳まで育児に専念なさい!?】ヨミドクター

 自分の周りを見回してみても、過去、保育園に通っていた知人と、幼稚園に通っていた知人、つまり親と一緒にベッタリの乳幼児期を過ごしたことのある者には、大した違いがない。決定的に何かが違ってくるというのであれば、教えてほしいぐらいだ。

 今回の長谷川騒動はさらに、子供が幼い頃から仕事に精を出すことについて「母親になった自覚が足りない」という意見も出ている。しかし、子育てをしながら仕事をすることが“母親の自覚が足りない”というのであれば、現在、0歳や1歳の子供を保育園に預けて働く女性も皆、母親の自覚が足りないことになる。子供を育てるためにはお金も必要だし、それぞれの家庭の事情もある。母親であると同時に長谷川は仕事を持つ一人の大人であるのだから、母親になったからといって、仕事人としてのアイデンティティを抹殺することはそうそうできないだろう。突き詰めれば、“母親の自覚”とは何なのか? という疑問にも行き着くが、こうした意見を浴びせる側も、そこを明らかにしていないのだから、ひょっとしたら分かっていないのかもしれない。

 また長谷川は“月に1度は日本で仕事をしている”と話しただけで、その日数を明らかにしていないが、まるっきり離ればなれというわけではないのだし、周囲の協力によってこうしたスタイルで働くことが可能なのだから、それにとやかく言うのは余計なお世話でしかない。こうした意見が出てくるのは、いまでも日本に『育児の担い手は母親のみ』という価値観が強く根付いている証拠でもあるのではないだろうか。核家族化が進み、不況も長引く昨今、外で金を稼ぐのが父親で、家を守るのが母親、といった構図はもはや物理的に成り立たなくなっているが、こうした社会の変化に価値観が追いついていない印象を受ける。

 どんな母親も、仕事のために子供を預ける時は、この仕事が果たしてそこまで意義のあるものなのか? という自問自答をしたことがあるだろう。世間の価値観の押し付けにつぶされてはいないと思いながらも、それに負けそうになる瞬間がある。だが、やりたいことがある母親が“子供のために”と自分の仕事を諦め、そんな状態で子供と向き合えば、最悪、“この子さえいなかったら……”という思いが頭をもたげる。自分にはそんな時期があった。“母親と子供だけの世界”で生活することの危なさを肌で感じ、これはたぶん先々、大きな事件になってしまう……と復帰した次第である。

 子供との生活において重要なのは一緒にいる時間の長さではなく、自分がどのような気持ちで子供と向き合うかだろう。自分は子供に働いている姿を見せたいし、また仕事は辛いこともあるが、楽しいことなのだと、自分を見て思ってほしいと考えている。長谷川もきっと、そうなのではないだろうか。周囲はうるさいが、これからもどんどん活躍の場を広げていってほしい。

 しかし、子供をベビーカーに乗せて電車に乗れば議論の対象になり、保育園に入れれば非難され、子育てをしながら仕事をすれば“母親としての自覚がない”などの言葉を浴びせられる……子育て中の母親に向けられる厳しい視線は、少子化を加速させるのに一役も二役も買っているに違いない。

 

■ブログウォッチャー京子/ 1970年代生まれのライター。2年前に男児を出産。日課はインスタウォッチ。子供を寝かしつけながらうっかり自分も寝落ちしてしまうため、いつも明け方に目覚めて原稿を書いています。

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