2017/07/20 11:00

「きゅうり一本だって楽しい」ぬか漬け暮らし(1)――平松洋子の「この味」

©下田昌克
©下田昌克

 また始まってしまった。

 でも、やっぱり楽しい。

 じわじわうれしい。

 微妙な心境を抱えつつ、一年ぶりのぬか漬け暮らしが五月末からこっち、毎日続いている。きゅうり、にんじん、なす、セロリ、キャベツ、手近な野菜を漬けては食卓にのせるたび、一瞬うきっとする。

 ただ、やっぱり複雑な気持ちにはなるんです。朝起きると早々に台所へ向かい、かたすみに置いてある陶器の瓶のふたを開ける。やおら手を突っ込んで、ぬかをかき回す。

 ずっぽ、ずっぽ。

 上下のぬかが入れ替わる空気音といっしょに、ふんわり立ち昇るぬかの香り。ああいいな、この鄙びた香り好きだな、と鼻の穴をふくらませつつ、ちらりと脳裏をかすめる。

(ぬか床に支配されている)

 ぬか漬け暮らしは、いったん始めたら、朝夕のかき混ぜ行為がモレなくついてくる。儀式を怠ると、ぬか床は死ぬ。物騒な物言いですが、泣いても笑っても、これが真実。走り始めたのはほかでもない自分なので、ともかく遂行するほかない。フルマラソンを走った経験はないけれど、スタート地点に立った時点ですべてのランナーの脳裏に輝いているのは「完走」の二文字だろう。

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