2018/11/30 18:45

米倉涼子の人気ドラマ『リーガルV』のミソジニーな描写も「分かりやすさ」として消費されることが怖い

 米倉涼子の主演ドラマ『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)は、全く安定している。平均視聴率は15%前後を推移しており、『ドクターX』同様、固定ファンをがっちり獲得したようだ。物語の複雑性を極力排除し、ラストではスカッと事件を解決する分かりやすさ点が人気なのだろう。

 その「分かりやすさ」だが、一方で登場人物の描き方がステレオタイプに偏り、「嫌な男」「悪い女」といった単純な「悪」を表現した上で、正義の米倉涼子が成敗する……というパターンに陥っていると言うことでもある。それのどこが悪いのか、時代劇のようなものでお約束だからいいんだよ、といった意見は当然あるだろうし、それが求められているから視聴率も高いのだろう。

 しかし、現実にも存在する社会問題を毎回取り上げながら、ステレオタイプな描き方に終始する『リーガルV』の「分かりやすさ」は、いったい誰にとってのものなのか。現実の社会問題に対する視線まで、歪ませてしまいかねない描写になっていないか。そのことがどうしても気にかかる。高視聴率のドラマだからこそ、なおさらだ。

『リーガルV』テンプレ設定のどこがいけないのか?

 例えば第1話で扱われたのは、痴漢冤罪事件だった。翔子(米倉涼子)にスカウトされた若手弁護士・青島圭太(林遺都)が出勤中、会社員男性(児嶋一哉)が痴漢を疑われ駅員に取り押さえられている現場に遭遇。無実を訴える男性だが、痴漢冤罪で無罪を勝ち取るのは難しく金にもならないとして、翔子は示談を促す。しかし気が変わり、無罪を目指して暗躍する翔子は、警察調書の矛盾点をあげつらい冤罪を証明した。痴漢事件は、被害者を装った女性と、共謀男性とのでっちあげだったというオチだ。

 この展開を「分かりやすくて痛快」と好意的に受け止める感想は多かったが、痴漢冤罪という「ネタ」を軽く扱い、痴漢被害を矮小化してしまうストーリーには不穏な感情を覚えた。視聴者の感想として、痴漢被害をでっち上げる女性への罵倒や嫌悪感はあれど、女性とグルになった男性への反応が目立たないことも気になった。

 そして11月22日放送の第6話のエピソードは「婚活詐欺」。1話完結ではなく、29日放送の7話まで引っ張る。

 第6話で翔子の事務所にやってきた相談者の塩見(矢部太郎)は、婚約者に勧められて土地を3000万で一括購入したが、そこは騒音が酷いなど劣悪な土地だった。しかし引き渡し済みだから契約解除も不可能、おまけに婚約者名義となっているため、塩見が仲介業者を訴えようにも難しいのだという。婚約者・夏純(逢沢りな)に連絡を入れるも音信不通。翔子をはじめとする京極法律事務所の面々は、これは詐欺だと確信する。

 塩見に夏純を紹介したのは、相田栞(東ちづる)率いる高級婚活相談所「ローズブライダル」だ。しかも夏純は、京極法律事務所のパラリーガル・馬場雄一(荒川良々)が大金をつぎ込んだ末に失恋した相手と同一人物だったことが判明し、ますます詐欺の疑いが濃厚に。そして、京極法律事務所のパラリーガルで結婚願望を持つ伊藤理恵(安達祐実)が潜入捜査のためローズブライダルに入会したところ、あろうことか理恵も被害に遭ってしまう。夏純は六本木のキャバクラ嬢で、男たちに金品を貢がせていることもわかった。

 翔子たちの説得によって、塩見は夏純を訴えることに。示談を狙っていたが、夏純はなかなか手強く用意周到。実は夏純だけでなくローズブライダル自体が詐欺グループだった。会員にお見合いの斡旋をしているように見せかけ、セミナーなどに勧誘し金をせしめており、劣悪な土地を売りつけた不動産会社ともずぶずぶの関係だ。というわけで、ローズブライダルを訴え1億円を請求することになったが、ローズブライダル側の弁護を引き受けたのは、翔子がかつて弁護士として勤務していたFelix & Temma法律事務所。「負けられない戦いになった」と気合を入れ調査を開始する翔子だが、週刊誌によって「資格をはく奪された悪徳弁護士」「非弁行為」と書き立てられ窮地に陥る。

 第一審の口頭弁論では、京極法律事務所のパラリーガルで現役ホストの茅野(三浦翔平)が入手したローズブライダルのサクラ女性がやり口を語る動画を証拠として突き付けるも、被告側弁護士で翔子の元同僚・海崎(向井理)は、違法な方法で集めた証拠で信用できないと主張。結局、証拠は不採用になり、判決は原告側の訴えを棄却した。

 翔子は傍聴席から「裁判官、全然納得いかないんだけど」「納得できません!」「詐欺の証拠をもみ消すのが裁判官の仕事なの?」「誰の圧力? お金でももらったのかしら?」と言い放つ。ここには、翔子を潰したいFelix & Temma法律事務所の代表・天馬(小日向文世)と、そのクライアントで財政界とも通じる我妻(国広富之)が一枚噛んでいるのだろう。巨悪に立ち向かう翔子たち。なるほど、手に汗握る展開だ。

 翔子は裁判所に駆け付けたマスメディアにも「私間違ったこと言ってないわよ。詐欺師を守って被害者を見捨てる裁判官のほうがおかしいでしょ」「他にも声なき被害者が沢山いるはずなの。彼らがこのこと知ったら絶対こう言うわよ、『ふざけんなよ!』」と啖呵を切る。実は翔子はサクラを駆使してネットで今回の訴訟に注目が集まるよう仕向けていた。強敵を倒すためには「世論」を利用するしかない、と考え、先手を打っていたのだ。そして翔子が、塩見による控訴に加えて、ローズブライダルの被害者たちによる集団訴訟に挑もうとしていることが判明したところで第6話は終了した。

 第6話は、翔子が本来持っている正義感がひしひしと伝わってくるような1時間であった。最後は正義や弱者が勝つであろうことも想像できるから安心して見ていられる。「悪者がやっつけられるのが見たい」視聴者にとってはうってつけのドラマといえる。翔子率いる京極法律事務所の面々も個性的でドラマの魅力を増している。

 しかしやはり気になるのは、今回の「婚活詐欺」の設定も、結婚を焦る冴えない男、男を騙す六本木キャバ嬢や悪徳結婚相談所、とテンプレをなぞるような「分かりやすさ」であること。第7話は「男たちの“me too”運動」に発展するそうだ。もちろん結婚詐欺は犯罪で、その被害に遭う男性たちは救済されるべきだろう。痴漢冤罪もそうで、冤罪にもかかわらず証拠をでっち上げられたり、不当に逮捕され拘束されるような事態はおかしい。一方で、「典型的」な悪女や犯罪者、想像力を働かせなくてもわかる犯罪の動機(金目的など)等、分かりやすさを追求した結果、視聴者の固定観念を強化してしまう懸念を孕む。分かりやすさでウケているこのドラマだが、様々な社会的規範や固定観念を解きほぐそうという試みの対極にあるコンテンツだと言えるだろう。

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