2017/07/16 07:00

『警視庁いきもの係』 TBS日曜劇場に視聴率肉薄の理由

制作発表に出席した主演の渡部篤郎ほか出演者
制作発表に出席した主演の渡部篤郎ほか出演者

 ここまで迫るとは――ドラマ関係者が驚いたのは、日曜9時のドラマ対決だ。『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)が初回視聴率8.9%を記録し、『ごめん、愛してる』(TBS系)の9.8%に肉薄したのだ。この枠では、フジがTBSに惨敗していたが、今回はなぜ接戦になったのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 フジテレビの日曜9時ドラマ枠(以下、フジ日9に略)は、昨年4月のスタートから大苦戦。視聴率でTBSの日曜劇場に5連敗中で、トリプルスコアの差をつけられるのが当たり前のようになっていました。

 日曜劇場は60年超の歴史を持ち、近年でも『半沢直樹』『天皇の料理番』『下町ロケット』『99.9 -刑事専門弁護士-』などのヒット作を生んだ日本一の民放ドラマ枠。それだけに業界内では、「やっぱり」「そりゃ勝てないよ」という声が飛び交っていました。

 今年5月には一部スポーツ紙が、「フジ日9の打ち切りが決定した」と報じましたが、それが本当なら「最後の作品となる『警視庁いきもの係』が一矢報いるかどうか」が今後の焦点になっていくでしょう。

 初回視聴率では『ごめん、愛してる』が『警視庁いきもの係』をリードしていますが、知人コラムニストやテレビ誌記者に聞くと、「早ければ2~3話で逆転しそう」という声がほとんどでした。

 負けっ放しだったフジ日9と、民放ドラマ枠のトップに君臨するTBS日曜劇場の間に何が起きているのでしょうか。

◆『マルモ』の成功を思い出す癒し

『警視庁いきもの係』の初回視聴率8.9%は、過去作の『OUR HOUSE』4.8%、『HOPE~期待ゼロの新入社員~』6.5%、『キャリア~掟破りの警察署長~』7.9%、『大貧乏』7.7%、『櫻子さんの足元には死体が埋まっている』6.9%を上回りました。

 最大の理由は、動物に徹底フォーカスした癒しの映像でしょう。「主役として画面の中央にデンと映った」と思ったら今度は、「脇役としてさりげなく画面の隅に映り込んでいる」など、かわいらしさと愛きょうのある姿で癒しを感じさせました。そこにキュートな橋本環奈さんと渡部篤郎さんのやり取りを絡めてポップに事件解決させることで、子どもから大人まで楽しめる、間口の広い作品に仕上がっています。

 ここで思い出されるのが、2011年に放送された『マルモのおきて』。まだ覚えている人も多いでしょうが、フジ日9は2010年10月~2013年3月にも放送されていました。しかし、当時もTBS日曜劇場に視聴率で1勝9敗の惨敗。しかし、その中で互角の勝負をしていたのは、『マルモのおきて』『早海さんと呼ばれる日』『ビューティフルレイン』の3作で、いずれも癒しを感じさせるドラマだったのです。

 民放ドラマ枠の王者・日曜劇場と唯一勝負できるのは、視聴者がほっこりとした気持ちになれる癒しのドラマ。エンディングの着ぐるみダンスを見ても、そのコンセプトは明快であり、スタッフたちは今回の結果を見て、ようやく過去の成功体験を思い出したのではないでしょうか。

◆らしくない韓流リメイクで不安な日曜劇場

 一方、王者・日曜劇場が夏ドラマに選んだのは、韓流ラブストーリーのリメイク。これまで支持を集めてきた「熱い男たちの物語」ではなく、「愛憎渦巻く男女と母子の物語」だったのです。

 もともとラブストーリーは視聴者層を限定しがちですが、さらに『ごめん、愛してる』は、生き別れ、裏社会、銃撃、児童養護施設、心臓の病気、脳の障害、余命わずかなど、「いかにも韓流」という非日常な設定がてんこ盛り。好き嫌いがはっきり分かれる作風になったことで、特にこれまで日曜劇場を支えてきた男性視聴者が難色を示し、「今回は『警視庁いきもの係』を見よう」という流れが生まれはじめています。

 面白いのは、『警視庁いきもの係』の須藤友三(渡部篤郎)と『ごめん、愛してる』の岡崎律(長瀬智也)が、どちらも「頭部に銃弾を受けている」という偶然の一致。主人公に同じ設定があっても、前者はコミカル、後者はシリアスと、真逆なシーンに反映させているところが、作品のムードを象徴しています。

◆一家団らんのムードを作った、かつてのフジ日9

 最後にもう1つ、ふれておきたいのが、フジ日9として1979年10月~1990年3月に放送されていた『花王名人劇場』と、1990年4月~1996年9月に放送されていた『花王ファミリースペシャル』。どちらも『裸の大将放浪記』などのドラマだけでなく、漫才や落語などの演芸を交えた週替わり企画を放送していましたが、「ほっこりとした笑いで一家団らんのムードを作る」というコンセプトは共通していました。

 その後、フジ日9は、『発掘!あるある大辞典』『メントレG』『エチカの鏡』を経てドラマ枠になり、再び『あすなろラボ』『全力教室』『ワンダフルライフ』『オモクリ監督』『日曜ファミリア』を経て、現在のドラマ枠に戻るという歴史を歩んでいます。こうして『花王名人劇場』以降の流れを見てみると、笑いに重きを置いた番組は『オモクリ監督』くらいしかありませんでした。

 秋以降にどんな番組を放送するにしても、「一家団らんにつながる笑い」への原点回帰が「打倒!日曜劇場」につながっていくのかもしれません。その意味でも、『警視庁いきもの係』の癒しを感じさせる笑いに注目してみてはいかがでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。


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