2018/04/01 16:00

柳家権太楼の「鰍沢」 落語初体験の客も引き込むパワー

 権太楼と言えば寄席の爆笑王、滑稽噺の徹底した可笑しさで定評があるが、人情噺系の大ネタも素晴らしい。十代目馬生の型に強烈な感情注入を施した『芝浜』、八代目文楽の型を「権太楼の個性」で染め上げた『富久』、五代目小さんの型を独自にアレンジした『文七元結』などは権太楼ならではの逸品だし、『百年目』『心眼』『たちきり』なども味わい深い。権太楼は「骨太な人情噺の名手」なのである。

 この日1席目に『鰍沢』を演じた後、2席目のマクラで権太楼は「爆笑落語を期待される地方の会で『鰍沢』はできない」と言った。『鰍沢』は、言ってしまえば「雪山で旅人が女に殺されかける」というだけの噺で、そこに笑いも感動も伴わない。ラストも「それで終わり?」みたいな感じでカタルシスに欠ける。確かに聴き手を選ぶ噺だろう。

 だが、権太楼の『鰍沢』は落語初体験の観客をも引き込むパワーがある、と僕は思う。旅人、女、亭主の3人の登場人物を生き生きと描く権太楼のダイナミックな『鰍沢』は、まるで一編のサスペンス映画を観ているようだ。地の語りの説得力といい仕草による視覚的効果といい文句なし。今年に入って他の演者でも何度か聴いたが、有無を言わせず物語の世界に観客を没入させるという点で権太楼の『鰍沢』は圧倒的に優れている。「この演者だからこそ」という迫真の『鰍沢』だ。

今日の運勢

おひつじ座

全体運

気になることがあったら徹底的に調べてみよう。周囲の人に教え...もっと見る >